第24話 ウリエル様に相談


 図書館の目の前に着くと、アミエルさんが図書館の前にいる天使に何か説明をして、なんの問題も無くアミエルさんと共に中へ入った。


(なんだここは......)


 あたり一面見渡す限り本だらけであった。


「メイソンさんは何をお探しなのでしょうか?」

「えーと、英雄にまつわる本とかってありますか?」

「ありますよ」


 アミエルさんがそう言うと、俺の前を歩きだしながら道案内をし始めてくれた。そして、歩くこと十分ほどして


「ここにある本が大抵英雄にまつわる本です」

「ありがとうございます」

「では、何かほかに聞きたいことがあれば、近くの天使に言っていただければ教えていただけると思いますので、私は戻りますね」

「本当にありがとうございます」


 頭を下げながらお礼を言って、本を読み漁ろうとした時


「あ、後頃合いになりましたら迎えに来ますね」

「わかりました」

「では、楽しんでください」


 そう言って、次は本当に図書館から出て行った。


(じゃあ、まずは~)


 一番手前にあった本を何冊か手に取り、テーブルに座って読み始める。今まで英雄にまつわる本を読んだことが無かったため、最初の一冊はすらすらと読むことが出来たが、二冊目、三冊目と行くごとに内容が同じようなことばかり書かれていて、空き始めてしまう。


(う~ん。ちょっと違うんだよなぁ)


 本に書かれている大半が、英雄は自身が救いたい人を救う人としか書かれておらず、俺が知りたい内容ではなかった。それこそ、エルフ国で読んだ内容の方がもっと詳しく書いてあった。


 そこからしらみつぶしに本を読み漁っていくが、知りたい内容がほとんど書かれておらず、路頭に迷っていた時、誰かが話しかけてきた。


「君、何を探しているの?」


 俺はすぐさま後ろを振り向くと、そこには優しそうな雰囲気を出した金髪の女性が立っていた。


「えっと、英雄について詳しく書いている本を探しているのですが、まだ見つからなくて......」


 すると、その女性が本棚から一冊の本を手に取って渡してくれる。


「これとかいいと思うよ」

「え? あ、ありがとうございます」

「いいよ。それよりも、その本が読み終わったら少し話さないかい?」

「あ、今からでもいいですよ」


 別に今すぐ英雄について知りたいわけではなかったので、女性の方を優先した。


「それはよかった。じゃあこっちについてきてくれるかな?」

「わかりました」

 

 女性に言われるがまま、後をついて行くと、図書館を全貌できるテラスがあった。そこへ女性が座ったため、対面に俺も腰を下ろす。


「まず自己紹介からしますね。私はウリエルと言います。よろしくお願いします。メイソンさん」

「え?」


 なんで俺の名前を知っているのかという点と、ウリエルと言う名前の二点に対して戸惑いが隠せなかった。


「驚くのも無理ないですよね。名前を知っているのはガブちゃんから聞いたからですよ」

「あ、そうなのですね......」


(いやいや、そっちじゃないって!!)


 俺が呆然としていると、ウリエル様は首をかしげながらこちらを見て来ていた。


「どうかしましたか?」

「ウリエルって、あのウリエル様ですか?」

「あ~。そうですよ」


 手を合わせながら驚いた表情で答えてくれた。


「えっと、そのウリエル様は私に何の用があるのでしょうか?」

「まあ簡単に言えば、悩んでいませんか?」

「え......」


(なんでそれを......)


「ガブちゃんから相談に乗ってあげてほしいと言われたので。それに書物を読んでいる時、たまに険しい表情をしていましたよ?」

「あ~。まあそうですね」

「もし相談に乗れるのでしたら乗りますよ」


(......)


 悩みを話していいのか迷った。普通の悩みであったら知恵の天使であるウリエル様に相談していたと思うが、今回に関しては英雄についての悩みだ。


 これに関しては、ガブリエル様からの願いでもあり、神様からのお告げでもある。だからこそ絡みがあるウリエル様に悩みを相談していいのか迷ってしまった。


「多分大丈夫ですよ?」

「......」


 そこから、数分程無言の状態が続いた後、相談しようと決心がつき、話し始めた。


「ガブリエル様から英雄として世界を救う可能性が高いと言われたのですが、本当に俺ができるのかとおもっておりまして......」

「そうね。別に気にしなくていいと思うよ」

「え?」


 その回答は予想もしていなかった。何て言えばいいのだろう? 説得とかをされると思っていた。


「だって、あなたがもし成長しなかったとしても、あなたの所為ではない」

「でも......」

「大丈夫だって。あなたが今後のカギになるのは確かだけど、あなただけがカギになるわけじゃないのだから」


(そうだけどさ......)


「もし少しでもガブちゃんのことを思い出したら、考えてくれればいいだけで、今は自分のペースで頑張りなさい」

「ありがとうございます」


 俺が頭を下げてお礼を言うと、ウリエル様が耳元で囁かれながら立ち去っていった。


(相談してよかった)


 真剣に考えすぎていたかもしれない。ウリエル様の言う通り、俺一人で魔族を止められるわけじゃない。


 そして、英雄について調べようとし始めた時、アミエルさんが思っていたよりも早く迎えに来たので、調べることを断念して屋敷へ戻った。





 



 

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