残された意思

「エリスくん、どうしたんだい。いきなりもぬけの殻みたいになったから、心配したよ」



目の前にガルバンがいることから、さっきまで見ていたものが終わったことをエリスは理解する。



「大丈夫です。このエメラルドストーンに触れた瞬間、何か吸い込まれるような感覚がして、その後……、父の記憶を見たんです」



「コランの記憶か?! どんなものを見たんだい」



「あの日のペレグレインの記憶でした。俺たちがお父さんに助けられその場から逃げた後の記憶を見ました」



「……コランは、どうなった?」



ガルバンは躊躇いつつ言う。



「……おそらく、死にました。魔人ベトムが恐ろしいほどの魔力でここ一帯を消し飛ばしました。そこで映像が途切れたので、恐らく……」



ガルバンは手を強く握りしめた。



エリスは絶望しかけていた。母を亡くした後は、誇り高き父の死だ。ここで自分がまた母の時と同じように立ち止まっていては何も変わらないことなど見に染っている。でも……。



その時だった。エリスが持っている父コランのネックレスが光出したのだ。



「これは……?」



そして、どこからともなく声が聞こえる。



『遥か東の崖の上を目指しなさい。そこに、目指すべきものがあります……』



エメラルドグリーンに光る輝きは消え、声もいつしか消えていた。



「ガルバンさん、今の聞こえましたか?」



「あぁ、聞こえたとも」



「あの声です。俺がこの石に触れた時に見た記憶でも、この声が、父の道を解いていました」



「……となると、今の声は、このエメラルドストーンから発せられた道を解く声、ということなのか」



「そうかもしれません」



もしそうだとすれば、今自分が最前線で欲しいものが声の先にあるはずだ。しかし今はそんなものなど思い浮かばない。



「東の崖の上、か……」



ガルバンは顎を指の上にのせる。



「思い当たるものがあるんですか?」



「あぁ、それに、東の崖の上、一つしか思い浮かばない」



「そこは、どこですか?」



「轟雷の街、フードルネイン。このエメラルドストーンが作られている場所だ」





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