第22話 神の種類


「神様が唯一見えないのは、魔族の動向なんだ」


 ガブリエル様が言った言葉に俺たち三人が驚きを隠せなかった。なんせ、神様なのだからできないことなんて無いと思っていた。


「それって、何か理由とかあるのですか?」

「これは神様が言っていたことなんだけど、私達と魔族では管轄が違うらしい」


 そして、ガブリエル様が一呼吸おいてから


「ここからは私の推測なんだけど、神様にも種類があって、メイソンくんやルーナちゃん、クロエちゃんたちを見守る神様たちと、魔族だけを見守る神様がいると思うの」

「......」

「だから、私にお告げを教えてくれる神様も魔族の動向だけはわからない」


 言われてみればそうだ。この話を聞くまで俺たちは固定概念を持っていたと思う。いや、持っていたと断言できる。なんせ、神様と言う言葉が出てくるまで、神様は一人しかいないと思っていた。だけどそれは俺たちの思い込みであって、神様が数人いてもおかしくはない。


 少し考えればわかることだ。神様が一人なら、この世界の秩序を崩すなんて言葉を言うはずがないし、コントロールできるはずだ。コントロールできるなら、リーフの件やバカルさんの件だって解決できたはず。もっと言えば、魔族によってドラゴンゾンビになりえるはずがない。


 そんなことが出来てしまえば、種族間でのパワーバランスが崩れてしまうのだから。


「教えていただきありがとうございます」

「いいよ。だって私はあなたたちに期待をしているのだから」

「期待ですか?」

「えぇ。だって、神様から人族の名前を聞くなんてなかったから」


(え? そうなの?)


「勇者の名前とか聞いたことが無いってことですか?」

「そうね。勇者と魔王は数百年に一人現れると言われていることだから、別にお告げを言うほどのことじゃないらしいわ。でも、今回は今までより大掛かりなことになる可能性があると思って、お告げをしてくれたんだと思う」

「そうなのですか......」


 てか、勇者と魔王って数百年に一人現れるのかよ。ロンドが初めての勇者だと思っていた。本当に天使国テウターに来てから、色々と固定概念が崩されていくなぁ。


「まあゆっくりして行ってよ。後で紹介したい人もいるからさ」

「はい」

「じゃあ、泊るところとかはアミエルに聞いて。それとメイソンくんは後でちょっと話したいことがあるからね」

「わかりました」


 話が終わり、おれたちはガブリエル様に会釈をして部屋を後にした。部屋の外には、アミエルさんたちが待っていてくれて


「では、今から案内しますね」

「聞いているのですね」


 何もかも知っているってことか......。少し不思議な気分だ。


「はい」

「お願いします」


 そしてアミエルさんたちによって、俺たちは宿泊する場所に移動した。



(で、でかい......)


 俺たちが泊る場所に到着すると、まず最初に思ったことは大きいということであった。俺たちが住んでいるところも大きいが、それと同等か、それ以上の大きさがあった。はっきり言って、客をもてなす場所としては大きすぎる場所だと思った。


 屋敷の中に入ると、アミエルさんが頭を下げながら


「本日より天使国テウターを出るまで、メイソンさんたちのことは私たちが案内しますので、よろしくお願いいたします」

「「「こちらこそよろしくお願いします」」」


 そして、各自部屋の案内をされた後、食堂に案内されて


「私たちが料理などもしますので、でき次第お部屋にお伝えに参りますね」

「何から何までありがとうございます」


 アミエルさんたちには頭が上がらない。天使国テウターを移動する際、アミエルさんたちが居なくちゃ移動することも困難だ。それに加えて、俺たちのことを専属で案内してくれると言っている。本当に感謝しても仕切れない。


 その後、アミエルさんたちから色々と説明を受けて、俺の部屋に三人で集まった。一旦、俺がベットの上に座ると、ルーナとクロエもベットの上に座って


「今日はいろいろと会ったね」

「そうね」

「あぁ」


 ルーナの言う通りいろいろあった。いや、ありすぎた。ドラゴンゾンビの討伐から、天使国テウターへの案内。そして、ガブリエル様との対面と神様からのお告げ。それ以外にも考えれば考えるほどいろいろとあった。


「それにしても、ガブリエル様って実在したんだね」

「それ、私も思った!!」

「そうね。でも可愛かった」

「ね~。本当に可愛かった」


 ガブリエル様のことを可愛いと言うのもわかる。ていうか、イメージと違いすぎた。もっと、年配の方だと思っていたのだけど、実際には小さな女の子だったのだから。


「メイソンもそう思うよね?」

「まあそうだな」

「でも、手は出しちゃダメだよ?」

「ださんわ!!」


 流石にガブリエル様をそう言う目で見ることなんてできない。まず、女の子に対して恋愛感情とか持つことは無いし。まあ、そう言う人を好きって言う男性もいるけどさ。


 すると、俺の言葉を聞いて二人はなぜかホッとした表情をしていた。


「それよりも、やっぱりメイソンってどこに行っても英雄なんだね」

「いや......」


 俺が口籠った時、ルーナとクロエが手を握ってきた。

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