第14話 ロンドからの贈り物


 家に帰ると全員が疲れ切っていたため、すぐに就寝してしまった。そして翌朝、食堂で二人と出会うと昨日のように朝食を料理してくれていた。


「ルーナにクロエ、おはよう」

「「メイソンおはよ!!」」


 そこからは昨日と同じで、二人が椅子に座ってから三人で朝食を取り始めた。だが、昨日と一点だけ違う点があった。


「なんで二人ともそんなににやけてるの?」


 俺がそう尋ねると、ルーナとクロエは顔を見合わせた後


「そう見える?」

「うん」

「そりゃあねぇ~。ね、ルーちゃん」

「ね~」


(え? さっぱりわからないんだけど)


 俺は、二人のことをよく観察してやっとわかった。指輪だ。昨日上げた指輪を眺めた瞬間に限って、二人とも表情が緩んでいた。


「あ~。そんなに喜んでくれてよかったよ」

「やっとわかったんだね。メイソンってプレゼントのセンスとかは良いのに、そう言う所が鈍感だよね?」

「うんうん。私もそう思う」

「......」


 俺、なんで貶されているんだ? ひどくない? せっかくプレゼントあげたのに......。まあ、喜んでくれているのは良いけどさ。それに、鈍感って言われても、毎日人を観察しているわけじゃないんだから。それこそ毎日ルーナやクロエを観察していたらキモいだろ。


「まあ、いいわ。今日、ロンドたちと会うんでしょ?」

「そうだったね。でもなんで勇者と会うの? はっきり言って意味が分からない。メイソンに嫌なことをしてきた相手だよ? 仲良くする必要ないじゃん......」

「まあルーナの言うことも一理あるな」


 昔、嫌がらせなどを受けた人間と仲良くする必要なんてない。だけど、俺はそう思わない。そりゃあロンドのことを恨んだことだってあったさ。でもあいつも勇者と言う立場でキツイ状況だった。


 誰しもミスはあるに決まっている。俺は一回ミスしただけで関係を切るなんて勿体ないと思う。だからこそ、ロンドたちとはもう一度接していきたいと思った。


「だったら!!」

「でもさ、ロンドだって勇者の前に人間だ。ミスはある。だからこそもう一度ぐらい腹を割って話してもいいんじゃないかって思ったんだ」

「「......」」

「そう言うわけで、二人には申し訳ないけどもう少しだけロンドのことを多めに見てほしい」


 すると、二人は嫌な顔をしながらも、最終的には説得を諦めた表情になって


「わかったわ」

「まあメイソンがそう言うなら。でも今回限りだからね。次もう一度そう言うことが合ったら絶対に止めるから!!」

「あぁ。ありがとな」


 話が終わった途端、そっぽ向いて黙々と朝食に戻った。


(二人ともありがとな)


 クロエはともかく、ルーナは俺がどん底まで落ちているのをまじかで見ているからこそこう言ってくれているに決まっている。もしもう一度同じような状況に陥ったら俺の精神がどうなるのかまで考えてくれて。


 だけど、だけどさ。俺は自分の身よりもあいつと。あいつらともっと絡んで知っていきたいと思う。追放された時は、あいつらの所為だと思っていた時もあった。でも、俺が悪い場面もあったかもしれない。


(こう考えられるのもルーナやクロエのおかげなんだけどな)


 そう。あの時、ルーナが俺を助けてくれたり、クロエと出会っていなかったら今の俺はいない。だからこそ二人には感謝しても仕切れない。


 そして朝食を取り終え、ロンドたちとの集合場所へ向かう。するとそこには、今まで見たことも無いような大きさの馬車が置いてあった。


(え?)


 その時、ロンドたちが俺たちに気付いて


「メイソン!!。こっちにこい」

「あぁ」


 言われるがまま、馬車の目の前に着くと


「これは俺たちからのプレゼントだ。って、結局半分は国王から出資してもらったんだけどな」

「「「え?」」」


 どう言うことだ? 半分は国王から出資してもらった? いやその前に、ロンドたちが俺たちにプレゼント?


「メイソンには本当に悪いことをしたと思っている。だからこそ馬車は受け取ってほしい。てか受け取ってくれ。俺たちの資金も入っているが国の資金も使われているから受け取ってもらわなくちゃ困る」

「別にもう気にしていないさ。そりゃあもらえるなら嬉しいけどさ。本当にいいのか?」


 はっきり言って、目の前にある馬車は今の俺たちじゃ到底買えるしろものじゃない。そんな物をもらうって。それもロンドたちも半分出資してくれているっていう。自分たちで使えばいいのに。

 

「いいって言ってるだろ。だからこれからも頑張れよ。俺たちも頑張って追いつくからさ」

「追いつくって。別にもう......」


 ロンドたちは、最初から勇者パーティだ。俺たちの方こそ追いかける立場じゃないか。すると、ロンドはボソッと小さな声で言う。


「は~。これだからメイソンは......。俺たちは国から言われた立場であって、お前たちは国に認められた存在。そこは違うだろ」

「ん?」

「なんでもね~よ。早く受け取れって」

「あぁ。ありがとな!!」


 そして馬車を受け取って中へ入り、出発させた時、ミロが


「ルーナにクロエ、頑張りなさいよ!!」

「うん」

「わかっているわ」


 その次にロンドとシャイルが


「メイソン、死ぬなよ。お前は俺の......」

「メイソン頑張れよ!!」

「あぁ。二人ともありがとな」


 ロンドたちが見えなくなるまで、手を振りながらクエストである火山地帯へ向かい始めた。


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