第15話 道中


 ロンドたちと別れて少し時間が経ったところで


「この馬車、すごすぎない!?」

「だな」

「ええ」


 ルーナの言う通り、思っていた以上にこの馬車は性能が良すぎる。まず第一に魔力で動くシステムになっているため馬がいらない。そして、運転手に関しても、言ったことがある場所なら自動で動いてくれる馬車になっている。今はまだ、三人で交代交代に運転をしているが、今後は自動で動いてくれるのもそう遠くは無いと思う。


(よくこんな代物を渡してくれたな)


 ここまで性能が良いものなら、自分たちで使った方が効率が上がるのは間違いない。


(本当にありがとな)


「あ! メイソン」

「ん?」

「指輪って何か効果とかあったりするの?」

「そうだよ。俺なら氷、ルーナのなら水、クロエは火の耐性が付与されているよ」


 それを聞いた二人は驚きながら指輪を二度見していた。


「本当にありがとう」

「ありがと」

「いえいえ」


 その後、何度も二人は俺と指輪を交互に見てきた。


(なんなんだ?)


 俺は指輪じゃないぞ? それに俺の顔を何度も見られても恥ずかしいんだが......。っていうか、俺の顔なんて見ても楽しくないだろ。


「はぁ~。まあ旅は長いんだし、気長に行きますか」

「「うん!!」」



 そこから数日間、特に何もなく進んでいたが、少し離れた場所にモンスターを発見した。すると、クロエが真剣な顔をしながら


「ここは私に任せて」

「みんなで戦った方がいいんじゃないか?」


 どんな戦闘でも全員で戦った方が安全に倒せる。なのになんで......。


「これは私のため。いや、みんなのために一人で戦いたいの」

「「え?」」


 俺とルーナは首を傾げる。みんなのために一人で戦いたいってどう言うことだ? 


「簡単に言えば、私の実力を示すため。今このパーティは確実にメイソンを主軸に戦っている」

「うん」

「そうだな」


 自分で言うのも何だが、このパーティの主体は俺だ。今まで俺がきっかけを作って戦闘に大きな変化が起きていた。


「だけどこれからは、それで本当にいいのかって思ったの。ルーちゃんは後方支援として今も役に立てている。だけど私はどう? 現状ですらメイソンが前衛に加えて、私のポジションである中衛を行っちゃっている」

「......」


 言われてみればそうだ。ルーナの護衛も俺がやっている時すらある。それ以外にも考えるだけでも何個か思い浮かぶ。


「私もみんなに任せられる場所が欲しい。だから今日から火山地帯に到着するまでは、私を主体に戦って、助けてもらえる時だけ助けてもらう形にしたい」

「......。わかった」

「うん」

「ありがと」


 俺たちの回答を聞いたクロエはホッとした表情をした。


「でも、一ついっておくぞ。クロエがいらない場所なんて無いんだからな」

「わかっている。でも念のため」

「あぁ。じゃあお願いするよ」


 そう。クロエがいらない場所なんて存在しない。逆にクロエが抜けられると困る。なんせ、現状は中衛も俺が行っているけど、リーフみたいなやつと出会ったら確実に中衛なんてできるわけがない。


 それに加えて、クロエが居なくなってしまった時点で、このパーティは崩壊するかもしれない。クロエのおかげで今の関係になっている。だから、精神面的にも必要な存在なんだ。それはルーナも同様。誰一人としてかけていい人なんていない。


 そしてモンスターとクロエの戦闘が始まった。そこからは圧巻だった。いや、クロエに対しての認識が甘かった。はっきり言ってなめていた。人数不利を背負っているのにも関わらず、自分の利点をうまく活用してモンスターをことごとく倒している姿を見て


(すげえ......)


 心の底からそう思えた。剣術と組み合わせながら俊敏な動きをして、モンスターをさばききっていた。それも物の数分で。そしてこちらへクロエが戻ってくると


「お待たせ」

「いや、すごかったわ」


 俺が素直に褒めると、クロエは少し顔を赤くしながら


「え? そう?」

「あぁ。マジですごかった」

「あ、ありがとぅ」


 するとルーナがクロエの体をべたべたと障りながら


「どこか痛いところは無い? 怪我はしていない?」

「大丈夫よ。もし怪我をしたら真っ先に言うわ」

「うん!! 絶対に言ってね」


 そこから何度か戦闘があったが、平然とした表情でモンスターを蹴散らして行った。そして、数日が経ち、地形が変わる。この前まで平原だったのが、徐々に山道が増えてきた。


(近づいてきているってことか)


 案の定、平原地帯より移動スピードは落ちて、モンスターと接敵する回数も増え、平原地帯とは違い、高ランク帯のモンスターが現れ始めた。それでもクロエは一人で戦おうとしたので


「そろそろみんなで戦えばいいんじゃないか?」

「ダメよ。ここからが勝負なんだから。それにもし私が危なくなったらメイソンが助けてくれればいいでしょ」

「ま、まぁ」


 いや、助けるのは当たり前として、危ないからって意味だったんだけどなぁ。でもクロエがこう言うならしょうがないか.......。


「じゃあよろしくね!!」


 その後も、山陸に入ってもクロエが主体となってモンスターを討伐してくれて、徐々に火山地帯が見え始めてきた。


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