第10話 主犯格との出会い


 俺は、ロンドの胸倉を掴みながら


「どういうつもりだ!」

「は?」


 すぐに俺の手を振りほどこうとしてきたのでより一層強く握りしめる。そして、再度睨みつける。


「どういうつもりだって言っているんだ!」

「......」


 その時、クロエが俺を軽く叩き


「メイソン、勇者も困惑しているから、きちんと説明してあげて」

「あ、あぁ」


 俺はそっとロンドから手を離すと、咳をしながら床へ座り込む。


「な、なんなんだよ。メイソン」

「お前の師匠、リーフさんの弟子がルーナを連れ去った」

「え?」


 先程倒した刺客の刺青を見せると、ロンドやシャイル、ミロは驚いた表情をしてこちらを見て来た。


(しらじらしい)


「は、じゃねーんだよ! お前たちが俺に嫌がらせをしていたのは気づいていたんだよ! ルーナの一件もそれだろ! クソが......」

「ちょっと待ってくれ。リーフさんに言われた通り、お前たちに見返す行動をしたのは事実だが、攫うまでは......」

「え?」


(本当に知らない?)


 だとしたらなんで......。


「じゃあ、なんでリーフさんがルーナを攫うんだよ」


 すると、俺を嘲笑うかのように言った。

 

「そんなのわかんねーよ。でもルーナが攫われたのってお前のせいじゃねーのか?」

「......」

「リーフさんが何をしようと俺には関係ないじゃないか」

「関係ない? お前の師匠が連れ去ったんだぞ? 関係ないわけないだろ」


 もし本当にロンドが知らなかったとしても、こいつの師匠が攫った時点で関係が無いわけがない。リーフさんと一緒に居た時点で、おかしな行動ぐらいあったはずだ。


「......。わかったよ。一緒にリーフさんのところへ行こう」

「あぁ」


 ロンドと俺が部屋を後にしようとした時、クロエが


「私もついて行く」

「それはダメだ」

「なんでよ!」


 クロエが机を叩きながら言った。


「現状、ロンドは国王様の護衛としてここにいる。そのロンドがここから居なくなる以上、クロエには国王様の護衛をしてもらいたい」


 建前上はこう言ったが、本当はクロエも攫われてしまったら俺が俺ではいられなくなってしまう気がした。


「でも」

「絶対助けてくるから」

「......。わかったわ。絶対よ!」

「あぁ」


 そしてロンドと共に王宮を後にした。



「なんでこんな雑魚と一緒に」

「......」


 俺は睨みつけながらも黙る。結局、現状リーフさんが居る場所を探すのはロンドだよりだ。


「まあいいさ。ここできちんと上下関係を見せてやるよ」

「俺はルーナさえ助かれば何でもいい」


 そう、ロンドと上下関係が決まろうと知ったことじゃない。今はルーナを助けるのが最優先なのだから。


「そう言えば、リーフさんには何て言われたんだ?」

「お前とタイマンを張ればいいと言われた。それ以外にもいくつか」

「......。そうか」


 なんで、そんなことをしようと思ったのだか......。お前は勇者だろ。俺なんて眼中にもないはずなのに。


 ロンドに連れて行かれて三十分程経ち、ランドリアから少し離れた一軒家にたどり着く。


(なんでここにはモンスターが居ないんだ?)


 スタンピードが起きているのにモンスターがいないはずがない。それなのにここにはモンスターの気配すら感じなかった。するとロンドが


「ここだ」

「わかった」


 俺たちが中へ入るが、もの一つない状態であった。


「本当にここか?」

「あぁ」


 俺は、あたりに何かないか探し始めると、入り口から一番離れた床から少し空気が流れている場所を見つける。


「お前、何をやっているんだ?」

「ここに何かある」


 魔剣グラムを使って、床を斬り裂くと、隠し階段があった。


「え?」

「行こう」


 そして徐々に階段を下っていくと、そこには黒い渦とルーナが眠っているのを発見した。


「ルーナ!」


 俺はすぐさま走って行こうとしたら、黒い渦からリーフさんがやってくる。


「あぁ、ロンドか」

「リーフさん?」


 すると俺とロンドを見ながら笑い始めた。


「上出来でしたよ、ロンド。あなたのおかげでこんな簡単にエルフの第一王女をつかまえることが出来ましたから」


 それを聞いて俺たちは固まった。


(やっぱり......)

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