第17話 ドラゴンゾンビ
(え? どうなっているんだ?)
三人とも呆然と焼け焦げた一帯を見てしまった。
「これって......」
「えぇ。普通こんなこと起こらない。火山が噴火したとかならもっと広大な被害が出ているはずよ」
クロエの言う通り、火山が噴火したら今目撃している場所の数倍、いや数十倍は被害が出ているはずだ。目の前の被害が小さいとは言わない。だが、これは誰かが人為的にやったとも思える現象だ。
(やはり、魔族か?)
ガイルさんに言われた依頼は、魔族の出現情報が出たから火山地帯を調査してほしいという内容。今の光景を見たら、それもあり得るとすら思えた。
「注意を払って探索しよう」
「うん」
「わかったわ」
三人でこのエリアを調査する。そして十分ほど見回したところで、少しずつここで何が起こったかがわかってきた。まず、一方方向に焼け焦げた跡があること。それに加えて、誰かがここで戦ったであろう形跡。
(これがもし魔族だったとしたら)
そう考えたらゾッとする。なんせ、ここまでの被害を出せる戦闘を街中で行われたら? そう考えるだけでも、人は数百から数千は死んでしまうかもしれない。
「ねぇ、あそこ見て」
ルーナに言われて見てみると、そこには俺たちの腕サイズ程はある爪が落ちていた。
「え? これって......」
「で、でも。これってドラゴンの爪よね?」
「あぁ。俺もそう思ってる」
三人で目の前にある爪を見る。
(もしかして、ドラゴンがここで戦ったのか?)
でもそれなら、なんで俺たちは気づかなかったんだ? ここにある形跡を見る限り、最近行われた戦闘だとわかる。流石に、ここに来るまでに音や気配は感じるはず。それなのになんで......。
「爪以外にも何か手掛かりがないか探そう」
俺の問いに二人は頷き、ドラゴンが居た形跡を探す。すると、最初は翼の一部を見つけ、次は鱗、牙など様々なものが見つかっていった。
「やっぱり......」
「そうだな。ドラゴンがここで戦った。そして、それは多分魔族」
「え? なんで魔族だってわかるの?」
「ドラゴンと対等にやり合える種族がどれぐらいいる? それに加えて、ガイルさんの依頼は魔族の調査。それを踏まえたら魔族だと推測できないか?」
「言われてみれば......」
はっきり言って、ドラゴンと対等に戦える存在がこの世界にどれぐらいいる? ここ一帯を見る限り、確実に大勢で戦ったわけではない。それを考えると、一人か二人で戦ったと推測できる。
(俺たちもドラゴンと戦えって言われたら......)
勝てる自信がない。なんせ、ドラゴンは神話にも出てくるような存在。そんな奴と正面から戦ったところで勝てる可能性がいくらある?
そうじゃなくてもドラゴンは、冒険者ギルドで災害級指定されているモンスター。そんな存在を俺たち三人で倒せるとは到底思えなかった。
「一旦、引こう」
「「え、なんで?」」
「今の俺たちじゃ荷が重い」
まず、今受けているクエストですら荷が重いんだ。魔族と俺たちが戦っても勝てる保証はない。リーフを倒した時も、途中まで人族であったし、本当の魔族を倒した試しが無い。
それに加えて、今回の相手は、ドラゴンを単独または少人数で倒せる魔族。そんな奴と真っ向から戦って無事で住むはずがない。
「......。わかったわ」
「うん」
「じゃあ、すぐに火山を下ろう」
そしてすぐさま全員で火山を下ろうとした時、焼き焦げた一帯の奥の方から変な音が聞こえた。
(やばい!?)
感覚がそう言っている。それほど殺気がこちらへ向いてきていた。それは、ルーナとクロエも感じているようで、二人とも先程より表情がこわばっていた。そして、急いで下りようとした時には遅かった。
すでに、目視できる範囲でボロボロのドラゴンがこちらへ近寄ってきて
「早く逃げろ」
「「「え?」」」
「早く......」
そう言った瞬間、ドラゴンがこちらへ高速で移動してくる。俺は二人の前に立ち、
「なんでドラゴンが話せるんだ?」
「わ、わからない」
「ドラゴンって話せるの?」
誰もが疑問に感じていた。そりゃあそうだ。モンスターが話せるなんて聞いたことが無い。
「お前たち、早く逃げるんだ」
「二人とも、俺が時間を稼ぐから下ってくれ」
「「いや!!」」
「でも」
今とれる最善の選択は、誰かがこの情報を伝えること。そうじゃなければ、被害がより出てしまう。
「メイソンを置いて逃げるなんてできないよ」
「そうよ!!」
そして、ドラゴンがこちらへ攻撃してくるのを
「それでいい......。早く逃げるか、殺してくれ」
それを聞いた俺は、バカルさんの時が頭によぎる。
(もしかして......)
「あなたはもしかして、魔族によって蘇ったんですか?」
今回、初めてドラゴンを見るけど、今目の前にいるドラゴンはおかしかった。全身がボロボロであり、いたるところが変色していた。
「あぁ。だから」
ドラゴンがそう言うと毒ブレスを放ってきた。
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