第32話 エルフ国との同盟


 転移された場所は、エリクソンさんたちがいる王宮から徒歩十分もしないところであった。まず俺は道具収納アイテムボックスからフード付きの大きな服を三着出して、ラファエル様たちに渡す。


「これを着てください。これで一応は天使だとバレないと思います」

「わかった」


 ラファエル様がそう言うと、三人が服を羽織った。そして天使とバレないことを確認して、ルーナに道案内をしてもらいながら王宮へ向かった。王宮の目の前にたどり着くと、警備しているエルフの方に


「ルーナ様にメイソン様。どうぞ中へ」

「ありがとう」


 そして俺たちが中へ入ると、案の定エルフの方々は魔族が攻め込んでくるなんて微塵も考えが無いようなそぶりを見していた。


(なんでエルフ国なんだよ......)


 今後のことを考えたら胸糞悪くなりながら王室へ向かっていると、数人の騎士に止められる。その中の一人であるディックさんに


「ルーナ様にメイソン様、クロエ様お久しぶりです」

「久しぶり」

「今から国王と面会ですか?」

「うん」


 ルーナがそう言うと、ディックさんを含めるエルフの騎士たちがが俺たちの目の前に立ちはだかる。


「誠に申し訳ございません。お三方なら入ることを許可だせるのですが、後ろにいる方々は......」

「悪い。だけど目をつぶってくれ」

「それは......」

 

 今ここで後ろにいる方が天使ですよなんて言えない。すると、ルーナが真剣な顔をしながら言った。


「もしこの人たちが問題を起こしたら私が全責任を負います。だから通してください」

「!? ルーナ様がここまで言うなんて......。わかりました」


 ディックさんがそう言って道を開けてくれる。


「ありがと」

「いえ。本当に成長いたしましたね」

「うん」


 ディックさんたちに会釈をした後、すぐさま王室へ向かった。そして、目の前に到着するとルーナがノックもせずに扉を開けた。


「誰だ?」

「パパ。ただいま」

「え? なんでお父さんがいるの!?」

「まあいろいろあってな」


 クロエが驚きながらそう言った。そりゃあ俺も驚いた。なんせ、クロエのお父さんであるロンローリ様もここにいたのだから。


「おかえり。急にどうしたんだ? それに口調も昔みたいにパパに戻っているぞ」

「今から真剣な話をしたいから、ここには私たちとパパだけにしてもらえない?」

「ロンローリ君もだしたほうがいいかい?」


 そこで俺が仲介に入る。


「いえ、ロンローリさんもいて都合がよかったです」

「そうかい」

 

 そう言って、エリクソンさんとロンローリさんを除いた騎士たちを部屋から出す。


「それでなんだ?」

「そう言えばママは?」

「ユミルは......。今はリリエットさんと話しているよ」

「そっか。じゃあ話すね」


 ルーナが一呼吸しながら俺の方を一瞬向いて、淡々と今まであったことを話し始めた。


 魔族が襲ってこようとしていることと、天使族の方々が助けに来てくれること。それ以外にも今後起きそうなことを。そして、エリクソンさんとロンローリさんが驚いた表情をした後、俺の方を向いて


「「今のは本当かい?」」

「はい」

「でも、信じがたいな。天使がいるなんて......」


(まあそうだよな)


 俺も、天使がいるということや魔族が攻め込んでくるなんて言われて、すぐ信用するなんて難しい。だからこそ、ラファエル様たちについてきてもらった甲斐がある。


「それは今から紹介する人を見てもらえばわかると思います」

「え、それって......」


 俺はラファエル様たちに視線を送ると、三人が前に出てきて、羽織っている服を脱いだ。


「お初にお目にかかります。四大天使の一人、ラファエルです」

「同じく四大天使の一人、ウリエルです」

「メイソンさんたちの友達であるアミエルです。よろしくお願いいたします」


 三人が一斉に自己紹介をすると、エリクソンさんとロンローリさんが驚いた表情で三人を見ていた。


「えっと、エルフ国の当主、エリクソン・アークレスです」

「狐人国の当主、ロンローリ・シャーリックです。よろしくお願いいたします」

「「「はい。よろしくお願いいたします」」」


 もう一度、頭を下げながらラファエル様やウリエル様、アミエルさんが言った。そして、ラファエル様が一歩前に出て言う。


「今回、私たちはエルフ国の手助けをしに来ました」

「ありがとうございます」

「ですが、一つ条件があります」


 それを聞いた俺たち全員が驚く。条件があるなんて聞いていなかった。もしかしたら、天使のことを他言無用にすることだとも思ったが、それはラファエル様たちがここに来て魔族と戦う時点で、いずれバレるに決まっている。


「なんでしょう?」

「私たちと同盟を結んでほしい」

「同盟ですか?」

「はい。私たちも今後次の段階に入ろうと思っています。それには下界である国と同盟を結んだ方がことを進めることが楽ですので」


(あ~)


 今の発言を聞いた俺たちは、納得した。俺たちに課せられた条件の一つに、国に話をつけてほしいとあった。それを今言ったってことなのか。


「それでしたらいいですよ」

「ありがとうございます」

「ロンローリさんはどうですか?」

「え? 私もですか?」


 話を振られたロンローリさんも驚いた表情をしていた。


「はい。私たちはルーナさんとクロエさんのことを信用しています。なのでどうでしょうか?」

「......。いいですよ」

「では、内容を説明しますね」


 ラファエル様がそう言いながら話し始めた。

 

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