第9話 主犯格


 刺客の攻撃をかわしつつ、魔剣グラムに風魔法を付与させて反撃する。グラムの衝撃波で刺客が壁にぶつかった時、クロエがとどめをさす。


 すると、残りの三人が左右に分かれて、一斉にルーナに向かって攻撃を始める。一人目の攻撃は守護プロテクトで守られたが、二人目の攻撃で守護プロテクトが壊れてしまった。そして、三人目がルーナの腹部に打撃を与えて、気を失ってしまう。


「ルーナ!」


 すると、一人の刺客がこの場から去ろうとしていた。


(そんなことさせない......)


 俺は高速を使い、ルーナを抱えている刺客の一人を斬り殺す。そして、ルーナを抱きかかえようとした時、あたり一面に衝撃波が走り、目の前にいたルーナが消え去った。


(え?)


「クロエ! ルーナは?」

「わからない」


(クソ)


 今のは何だったんだ? 誰があんなことを......。少し考えていると、クロエに肩を叩かれる。


「今は目の前の敵でしょ!」

「あ、あぁ」


 残り二人の刺客に対して、グラムに風と水を付与して、あたり一面を切り裂く。すると、水の衝撃波が走り、壁などが切り裂かれていって、一人の刺客を倒しきる。


 そして、クロエが生き残っている刺客に対して斬りかかったが、その攻撃を避けられて、反撃される。


(まずい......)


 このままだと、ルーナだけでなく、クロエも......。すると体が反射的に動き、クロエの目の前に立っていた。


(え?)


 なんでこんなに早く動けているんだ? まあそんなことはどうでもいい。今はこいつを殺すことだ。そう思い、刺客の首を斬り落とす。


 戦闘が終わり、俺は膝を落とす。


「ルーナ......」


 もっとうまく俺が戦えていれば。ルーナ一人助けられないで、何が英雄だ! 拳を地面に何度もたたきつける。その時、クロエが両手を俺の顔に当ててきた。


「今は後悔している暇ないでしょ! 今考えるのはルーナをどうやって助けるかでしょ!」

「そ、そうだな」


 クロエの言う通り、今後悔している時間なんてない。この時間もルーナは攫われて、どこかへ行っているんだ。


「不幸中の幸い、ルーナが攫われたってことは、それなりに殺すまで時間があると思う」

「え?」

「普通、殺すならこの場でやるでしょ? でもそれをこいつらはしなかった。それは、ルーナに何かしら使いようがあって攫ったってことだから」

「......。あぁ」


 それが事実なら、まだルーナが死んでいる可能性は低い。それに加えて、現在スタンピードが起きているため、ルーナを抱えて遠い場所に行くことは難しいだろう。


「まずはこいつらから情報を集めましょう」

「そうだな」


 俺とクロエは、刺客の死体を観察して何か情報が無いか集め始める。まず、洋服の中に何か入っていないか、その次は体に何か手掛かりがあるかを調べる。


(クソ......。ない)


 服の中には何も入っておらず、体にも刺青など一つも手掛かりとなるのが発見できなかった。だがその時、クロエが俺の肩を叩く。


「ねぇ......」


 ベロを見てみると、そこには見知った刺青が彫られていた。


(え? これって......)


「メイソンは何かわかる?」

「あ、あぁ。これは......」


 いや、でもあり得るのか? こんな身近に要るなんて......。あの人は、いつも勇者に......。


 その時、ふと思い出す。ルーナと会った当初、勇者の周りに魔族と絡みがある人が居るかもしれないと言われたこと。そして、魔族からはルッツ様は身近にいると......。


「これは何なの?」

「勇者の師匠が部下につけている刺青だ」

「え? それって」

「あぁ。多分主犯は勇者の師匠であるリーフさんだ」


 そう言うと、クロエは驚いた顔をしていた。


(俺だって今も信じられないよ)


 あの人が主犯だなんて......。でもルーナが最初に言っていたこと、そして魔族が言っていたことがリーフさんならいろいろと辻褄が合う。


(じゃあロンドも?)


 そう考えると、ロンドに対して苛立ちを感じた。


「今から、ロンドのところへ行こう」

「うん」


 そして俺たちは王宮に向かい、ロンドたちと対面した。

 

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