第5話 レッドウルフ戦


 俺は、水玉ウォーターボールを放つが、すべてをかき消すことが出来ず、あたりが少し燃え盛ってしまった。それに乗じて、レッドウルフは俺の目の前に来ていた。


(!?)


 一歩下がろうとしたが、レッドウルフの行動の方が早くて腹部に鈍痛が走る。


「ッ......」


 本当なら、レッドウルフに略奪をしてすぐにでも炎玉かえんだんを奪いたいところだが、そんな隙が無い。勇者パーティにいた時は、荷物持ちと後方支援をしていたから余裕があったが、今は前衛であるからそこまで余裕もない。


 俺はトレントから盗んだ自動回復オートヒールを使い、少しずつだが痛みが減っていくのが分かるが、それ以上にレッドウルフやウルフたちの攻撃が早くて、対応が遅れる。


 その時、ルーナが俺に守護プロテクト全回復パーフェクトヒールを使ってくれて、ウルフの攻撃を数回防いでくれて、なおかつ鈍痛が無くなっていった。


(これなら)


 まずウルフの俊足を奪い、一匹を斬り倒した。そして、もう一体のウルフも続くように火玉ファイアーボールを放ち、倒す。


 そして、ウルフをあらかた片づけた時、レッドウルフは口から火の息を放ち、あたり一面を焼き尽くし始めた。


(クソ......)



 煙が多すぎて何も見えない。それを狙っていたかのように、レッドウルフは俺の目の前まで来て、首を食いちぎろうとしてくる。


「ア......」


 死を覚悟した。そう思った瞬間、誰かしらに体を抱えられて場所を移動させられる。


(え?)


 煙の中、飛んでもない速さで俺を抱えていて、ルーナの元で降ろされる。俺は、抱えられていた人を見ると、ロンローリさんの奥さんにそっくりな女性が立っていた。そして、その女性に話しかけられる。


「大丈夫ですか?」

「ありがとうございます。えっと......「今は目の前のレッドウルフに集中しましょう」」

「はい」


 続きを話そうとしたところで女性に遮られてしまった。


「私がレッドウルフの気を引きますので、あなた方でレッドウルフのとどめを刺してえもらってもいいですか?」

「「わかりました」」


 ルーナと頷きながら答えた瞬間、レッドウルフは俺たちに向かって走って来ていた。それをこの女性は避けつつ剣で斬りかかりつつ応戦していた。



 レッドウルフが炎玉かえんだんを放とうとした時、ルーナが女性に守護プロテクトを使い、守りつつ援護していた。それに俺も続くように略奪を使用する。


炎玉かえんだん

・火の息

・俊足

火玉ファイアーボール


 すべてのスキルを盗んだ瞬間、レッドウルフは炎玉かえんだんが放てなくて、戸惑いを顕わにしていた。それを見逃さず、女性はレッドウルフの片腕を斬り落とした。


「キャイン」


 そして、レッドウルフが後退しようとしたところを俺と女性は逃がさず、追いかけようとした瞬間、あたり一面から数十体ものウルフが現れた。


 そして、一斉に俺たちに攻撃を仕掛けてくる。それに対して、ルーナは守護プロテクトを放ってくれたが、ウルフの数が多すぎてすぐに守護プロテクトがはがれてしまった。


 俺と女性でウルフを一体ずつ倒して行くが、数が多すぎて徐々にレッドウルフが見えなくなっていった。そして数分経ち、完璧にレッドウルフが見えなくなってしまった。


(クソ)


 もうレッドウルフのことはあきらめようと思った時、狐獣人の騎士の方々がこちらへ来てくれて、ウルフをことごとく倒して行ってくれた。


「お嬢様、メイソン様、レッドウルフを追ってください!」

「わかったわ」

「ありがとうございます」


 ルーナはここで待ってもらい、俺と女性でレッドウルフを追いかけた。数分ほど歩いたところで女性が言った。


「ここに血があるわね」

「はい」


 レッドウルフが歩いた血痕が残っており、それを辿って俺たちは走り始める。そしてそこから少し経ったところに、レッドウルフを守るように20体ほどのウルフが生息していた。


 流石に女性も真っ青になった顔になりながら、戦闘態勢に入っていた。


(流石に俺たちじゃこの数は......)


 その時、ふと思った。


(あの魔法を使ってみるか)


 俺は、あたりにあるウルフの死体に向かって死者蘇生を使った。


 

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