第3話 感謝の気持ち
ベットの上で俺の肩に頭を委ねてきた。
(ちょ、ちょっと!?)
まずいって......。男女がベットの上でこんな状態って。俺も男だ。流石にルーナのことを意識してしまう。すると、ルーナはキョトンとした顔で
「メイソン、本当にありがとね」
「そんなこと言ったら、俺はルーナに感謝しても仕切れないよ」
あの時、ルーナに声をかけてもらわなかったら俺は立ち直れなくて、路頭に迷っていたかもしれない。だから、ルーナの存在がどれだけ俺の救いになったことか。
「そう? ならよかった」
「あぁ」
「でも、今回の件は本当にありがと」
ルーナは俺の正面に立って頭を下げてきた。
「ちょっと、やめろよ」
「でも」
「俺たちは仲間じゃないか。対等な立場なんだ。お礼を言わなくていいよ」
俺たちは仲間なんだ。誰かが助けてほしいと言ったら、助けるのは当たり前だし、お礼を言ってほしいから助けるわけじゃない。それにお礼を言いたいのは俺の方だ。
「そっか。じゃあさ、もう一つだけお願いをしてもいい?」
「あぁ」
すると、真剣な顔で俺に言った。
「ルッツを助けた後、私を守って」
「ルーナを守る?」
「うん。私はメイソンと一緒に冒険をしたい。メイソンが英雄になるのを見守りたい。だから私を守ってほしい」
(俺が英雄になるところか)
まだ実感はわかないがあの時、三人で救える人を救うって言うのを決めた。俺もその時、英雄になると決めた。だから俺もルーナやクロエに見守っていてほしい。
「じゃあさ、俺も一つお願いをしていいか?」
「うん」
「俺がもし、道を踏み外そうとした時、ルーナが道を切り開いてほしい」
「え? それってどう言う意味?」
ルーナは首を傾げながら尋ねてくる。
俺が英雄になれる素質があるのはわかった。だが、国王や魔族の言った通り、俺が道を踏み外したら世界がどうなるのかは目に見えている。
「俺が魔族と手を組むってこと」
「......。大丈夫だよ。メイソンはそうはならない」
「なんでそう言いきれる?」
「だって、メイソンは優しいもん!」
満面の笑みで俺に言ってきた。
(あぁ、そうか)
どれほど俺がルーナに助けられてきたのかが、ここでやっと実感した。今までロンドたちには罵倒されて、誰にも頼りにされていなかった。でも、ルーナとの出会いで人生が変わった。
そして、今目の前にいるルーナは俺の事を心の底から信用してくれている。だったら、その気持ちに応えたい。
「そうだな」
「うん! それで、メイソンは私を守ってくれる?」
「あぁ。守るさ。俺の命にかけても」
そう、俺の命にかけてもルーナのことは守る。るーなだけじゃない。クロエだってそうだ。俺のことを信用してくれている人すべてを助けたい。
「命って大げさだよ」
「ははは。でもそれぐらいの気持ちってことだよ」
「そっか! だったらこれからも宜しくね」
「あぁ」
ルーナはそっとベットから立ち上がり、部屋から出て行った。
(本当にありがとな)
ルーナやクロエが居なければ俺は道を踏み外していたかもしれない。それこそ魔族に誘われたときがそうだ。だからこそ、俺が俺でいられることを示してくれたこの二人には感謝しても仕切れなかった。
(今度は俺が二人を守る番だ)
★
翌朝になり、ルーナとクロエと一緒にランドリアでショッピングをした。ルーナとクロエは、どの服が似合うのかなど聞いてきて少し疲れたが、二人の笑顔を見ているだけで心が安らぐ。
(こんな生活が続けばいいけどな)
だけど、それにはまずルッツ様を救うこと。これが最優先である。ルッツ様を救えない限り、俺たちの平穏が来ない。結局今の俺たちは、ルッツ様のことを後回しにしているだけ。
(早く助けなくちゃ)
そう思いながら三人で休日を過ごして、いつも通りの冒険者生活に戻った。
俺たちがギルドへ向かう途中、ルーナが
「昨日は楽しかったね」
「ね、また一緒に遊びたいね!」
「あぁ。また一区切りついたら遊ぼうな」
「「うん!!」」
そして、クエストボードを見てどのクエストを受けるか決める。
(どれが一番いいだろうか?)
魔族と戦った時、どれだけ俺たちが実力不足なのかを体感した。だからこそ、三人で成長できるクエストを探した。すると、クロエが一枚の紙を指さした。
「これなんてどう?」
「ミノタウロスか......」
「うん。今の私たちなら倒せるんじゃない?」
ミノタウロスとは、Bランククエストであるが、今の俺たちなら受けることが出きるクエストである。それにクロエが言う通り、Cランクだからって、同ランクのクエストを受けていたら成長できるものもできない。
「いいな」
「じゃあ決まりね!」
「うん!」
俺はミノタウロス討伐の紙を取って受付嬢に渡そうとした時、後ろから話しかけられる。
「メイソン、お前どのクエストを受けるんだ?」
そこには、勇者であるロンドが居た。
(なんでここに居るんだよ)
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