第18話 エルフの国王の一言
(俺が英雄?)
だが、この文面からして略奪が使える人は英雄って書いてある。でも......。俺が悩んでいると、国王が言ってくる。
「メイソンくん。ルーナから略奪のスキルを使えるって聞いている。君はもしかして英雄なのか?」
「い、いや......」
俺ですら英雄なのかわからない。それに、この本を読んで初めて略奪のスキルが英雄が所有しているスキルだってことを知った。
また、英雄らしいことを俺は今までしてきていたのか? ふとそう思った。だからここで瞬時に英雄ですなんて答えられなかった。すると、国王が本を見ながら話し始めた。
「メイソンくんも勇者とか魔王って言うのは知っているよね?」
「はい」
そりゃあ、一応は勇者パーティに居たんだから知っているさ。それにもし、勇者パーティにいなかったとしても、勇者と魔王ぐらい知っているに決まっている。
「私も前国王に説明されたのだが、勇者は世界を守る力を持っている。そして、魔王とは世界征服をするために存在している」
「......」
「そして、英雄とは人々のために個人で自由に力を使える存在」
「......。個人で自由に力を使える存在?」
意味が分からなかった。勇者が世界から守る力を持っているというのはわかる。そして魔王も同様に、世界征服するために存在している。だからこそ勇者と魔王が拮抗している。そこまでは理解した。だが、英雄は個人で自由に力を使える存在って言われても......。
「簡単に言えば、英雄は自分で守りたいと思った人に対して使う力であるってことだ」
「守りたい人を守る力......」
言われてみれば、俺もルーナやクロエを守りたいと思ってこの力を使っていた。そして、それよりも前だったら勇者たちを守るために使っていた。
「だからな、ハッキリ言う。メイソンくんの力は正にもなるし、悪にもなるってことだ。君は」
(そう言うことか)
そこで俺はやっと魔人から言われたことが分かった。あの時、魔人は俺と魔族が共存できると言っていた。
(それはこういう意味であったのか)
「だからこそ、メイソンくんは自分の力をきちんと使ってほしい」
「はい」
「もし君が魔族に力を貸してしまったら、人族やエルフを含むすべての種族が、魔族には勝てない。だからこそ、本当に守りたいと思った人を守ってほしい」
(俺が守りたい人は......)
すぐ頭に思い浮かんだのはルーナとクロエであった。そこでちゃんとした意味で、自分が守りたいと思った人を理解した。
「わ、分かりました」
「あぁ。それでだが、メイソンくんには一つ頼みたいことがある」
「なんでしょう?」
「ルーナと結婚しないか?」
その言葉を聞いて、ここにいる全員が驚きを隠しきれなかった。それは、俺やルーナも同様であり、お互いが見つめ合ってしまった。すると、ルーナは顔を赤くしながらそっぽを向いた。
「お父様......。それは本気で言っていますか?」
「あぁ。本当はルーナが気に入ったエルフなら誰でもよかったが、メイソンくんが英雄だとわかったのなら、ルーナと結婚してもいいと思う」
「ですが、俺は平民であり、ルーナは第一王女です。身分的にも......」
そう、俺が英雄であろうと、ルーナが王女である以上、身分が違いすぎる。それなのに結婚なんてできるはずがないと思った。だが、ルーナは不安そうに俺の方を見ていた。そして国王が
「ルーナとそんなに結婚したくないの?」
「いや、そう言う意味じゃなくて......」
「だったらいいじゃないか」
「......」
俺は不意にクロエの方を向いてしまう。すると、クロエは暗い顔をしながら俯いていた。そして、国王に問われる。
「メイソンくん、どうなんだ?」
「......。今すぐには決めきれません」
流石に今言われても、わからなかった。別にルーナが嫌ってわけじゃない。何なら女性としても好きだと思う。だけど、さっきルーナのことを考えた時、クロエのことが一瞬頭によぎった。そんな状況で決めきれるわけがなかった。
「そうか。でも嫌ではないんだな?」
「はい」
「では、一旦保留とするか」
国王がそう言うと、ユミルさんがルーナのところへ近づき、耳元で何かを言った。するとルーナの顔が真っ赤になった。
「お母さん!」
「頑張りなさい」
「.......(うん)」
「では、ルーナと一緒にこの国でも見てくると良い。不幸中の幸い、この国は魔族には襲われていないから」
その問いに対して、ルーナは頷いて、俺とクロエの手を掴んだ。
「行こ?」
「あ、うん」
「え?」
そして、王宮を後にした。
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