4章 Aランク冒険者
第1話 拠点
狐人族の国を後にしようとした時、ロンローリ様がこちらに近寄ってきて
「メイソンくん、クロエを頼んだよ」
「はい」
「それはクロエやルーナさんも同様だからね」
「「え?」」
二人は茫然とした表情でロンローリ様を見る。
「二人ともメイソンくんと仲間って思っているよね?」
「「うん、はい」」
「じゃあ、メイソンくんの足かせになってはいけない」
すると、ルーナやクロエはハッとした表情で俺の方を見て来た。
(え? いや、そんなこと思ってないんだけど......)
「その表情なら二人ともわかっているようだね」
「「うん、はい」」
「いや、俺は別にそんなこと.......」
そう、俺はルーナやクロエ、その他大切な人たちを守るために英雄になると決めた。だから足かせとかあまり関係ないんだけどなぁ。
「メイソンくんのために言っているわけじゃない。二人のために言っているんだ」
「え?」
俺のためじゃなく、ルーナやクロエのため?
「仲間っていうのは互いに信頼できる存在だ」
「俺は二人のことを信頼していますし、今後もそれは揺るがないと思いますけど」
「それは違うよ。力の差が徐々に開いて言ったら、自分一人で何とかしなくちゃいけないと思う時期が来る。それは信頼と呼べるのか?」
「......」
ロンローリ様の言葉を聞いて、俺は何も言えなかった。今は二人の実力も信用しているし、精神面でも助けてもらっている。だけど、俺と二人の実力差ができてしまったら、今後ロンローリ様が言う通りになる可能性もあり得る。
「それにメイソンくんがなにも思わなかったとしても、クロエやルーナさんはそうじゃないと思う。足を引っ張っていると思うだろうね。だからこそ、今の関係を崩さないように頑張ってくれってことだよ。私ができることなら力を貸すから」
「「「ありがとうございます」」」
ロンローリ様と話が終わった後、狐人族のみんなと軽く別れの挨拶を済ませて狐人族の国を後にした。
☆
ランドリアに着き、真っ先に宿屋に向かっている時、ルーナに言われる。
「そろそろ私の別荘じゃなくて、拠点となる場所が欲しくない?」
「え?」
「だっていちいち別荘に行くとワーズとかが居るじゃない? だったら家を買うのはありかなって思う」
「そ、そうね。私もそう思うわ」
その発想はなかった。でもルーナの言う通り、毎回ルーナの別荘に行くのは気が引けるし、そろそろ家をもっていもいいかもしれない。それに三人でお金を出し合えばそれなりに良い家が買えるはずだし。
「わかった。じゃあ周りの人たちにも聞きながら家を探そう」
「うん!!」
「でも、誰に聞くの?」
「あ~。そうだなぁ......」
住みやすい家などを知っている人が身近にいるかと言えばそうじゃない。ていうか、俺の周りって言うとロンドたち勇者パーティぐらいだし。
(は~。誰がいるか......)
「ギルドマスターのガイルさんか、国王ぐらいか?」
すると、二人はギョッとした表情になりながら
「国王様に頼るのはちょっと......」
「うん。私もそう思うわ」
「そうだよなぁ」
じゃあガイルさんに頼るのが無難かなぁ。でもあの人もギルドマスターである以上、大変だろうし......。こう考えると、俺って人脈がないんだな。その時、ルーナが肩を叩きながら
「メイソンがスタンピートを終わらせたんだし、ガイルさんに頼ってもいいんじゃないかな?」
「でもガイルさんだって大変だろうし」
「私たちだっていろいろと頑張ってきたんだし、これぐらいは頼んでみてもいいんじゃないかな?」
「そうよ! 少しぐらいは恩を返してもらわなくちゃね」
「まあそうだな」
一旦、行く場所が決まったので冒険者ギルドへ向かった。三人で雑談をしていると、あっという間にギルドの目の前に着き、中に入る。すると冒険者たちが俺たちの方を向き、一斉にこちらに近寄ってきて
「英雄が来たぞ!!」
「あの時はありがとう!!」
「あ、はい」
なんて言っていいかわからず、変な回答をしてしまった。
(前にもお礼は言われたし別にもういいのに)
その後も、色々と質問やお礼などを言われて受付までたどり着けない状況になっていた時、ガイルさんがこちらに近寄って来てくれて
「お前ら、メイソンたちを困らせるな。奥の応接室に案内する」
「ありがとうございます」
俺は全員に頭を下げて、ガイルさんの後を続くように応接室の中に入る。
(前はあんなに緊張したのに今は何とも思わないな)
「これが慣れか......」
「ん? なんか言ったか?」
「いえ、なんでもありません」
そして、全員がソファーに座ったところでガイルさんが言う。
「それで依頼でも受けに来たのか?」
「いえ、少し頼みたいことがありまして」
「? なんだ?」
俺はルーナやクロエの方を一瞬向いた後
「三人で住みやすい家を探していまして」
「は、は~」
頭を搔きながら俺たちの方を見てくる。
「わかった。だがお前たちはもっと自分の立場をわきまえた方がいい」
「え?」
すると、ガイルさんは淡々と話し始めた。
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