第23話 やりたいこと
「「メイソンは私にとっての英雄だよ」」
「え?」
(俺がルーナやクロエにとっての英雄?)
すると、二人は一度見合った後ルーナが
「メイソン、私たちが最初に出会ったの覚えている?」
「あぁもちろん」
忘れるわけがない。俺がロンドたちから追放されて、一人でクエストを受けていた時、ルーナやワーズさんたちがトレントと戦っていたのが出会ったきっかけ。言い方は悪いが、あれが無かったら俺はルーナとここまで関係ができていなかったかもしれない。
「トレントから救ってくれた時からメイソンは私の英雄なの。それに、メイソンは弟も救ってくれた。それだけでも私達家族の中で英雄だよ」
「私だってそうだよ!!」
次は、クロエが自分の胸に手を当てながら言った。
「メイソンがレッドウルフから救ってくれなかったら私はあの場で死んでいたかもしれない。だから私にとってもメイソンは英雄」
「......」
「だから、メイソンはもっと自信をもっていいんだよ」
「そうだよ!!」
自信か。でも、二人がそこまで言ってくれているなら少しは自信をもっていいのかもしれない。こんな身近の人物にも英雄として見られているなら。
「ありがとな」
「うん。私たちだけじゃない。絶対に他の人たちもメイソンのことを英雄と思っている人はたくさんいるんだから!!」
そこから、軽く三人で雑談をした後、アミエルさんが俺たちを呼んで食堂へ向かった。中へ入り席に座ると、テーブルの上には俺たちがよく食べているような食事が置いてあった。
「アミエルさんたちも食べるものは一緒なのですね」
「まあ厳密に言えば、私たちが食べているものを人族の人たちがまねしているだけだけどね」
「え?」
「人界で一番料理の腕がいい種族は人族なの。だから、私たちがたまーに人界に降りて料理を教えるのよ。天使族って言うことをばれないようにね」
そ、そうだったのか......。てか俺たちが知らないだけで、天使族の人たちって人族たちと絡んでいたんだな.......。
「まあ食べてみて」
「はい」
そして、俺は料理を一口食べる。
(うまい!!)
言葉が出てこない。何て言えばいいんだろう......。味に関しては、今まで食べてきた食べ物の中でも段違いにおいしい。
「どう?」
「おいひいでふ」
「きちんと食べきってから話してね」
これは失礼。きっちり食べた後に
「はい」
「おいしかったのならよかった」
「マジでおいしいです!!」
俺がそう言うと、ルーナとクロエが少し顔を膨らませながら
「私たちが作った料理とどっちがおいしい?」
「え~と......」
難しいなぁ。はっきり言って、味に関してはこっちの方が断然おいしい。だけど、ルーナやクロエが作ってくれた料理はもっと違う感じがしたんだよなぁ。
「ちょっとわからない」
「「え?」」
「嘘じゃないよ? 本当にわからないんだ」
そう、ルーナやクロエが作ってくれた料理は、味じゃないどこかに惹かれるところがあって優劣が決められない。
すると、二人はなぜか複雑そうな表情をしながら
「そう」
「そっか」
と言いながら、黙々と食事を始めた。そこから全員で他愛の無い話をして食事を終え、各自部屋に戻った。
(本当にいろいろあったな」
そう思いながら、横になったらすぐに眠気がきて就寝してしまった。その時、英雄と言う言葉が心のどこかで引っ掛かっているような気がした。
翌朝、食堂へ向かうとすでにルーナとクロエが椅子に座って待っており、俺が椅子に座るとアミエルさんが
「昨夜ガブリエル様から連絡があり、本日の夜にパーティがあるらしいので参加してください」
「「「わかりました」」」
「本日は予定が入っていませんので、各自行きたいところへ案内しますね」
すると、真っ先にルーナとクロエが
「ではアミエルさん!! 私に料理を教えてください」
「私も!!」
「いいですよ。メイソンさんはどうしますか?」
俺は......。決めていなかった。特にここへ来たからってやりたいことがあるわけじゃない。
(う~ん。やりたいことってなにかあるかな?)
ルーナやクロエは料理の勉強があるし、俺一人でもできることなぁ.......。あ、そうだ!!
「図書館や資料を見れる場所ってありますか?」
「図書館ですか」
「はい」
「ありますよ。では、私が先に案内いたしますね」
「ありがとうございます」
よかった。ここは人界より最先端の可能性が高い。そうじゃなくても、ガブリエル様など神話の方々がいるなら、俺が知りえない情報があるかもしれない。
(そう、英雄とか)
はっきり言って、英雄と言われていても、俺自身英雄が何なのかわかっていない。だったら、時間が開いたし調べるいい機会かもしれない。
そこから全員で朝食を済ませて、屋敷を後にしようとした時、
「メイソン、夜の前には帰ってきてよ!!」
「わかっている」
そりゃあ、夜になる前に帰ってこないとパーティに間に合わないからな。
「メイソン楽しんできてね!!」
「あぁ」
俺は手を振りながら二人と別れて、アミエルさんに図書館まで案内してもらった。
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