第16話 火山地帯


 火山地帯が近づいてくるごとに、うっすらと汗をかいてきた。


(やっぱり暑いな)


 そう思いながら二人の方を向くと、クロエは俺と同様に暑そうにしていたが、ルーナは平然としていた。


「クロエは暑くないの?」

「え? 全然。二人は暑いの?」

「暑いよ......。暑くないクーちゃんが羨ましい」

「俺もクロエが羨ましいよ」


 それにしてもなんでクロエだけ暑くないんだ? そこだけ涼しいとか? いや、そんなわけない。


「あ!」

「え? どうしたの?」

「ルーナ、指輪貸して」

「え? 良いけど」


 すると、ルーナは指輪を外して俺に渡してくる。それを受け取ると、すぐに俺は指輪をつける。


「やっぱり。暑くない......」


 感覚的には冷水を飲んで、ほんのり涼しい気分だ。俺が安らいでいると、ルーナが


「どう?」

「やっぱりこれだ」

「え? 私にも貸して!!」


 俺は一旦クロエに返した後、ルーナへ指輪が渡った。すると、ルーナも俺と同様涼しそうな表情をしていた。そして、ルーナがクロエに


「この指輪、ちょっと貸してよ~」

「嫌!! これは私の指輪なの」

「でも暑いし......」


 その発言を聞いて、クロエが即座にルーナから指輪を返してもらうと、大切そうに抱え込んで


「ルーちゃんだって指輪を貸してって言われても貸さないでしょ?」

「うんそうだね。ごめん」

「ううん。大丈夫」

「え? 俺なら指輪貸すけど」


 すると、ルーナとクロエがこちらを睨んできながら


「「それはメイソンだから!!」」

「あ、はい。ごめんなさい」


 なんでいつも怒られなくちゃいけないんだろう......。自分の意見を言うタイミングをもうちょっと考えるべきかなぁ......。そこから、俺とルーナは冷水を飲みつつ、依頼場所まで進んだ。



 数日経ってクエストの場所へ到着した。あたりを見回す限りすべての山が噴火しそそうであった。


(数日前まで平穏だったのにな)


 つい先日まで移動していた山道では、噴火なんて頭に思い浮かばなかったが、現在移動している山道はどの山もいつ噴火してもおかしくないと思えた。それに加えて、この前まで遭遇していたモンスターとは少し異なり、火属性の魔法などを使ってきそうなモンスターもちらほらと出てきた。


「ここからは注意を払って移動しよう。ここからは全員で戦おう。良いねクロエ?」

「わかったわ」

「うん」


 ここまでの戦闘でクロエの実力が最低限わかった。流石にここから先も戦うのはよくない。最悪の場合、ランドリアへ戻る必要も考慮しなくてはならないから。


 モンスターに気づかれないようにするため、馬車を道具収納アイテムボックスの中へ収納して山道へ進んでいくと、モンスターの行動に異変を感じた。


(なんだこれは?)


 モンスターが大半が山頂から下っていっていた。普通ならこんなことはあり得ない。食糧不足や気候の変化が理由で山頂から下っていくのはわかる。だが、それは少数であり、こんないっぺんにモンスターが行動するのはおかしい。


 そう思っていた時、全長一メートルはある昆虫数体に加えて、二体のワイバーンと遭遇してしまった。


 すぐさま、魔剣グラムを抜きながら身体強化(大)と高速を使い、一体の昆虫を討伐する。すると、近くにいた昆虫二体が俺目掛けて攻撃を仕掛けてくる。それと同時にワイバーンはルーナとクロエに火の息を放った。


 俺はすぐさま宝石ダイヤロックを使い、全身を守る。一方、火の息をルーナの魔法、守護プロテクトで守る。だが、熱風までは防ぐことが出来ず、ルーナが苦しそうにしている時、クロエは前にでてワイバーンの首を斬り落とす。


(!!)


 指輪を買っておいてよかったと思えた。もし指輪の火耐性が無かったらここまで瞬時の行動することが出来なかっただろう。


 そこからはあっという間であった。最初こそモンスターの数が多く、地形も悪かったため戦闘に苦戦すると思っていたが、最初の段階で数体のモンスターを討伐することが出来たので、各々モンスターを討伐していき、数分も経たずに戦闘を終わらすことが出来た。


「お疲れ様」


 俺はそう言いながら、二人の元へ近づく。


「お疲れ~」

「お疲れ様!!」

「怪我とかない?」

「「それはこっちのセリフ!!」

「え?」


 二人がそう言うと、瞬時に俺の体をべたべたと触って来た。気が済むまで二人が触り終わると、安堵した表情でこちらを見てきて


「まずメイソンは自分のことを最優先してよね」

「で、でも......」

「でもじゃない!!」

「そうだよ。メイソンが一番危ない場所で戦っているんだから、まずはメイソンの身を案じるのが当たり前だし、もっと自分自身を気遣って」

「はい......」


 でもさ、自分よりも二人を心配するのが最優先じゃないのかなぁ? まあ二人が言いたいこともわかる。パーティメンバーの中で一番危ないところで戦っていたらその人を気にするのが当たり前だと思うし。


 そう思いながらも、全体を見回していると


(やっぱりおかしい)


 やはり、ガイルさんの情報通り、ここには魔族がいるのか?


「二人とも慎重に行こう」

「えぇ」

「うん」


 そして、徐々に進んでいくとルーナが


「あそこを見て!!」


 指さされたところを見ると、そこには焼け焦げた一帯があった。


あけましておめでとうございます(^^)

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