第19話 俺たちの道


 ルーナに連れられて、三人でエルフの街を歩き始めた。


(本当に綺麗だな)


 つい先日、モンスターたちが襲ってくるかもしれないと感じさせないほど、街並みが綺麗であった。だが、エルフの人たちは少し暗い表情をしていた。そして、俺たちに気付いたエルフの人たちがこちらへ寄ってきた。


「ルーナ様! そしてメイソン様、クロエ様。この度は私たちを救っていただき、本当にありがとうございました」

「え?」


 思いもよらない言葉をかけられて驚いた。だが、先ほどまで見せていた表情とは一変して、エルフの人たちは笑顔になっていた。


「ルーナ様たちが居なかったら私たちは死んでいたかもしれません。なので、本当にありがとうございます」

「......」


 エルフの人たちは、すでに前を向いているようであった。


(本当にすごいな)


 多分ここに居る人たちは身内が死んでいるとかではないんだろう。でも、誰かしら知人が死んでしまったのは間違いない。


 もし俺がその立場であって、ルーナやクロエが死んでしまったら立ち直ることはできるのだろうか。いや、俺はこんなに早く立ち直ることはできない。だから、俺はエルフの人たちをすごいと思ったし、尊敬する。


 その時、一人の子供が俺の足元に抱き着いて言う。


「もうどこかへ行っちゃうの?」

「そうだね......。もう少しでここを立つと思うよ」


 膝を落として、子供の目線で言うと、子どもが泣き始めてしまった。


「もしまた今回みたいになったら嫌だよ、だから国を守ってよ」

「......」


 すると、お母さんが子供を抱きしめながら


「駄々をこねちゃダメだよ。メイソン様たちにもやることがあるのだから」

「......」


(やること......)


 そこで、ルーナが子供に言った。

 

「大丈夫だよ。私たちが国なんか襲われないように戦ってくるから!」


子供は泣き止み、鼻をすすりながら


「......。本当に?」

「うん! だから、泣かないで?」

「だったら、私も大人になったらルーナ様やお兄ちゃんみたいに冒険者になる!」

「そっか。じゃあ今から頑張らなくちゃだね」

「頑張る!」


 俺は、子供の頭をなでてからこの場を後にした。


 ルーナに連れられながら歩いている時、エルフの子供の言葉が頭から離れなかった。そしてその言葉から、俺が何をしなければいけないのかを考え始めていた。


(俺がしなければいけないこと......)


 最初は、ルーナやクロエを守れるだけの力があればいいと思っていた。だが、あの子供や狐獣人の子供、そしてエルフの人たちや狐獣人の人たちを守りたい。


(俺が今後向かって行くのは目標は......)


 今でもルーナの弟を守ることは目標である。でもそれは、俺が守りたい人であるからだ。だが、あの時ルーナと決めたもう一つの目標。


(勇者を見返すこと)


 それは、本当に俺がやらなければいけないことなのか? そう思い始めた。今でもロンドのことはムカつくさ。合えば罵倒してくるし、ルーナや多分クロエにさえ嫌味を言ってくる。


 でも、俺がやらなければいけないことではない。だったら、勇者を見返さなくてもいいんじゃないかと思い始めていた。



 ルーナが立ち止まると、そこはエルフの国が一望できるところであった。


「きれい......」

「そうだな」


 クロエと俺がエルフの国を見ていると、ルーナが


「今後のことだけど、ルッツを助けたい」

「あぁ。わかっている」


 もう、ルッツ様を助けると決めてから、結構時間が経っている。だからこそ、早めに助けたい。


「ありがと。それともう一つ」

「ん?」

「お父様が言っていたように、私たちで世界を救おう」

「え?」


 俺たちで世界を救う? でもそれって勇者じゃなくちゃできなくないか?


「あの勇者が魔王と戦っている時も、モンスターは人を襲うと思う。だから、私たちは人を助けるという意味で世界を救おうよ」

「いいわね」

「あぁ」


 さっきから考えていたこと。それはエルフの人や狐獣人の人を助けることだ。それは、きっとルーナが言ったことと一緒だとと思う。だからこそ、俺はこの力を使って、たくさんの人たちを救いたい。


「じゃあ決まりね」


 こうして今後の方針が決まった時、ルーナとクロエは俺と距離を取って話し始めた。


(なんなんだ?)


 仲間外れって酷くないかと思ってたけど、二人の笑顔を見た瞬間、そんなことどうでもいいと思った。


 そして、二人は俺の元へ戻ってきて言った。


「メイソン! 覚悟していてね」

「ええ。絶対に落として見せるから!」

「あ、うん?」


 なんのことを言ったのかわからないまま、俺たちは王宮に戻った。


 

 なろうで先行投稿していますので、もし早く読みたい読者様がいましたら、なろうだと早めに読めます。


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