第46話 俺の気持ち。


 呆然と二人のことを凝視していると、顔を赤くしながら俺の方を見て来た。


(え!?)


 どういう状況!? なんでドレス着ているの? それもこのドレスって、ウエディングドレスだよな? ロンドたち全員、正装になっているし。


(もしかして、二人誰かと結婚するの?)


 いや、ちょっと待ってくれよ。俺、聞いてないんだけど......。一応はルーナと婚約者(仮)みたいな形にはなっていたから、相談ぐらいあってもよかったじゃん......。そうじゃなくても、パーティメンバーなんだから。まあいいんだけどさ。でも少し悲しいな。


(あ~。でもそうだよな)


 結婚するって言ったら、パーティ解散とか考えなくちゃいけないもんな。それなら話ずらいのもわかる。


(でも誰なんだろう?)


 やっぱりロンドか? 今回ルシファーを倒したのはロンドだし、結婚するのもわからなくもない。でもそしたらなんで二人ともウエディングドレスを着ているんだ? 今回の一件でロンドと結婚するのはルーナだと思う。だとしたらクロエは?


 まあ、この世界は一夫多妻制が認められているから、わからなくもないけど。ロンドに至っては世界が認める勇者だしな。そう考えると、徐々に悔しく感じてきた。


 ここでやっと、自分の気持ちに気付いた。


(あ~俺って二人のことが好きだったんだ......)


 今まで、なあなあと過ごしてきていて、二人がいるのは当たり前の生活だと思っていた。だけど、いざ環境が変わりそうになって気付くなんて遅いだろ......。


(幸せにしてあげろよ)


「ロンドにルーナ、クロエおめでとう!!」

「「「え?」」」

「ちょっと頭冷やしてきたいから、外出てくるわ」


 俺はみんなを後にして、この場を出て行った。クソみたいな行動をとっているのはわかる。でも、あの場にずっといたら俺の精神が持たなくなってしまう。そうしたら絶対に場の空気を悪くしてしまう可能性もある。


(だからこれぐらいは許してくれ......)


 そこから少し歩いて、ひとけの無い庭でボーっと座りながら


(これからどうしよう......)


 また一人か......。目的も無くなったら今、どうすればいいんだろう。もうルーナやクロエを守る意味も無くなった。だったら世界を救うために戦うか? 


 う~ん。まあガブリエル様に言われたこともあるし、それもいいのかもしれない。でもなぁ。そう考えていると、うっすらと涙が流れてきた。


「俺って本当にバカだよな」


 自分の気持ちをきちんと伝えていればよかった。すると、後ろから


「メイソン、どうしたの」

「え? なんで泣いてるの?」


 なぜかそこには二人が居た。


「ちょ、なんでここにいるの!?」

「なんでって、メイソンがあの場から出て行っちゃうから」

「そうだよ」

「いや、そうだよな。ごめん」


 そりゃあ、突然あの場から出て行ったら誰でも驚くし、仲間なら追いかけるのも当然か......。


「それよりもどうしたの?」

「いや......」


 本当のことを言うわけにはいかない。ここで俺の気持ちを伝えたところで二人に迷惑をかけるだけなのだから。俺は俯きながら


「ロンドと二人が結婚するのを目の当たりにして、今後どうしようか迷っていたところなんだよ。一人で何しようかな~ってさ」


 嘘は言っていない。徐々に二人のことを見ると、呆れた顔をして


「私達、ロンドとは結婚しないよ?」

「そうよ」

「え? じゃあなんでウエディングドレスを?」


 俺がそう尋ねると、二人は少し顔を赤くしながら


「それは!!」

「ちょっと待ってくれ!!」


(今しかない)


 今しか言う機会は無い。もしこの場を逃したら一生いうことはできないかもしれないと思い


「ルーナ、クロエ好きだ」

「「え?」」

「優柔不断だってことはわかっている。本当はどちらかを選ばなくちゃいけないのもわかっている。だけど、だけど俺は二人のことが好きだ」


 本当に情けない。でも、さっきわかったんだ。どちらか一方が好きと言うわけではなく、どちらも同じぐらい好きなんだ。


「は~。遅いよ」

「でも、良かったね」

「ね~。メイソンからそう言ってもらえてうれしい」

「え?」


 俺は二人がなんでそんなことを言っているのかわからなかった。


「え? じゃないよ。やっと私たちが欲しい言葉を言ってくれた」

「ね!! 遅いよ」

「でも、本当にいいのか?」


 そう。俺はどちらか一方を決める事が出来なかったのだから。


「いいんじゃない? 私たちは逆にどちらかが選ばれたらどうしようって思っていたよ」

「そうよ。前々からどうするか話していたのだから。ミロとかにも相談してね」

「そ、そうだったのか......」

「うん!! だから王室に戻ろ!!」


 するとルーナが右手を、クロエが左手を握ってきながら走り始めた。


「は~。やっとこの関係になれた!!」

「ね~。これで前に進める!! メイソンが遅いから~」

「あ、あぁ。本当に悪い」

「「いいの!! そんなメイソンのことが好きだから」」


 そして、俺たちは王室に戻ると、みんなに呆れた表情をされながらも、結婚する話が始まった。

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