第11話 エルフの国へ

(どうかしたのか?)


 ギルドマスターから直々に話しかけられるなんてなかったので、驚きながらそちらを向いた。すると、ルーナがギルドマスターに言った。


「なんでしょうか?」

「今からエルフの国へ向かうんですよね?」

「え? なんでそれを......」


 ルーナは驚いた表情でギルドマスターを見ていた。ルーナの言う通り、なんで俺たちがエルフの国へ向かうことを知っているんだ? 俺たちがエルフの国へ向かうことを決めたのは昨日だ。それなのになんで......。


「ルーナ様たちがこの街に着いたってことを昨日聞いてだな、もしかしてと思ったんだ」

「あ~」


(噂が流れているとミロが言っていたのだから、どこかしらから聞いているかもと思われてもおかしくない)


「それで、エルフの国へ向かうんだろ?」

「はい」

「なら、これを使え」


 そう言われて、ギルドマスターから一人一つ、青色の水晶が渡された。すると、ルーナとクロエは驚いた顔で水晶を見ていた。


(??)


 そこで、ギルドマスターが言った。


「二人はわかっているようだが、これは転移水晶だ」

「転移水晶?」

「あぁ。一回しか使えないが、転移したいところに飛ぶことが出来る」

「え? そんなものもらっていいのですか?」


 話を聞く限り、転移できるってことは、ものすごく高価なものだと思う。それに加えて、水嶼は一回しか使用できない。そんなものをなんで。


「まあ、メイソンやルーナ様には結構迷惑をかけたからな」


 俺とルーナは首を傾げながらギルドマスターが話し始めるのを待った。


「結果論になってしまうが、低級冒険者が受けたクエストにリッチが居たなんてあってはならないことだ」

「でもそんなこと言ったら」


 結局受けるのを決めたのは俺たちだし、リッチなど強敵が出てきたのだってギルドの責任じゃない。だが、ギルドマスターはそうは思っていないらしく、話の続きを言い始めた。


「それに加えてレッドウルフだってCランクよりのⅮランククエストを提示してしまったのは俺のミスだ。だからそれのお礼だよ」

「ほ、本当にいいのですか?」

「あぁ。受け取ってくれ」

「ありがとうございます」


 俺たちはギルドマスターにお礼を言って、水晶を使おうとした時


「助けて来いよ」

「はい」


 そして俺たちは水晶を使うと、あたり一面が真っ青な光が出て、エルフの国の近くにある森林に転移した。



 そっと目を開けると、今まで見たことも無い森林であった。だが、なぜか空気が重く感じたので、ルーナの方を見ると、険しい顔をして立っていた。そしてルーナは近くの木を触りながら言った。


「森林が......」

「え?」

「誰かに荒らされる」

「......」


 言われてみれば、少しだがいたるところに切り傷があった。するとルーナは当たり一面を歩き始めて、一本の木を指さした。


「あ......」

「切り込まれている......」


 クロエが言う通りルーナが指さした木には、いたるところに切り傷があった。俺たちはその木の方向に歩いて行くと徐々に荒らされた痕跡が残っていた。


「ひどい......」


 ルーナが悲しそうな表情をしながら言った。流石に俺もそう思う。これは酷い。


 辺りに何か情報があるかもしれないと思い、徐々に痕跡残っている方向へ歩いて行くと武器と武器がぶつかる音がした。その時、悲鳴が聞こえた。


「たすけて」


 俺たちは女性が大声で叫んでいるのを聞いて、俺たちは声の聞こえる方向に歩いて行った。するとそこは、町がモンスターに襲われているところであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る