第4話 狐獣人の国王


 ロンローリ様が首を傾げながら、俺たちのことを見てきながら話し始めた。


「二人は何か困っていることはあるかい?」

「えっと......。いろいろと困っています」

「言ってみなさい。できる限り力を貸したいと思っている」


 ロンローリ様がそう言うと、ルーナがお辞儀をしながら答えた。


「一つ目は、この国が何の国なのか。そして、二つ目はレッドウルフを探していることです」


 すると、ここにいる人たち全員が驚いた表情をしていた。


「君たちもレッドウルフを......」

「え? 何かまずいですか?」


 流石にロンローリ様たちがレッドウルフを狙っているなら、俺たちは身を引こうと思った。


「いや、私たちもレッドウルフを倒そうと思ってだね」

「では、私たちは身を引きますよ」


 俺がそう言うと、ルーナは驚いた表情でこちらを見て来た。


(でも、さすがにね......)


 今ここでこの人たちと敵対視をしたいわけじゃない。なら、身を引くだけで交友関係を築けるならそっちの方がいいに決まっている。


 だが、ロンローリ様は首を横に振った。


「私たちがレッドウルフを倒したいのは、私の娘を助けたいからだ」

「え?」


 娘を助けるって......。もしかして。


「もっと簡潔に言えば、娘であるクロエが森林でウルフに襲われてしまい、命からがら隠れていると聞いている。だから娘を助けるためにレッドウルフを倒したいんだ」

「そ、そう言うことですか。では私たちも力を貸しますよ」

「い、いいのか? 息子も助けてもらったのに」

「困っていたら、お互い様じゃないですか」


 誰かが困っていたら助けるのは当たり前だ。まあこれを教わったのは勇者パーティなんだけどな......。


 すると、ロンローリ様たちは頭を下げてお礼を言ってきた。


「ありがとう、本当にありがとう」

「まだ助けたわけじゃないので、お礼を言うのは早いですよ」


 そう、まだクロエ様を助けたわけじゃない。ならお礼を言われる筋合いはないし、安心する場面でもない。


「クレッタ、レッドウルフの居場所は知っているかい?」

「いえ、そう言うのはあなたの方が知っているんじゃないかしら?」

「まあ、そうだよな......」


 そこで、ふと霧が起こる前のことを思い出して言った。


「ここに来る前にウルフが大勢いる場所を見つけましたので、もしかしたらそこにいるかもしれないです」


ロンローリ様は立ち上がりながら大声で


「本当か!」

「はい」

「霧は、後一時間もしたら無くなるからすぐさま行ってほしい。こちらも兵も出す」


 後一時間もしたら霧が切れるのか......。


「わかりました」

「もう一つの質問は、戻ってきたら説明するよ」

「ありがとうございます」



 王室を出て、三十分ほど経ったところで、ロンローリ様が集めた兵の元へ俺たちは向かって挨拶をする。


「メイソンと言います。本日はよろしくお願いいたします」

「ルーナです。よろしくお願いします」


 すると、一人の狐獣人が俺に言った。


「この隊の隊長であるジレです。お二人ともよろしくお願いいたします」


 そして、作戦などを軽く練って俺たちは狐獣国を後にして、レッドウルフが居た場所へ向かった。


(確かここら辺だったはず......)


 狐獣国から三十分ほど歩いたところでウルフが大勢いる場所を発見した。俺はジレさんの元へ行き、小声で言う。


「ここです」

「わかりました。では作戦通り、私たちがウルフの討伐をしますので、レッドウルフ及びお嬢様はお願いいたします」

「はい」


 すると、狐獣人の人たちが、一斉にウルフたちに攻撃を仕掛けた。


「ルーナ、俺たちはこの隙に探そう」

「うん」


 狐獣人が倒しきれなかったウルフを倒しながら、ルーナと共に奥へ進んでいくと、そこにはまがまがしい赤色をしたウルフと、通常のウルフが数体立ってこちらを見ていた。


「あれが、レッドウルフ......」


 俺がそうつぶやいた時、レッドウルフが俺たちに向かって、炎玉かえんだんを放ってきた。

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