第31話 エルフ国へ


 ルーナが絶望した表情になっていた。当たり前だ。俺だって、母国が襲われると言われたら絶望するのだから。すると、俺の腕にしがみついてきて


「メイソン、どうしよぅ......」

「どうするって......」


 そんなの助けに行くしかないだろ。でも、俺たちが助けに行ったところで、本当に助けられるのか? 俺の優先事項はルーナとクロエを守ること。そして、それはルーナの父親であるエリクソンさんからも頼まれている。


 それなのに、俺たちが戦場に向かっていいのか? そう考えていた時、ミカエル様が


「今回は私たちも助けに行きます」

「いいのですか?」


 素で質問してしまった。なんせ、天使族が人界とかに下りる際も、ばれないように下りていたと言っていた。


「えぇ。それに今回の件は私たちにも問題がありますので」

「「「あ、ありがとうございます」」」


 ウリエル様たちが来てくれるなら、今回の戦争も非常に事を進めることが楽になる。すると、クロエがミカエル様に向かって


「そう言えば、なんでウリエル様はエルフ国が襲われるってわかったのですか?」

「それは昨日、ルシファーを追い返した時、下界を襲うと言っていた」

「なら、尚更わからなくないですか?」


 クロエの言う通りだ。ルシファーが下界を襲うと言っていても、それがエルフ国とは限らない。なんなら、襲われる可能性が低いに決まっている。下界にはエルフ国以外にも様々な国がある。それなのになんでピンポイントでエルフ国って言いきれたんだ?


「まず前提としてエルフ国は天使国テウターに最も近い国になっている」

「え? でもエルフ国から結構ここまで時間が掛かりましたけど?」


 そう、エルフ国からここに来たわけではない。何なら、火山地帯からエルフ国まで結構な距離がある。


「それは、私たちが天使国テウターに魔法をかけているから」

「......?」


 俺たち三人は首を傾げながらミカエル様を見る。


天使国テウターに来る方法は、この場所を知っている人が紹介しなくちゃ来ることが出来ないんだ」

「でもそれって理由にはなっていないですよね?」

「まあ急ぐな。普通は、天使国テウターに行く方法を知っているもの。簡単に言えば、天使国テウターへの転移魔法を使えるものに限るんだ」

「.......」


 もう驚きすぎて何を言っていいかすらわからない。なんせ、転移魔法っていうのは、存在しないはずの魔法。だからこそランドリアなど、世界各国で転移結晶が譲歩されているんだ。


「だから、君たちはここに来るとき気付かなかったかもしれないけど、あの時アミエルとかは転移魔法を使っているってこと」

「じゃあ俺たちに転移魔法を使うこともできるのですか?」

「まあそうだな。だが、一つ条件がある」


 ウリエル様は、真剣な表情をしながらそう言った。


「私たちが下界へ下りる際、エルフ国とかに話を通してほしい。そして転移魔法のことは他言無用でお願いしたい。これが条件だ」


 俺はすぐさま、ルーナの方を向いた。このお願いに関しては、俺の一存で言える範囲を超えている。俺が今、いいですよと言ったところで、エルフ国に話を通すことはできないし、他の国も同様だ。すると、ルーナとクロエが


「エルフ国なら任せてください」

「狐人国なら私が話します」

「それは助かる」

「じゃあ今すぐにでも!!」


 ルーナがそう言うが、ウリエル様たち全員が首を横に振る。


「今すぐ行ったところで、あいつらに居場所がバレたら意味がない。だからあいつらが攻め込んでくる少し前に行こうと思っている」

「でも、それだと!!」


 ルーナの言いたいこともわかる。今すぐ向かえば、エルフ国の住民たちの危険性がより減る。だけどウリエル様たちが言う通り、もし俺たちがエルフ国に居る事をバレてしまうと、他国などにも被害が及ぶ可能性がある。


「本当にすまない」

「じゃあ、最初は少数でエルフ国に向かい、魔族たちが攻め込んでくる時、天使族の方々には来てもらうっていうのはどうですか?」


 最初から大人数で行くからバレてしまうのであって、少数精鋭で行ったらバレる可能性も低い。もし、エルフの方々が準備をし始めても、それが魔族の進行を止めるためなんて考えるはずがない。


 すると、ウリエル様たちが何か話したのち


「.......。わかった。でも誰が行くんだ?」

「俺たち三人とラファエル様、ウリエル様でどうですか?」

「なぜラファとウリエルなんだ?」


 万が一、天使族の方々が間に合わなかったとき、ラファエル様の魔法で傷を癒して時間を稼いでもらうこと。そしてウリエル様に関しては、知識が豊富なので戦い方なども教えてもらえると思う。だからこそ、その説明をミカエル様にすると


「わかった。じゃあ五人は先にエルフ国へ向かってくれ。私たちは数日後から始まると予想されるから、その時に向かわさせてもらう」

「「「はい。ありがとうございます」」」


 話が終わり、すぐさまラファエル様とウリエル様と共に外へ出ると、そこにアミエルさんが居て


「私も連れて行ってください」

「なんでだ?」

「少ししか絡みがありませんが、メイソンさんたちとは友達だとも思っています。だから......」

「わかった。じゃあ六人で行ってきてくれ」

「ありがとうございます!」


 そして、俺たち六人は転移魔法によってエルフ国へ向かった。

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