第3話 いわく付き物件
ガイルさんの後を数十分ほど歩くと、住居が徐々に減っていくのが分かった。それに加えて徐々に空気が重くなっていくのを感じた。
(なんなんだ?)
ランドリアの敷地にいるとは思えないほどの空気の重さ。この場所がまとっている空気は、ダンジョンとかとそこまで遜色がない。はっきり言って、モンスターが出てきてもおかしくないとすら感じる。
俺がルーナやクロエの方を向くと、どちらも血相を変えていた。そこで、俺はガイルさんに質問をする。
「本当にここら辺に住居があるのですか?」
「あぁ。もうすぐ着くぞ」
「わかりました」
そこから数分程歩いたところで、大きな屋敷を目にした。ルーナが所有している別荘と遜色がないほどの大きさであった。外装には木の枝などがまとわりついていて、誰も手入れをしていないのが分かる。
「着いたぞ」
「ここが書類に記されていた屋敷か」
先ほどから感じている重い空気がドッと襲ってくる。それはルーナやクロエ、そしてガイルさんも感じているようで顔色が徐々に悪くなっていた。
「本当にアンデットがいてもおかしくないわね」
「うん。書類を見た時は半信半疑だったけど、この空気感を感じたら嘘ってわけでもなさそう」
クロエやルーナが言う通り、アンデットがいてもおかしくないとすら感じる。何なら、アンデットがいなくちゃこの空気がどこから引き起こされているのかわからなくなる。
「じゃあ中に入ろうか」
「「「はい」」」
ガイルさんに言われるがまま、中に入る。すると、先程まで感じていた重い空気がより一層増した。
(やっぱりここには......)
そうとしか思えなかった。そこから、ガイルさんに案内されるがまま一室ごと中へ入る。最初は一階にある食堂と来賓室。そして風呂場を案内されて、次に二階へ続く階段を歩いている時
(!?)
一つの部屋から背筋が強張るほどの空気感を感じる。それはルーナやクロエも感じていた。だが、ガイルさんだけは先ほどと平然としている様子であった。
(何回も来ているからなのか?)
そう思いながら、二階にある四つの部屋を徐々に案内されていった。まず最初に入った部屋は、普通の部屋って感じであり、さほど重たい空気を感じなかった。それは、二室目、三室目も同様であったが、四室目に入ろうとした時、俺とルーナ、クロエは後ずさりながら中へ入るのをためらってしまう。
そこで、二人と目が合い
「なんかこの部屋......」
「ルーちゃんの言いたいことわかるよ。私もこの部屋に入ってはいけないって直感が言ってる。メイソンは?」
「俺も二人と一緒だ」
すると、ガイルさんが首を傾げながら
「俺は何ともないが、三人は何か感じているってことだよな?」
「「「はい」」」
ガイルさんがギルドで言っていた通りなら、物件と契約をして、何かしらのトリガーを満たしたらアンデットが現れるはず。だが、今の俺たちはまだ屋敷の下見であり、この物件と契約もしていない。それに加えて、屋敷に入ったばかりのため、トリガーを満たしたとも思えない。
(どうなっているんだ?)
「一旦引き返すか?」
「俺は引き返さなくて大丈夫ですが、ルーナやクロエが引き返したいと言うなら......」
そう。ここまで来たのなら引き返さなくていいと思うが、ルーナやクロエが引き返したいと言うなら引き返してもいいと思う。この部屋に何があるかわからないし、最優先はルーナとクロエの安全だから。すると、ルーナとクロエが
「私も大丈夫です」
「私も」
「そうか......。三人がそう言うなら中に入ろうか」
そして、ガイルさんが部屋の取っ手に手を付けて扉を開ける。そして全員で中に入ると、そこは先程入った三つの部屋と変わらない内装になっていた。
(??)
首を横に傾げながらルーナやクロエの方を向くと、二人とも俺と同様の様子になっていた。そこから、全員で部屋の内部を一つ一つじっくり見る。だが、どこもおかしな点など見つからなかった。
「どうだ? 何かおかしな点でもあったか?」
「いえ、何もありませんね。二人は?」
「私もわからない」
「私も」
すると、ガイルさんは首を傾げながら
「じゃあ、一回来賓室に戻ろうか」
「「「はい」」」
そして部屋を後にしようとした時、一瞬だけ壁側から魔力を感じた気がしたため、俺はすぐさま壁をの方を向く。だが、先程の感じたのが無くなっていた。その時、ルーナが
「どうしたの? メイソン」
「いや、なんでもない」
「そっか。じゃあ戻ろっか」
「あぁ」
扉を閉めて全員で来賓室に入り、椅子に座った時ガイルさんが言う。
「それでどうする? この物件を買うか? 俺はあまりオススメしないが......」
「......」
俺もあまり住みたいとは思えない。だが、ルーナは違ったようで
「私はこの家を買ってもいいと思う。やっぱりギルドで言った通りこの屋敷をどうにかできるのは私たちだけだと思うから」
「......。そうね」
「わかった」
「じゃあ、この紙にサインを頼む」
するとルーナやクロエが俺にアイコンタクトをしてきた。
(あ、俺がサインする感じね)
そう思いながら渋々サインする。
「金はまけておくようにオーナーに頼んでみるよ」
「「「ありがとうございます」」」
その後、ガイルさんから軽い物件の説明を受けて屋敷を後にしていった。
(はぁ......)
これで一応は俺たちの拠点もできたってことだよな......。まあ、素直に喜こぶことができないけど。
そこから三人で軽く夕食を取って、俺は先に部屋に戻り就寝しようとした時、ルーナとクロエが俺の部屋に入ってきた。
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