第2話 ランドリアへ


 王室に戻ってから数日間が経ち、とうとうエルフの国を去る日がやってきた。すると、国王が俺やクロエに頭を下げてお礼を言ってくる。


「今回は本当にありがとう」

「いいですって」


 そう、ルーナの故郷を救うなんて当たり前のことをしただけだ。だからお礼を言われる筋合いはない。


「ささやかなものだが、もらってくれ」


 そう言って俺たちに転移水晶を渡してくれた。


「ありがとうございます。後これ......」


 俺はそう言って、魔剣グラムを国王に渡そうとした。だが、国王はグラムを手で突き返してきながら言った。 


「いいんだ。後、メイソンくん。魔剣グラムは君に上げるから頑張りなさい」

「え、いいんですか?」

「あぁ、私が持っているより、使いこなせる人が持っている方がいいからな」

「あ、ありがとうございます!」


 魔族と戦った時、持ってきていた武器が壊れてしまったため、現状持っているのが魔剣グラムしかなかった。本当はエルフの国を出る前に返そうと思っていたのだが、こう言ってくれるならありがたくもらいたいと思う。


「ルーナ、メイソンくんとクロエさんに迷惑をかけないように」

「うん」


 その時、王妃様がルーナの場所まで言って、耳元で囁いた。すると、ルーナの顔がいきなり真っ赤になり、俺の事を見て来た。


「?? どうした?」

「な、なんでもない......」

「あ、そっか?」


 王妃様に何を言われたかわからないが、なんでもないと言っているのに問いただすのもよくない。


「後、クロエさん」

「はい、何でしょう?」

「今度、狐獣国の国王とお話しますので、よろしくお願いしますね」

「え? あ、はい」


(今の言葉......)


 狐獣国とエルフの国が話すってことは条約でも結ぶのか? だとしたら、より一層国が安全になる。そうなれば、もしモンスターたちに襲われたとしても助けを呼べたりするし。


(いいことなんだよな)


「では、メイソンくん。ルーナをよろしく頼む」

「わ、わかりました」


 これはどっちの意味で言っているんだ? あれだよな? ルーナを守ってくれってことだよな? この前言われた結婚のことじゃないよね?


「じゃあね! パパ、ママ!」

「あぁ。行ってらっしゃい」

「いつでも帰ってきていいんだからね」

「うん!」


 そして、俺たちは転移水晶を使って、エルフの国を後にした。



 ランドリアに着いて、真っ先にギルドマスターであるガイルさんに報告しに向かう。俺たちがギルドに入り、受付嬢にガイルさんを呼んでもらう。すると勢いよくこちらへ駆け寄ってくれて、応接室に案内される。ガイルさんが椅子に座った時、俺たちは頭を下げてお礼を言った。


「「「ありがとうございました」」」

「ちょっと、やめろよ」


 すこし恥ずかしそうに頭を掻きながらそっぽを向いた。


「でも、本当に無事でよかった」

「はい。ガイルさんには感謝しても仕切れません」


 そう、ガイルさんが転移水晶を渡してくれなかったら、俺たちが着いている時にはエルフの国は壊滅していたかもしれない。だからガイルさんには感謝しても仕切れない。


「いいんだ。それよりも本当によかった。噂は聞いているぞ」

「はい! ギルドマスターのおかげで同胞を救うことが出来ました。本当にありがとうございます」

「それはよかった」


 すると、ガイルさんは一枚の紙を机の上に置いた。


「メイソンの噂は聞いている。狐獣族の人や多分エルフにも英雄って呼ばれているよな?」

「......。はい」


 少し恥ずかしくなりながらも頷く。


(まだ、英雄になったわけじゃないけど)


 でも、救いたい人を救うためにこの力を使う。その結果、英雄になるのは悪くないのかもしれない。


 すると、ガイルさんは紙を表面にして差し出して来る。


「メイソンたちは、今日をもってCランク冒険者にする」

「え? いいのですか?」

「あぁ。本当なら試験などを受けてもらわなくちゃいけないが、狐獣国とエルフの国の件を踏まえたうえでの判断だ。お前たちは実力で勝ち取ったんだから堂々としていろよ」


 ルーナとクロエの顔を見て、お互い笑いながら


「「「はい!」」」

「では、今日からまたよろしくな」

「はい。よろしくお願いします」


 そして、俺たちは屋敷に戻った。すると、ワーズさんが俺たちのことを抱きしめながら


「おかえりなさい。本当に無事でよかったです」

「はい。ワーズもありがとうございます」


 それに続くように他のエルフの方々も顔に手を当てて泣いていた。そこで、ワーズさんが言う。


「明日ぐらい、三人でどこかへ行ってみてはどうですか?」


 その言葉を聞いたルーナは満面の笑みになりながら上目遣いで俺をみて


「いい?」

「あぁ、一緒にどこかへ行こうか」

「や、やった~」


 すると、ルーナはクロエに抱き着いた。クロエもまんざらでもないように抱き返して喜ぶ。


「明日は楽しみだね」

「うん!」

「そうだな」


 そして、俺たちはワーズさんたちと夕食を取って、自室に戻った。そこから数分もかからず部屋にルーナが入ってくる。


「メイソン」

「ん?」


 寝間着姿のルーナにドキッとしながら、隣り合わせでベットの上に座った。



 この時はまだ、俺たちが勇者ロンドに狙われていることをまだ知らなかった。

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