第9話 勇者との対面。そして俺たちの目標

 ルーナは驚きながらギルドマスターへ言った。


「それって本当なのですか?」

「はい。ですので、メイソンとルーナ様は二人ともDランク冒険者ということになりますね」

「あ、ありがとうございます」


 ルーナがお礼を言ったところで、ふと疑問に思う点があったので聞く。


「あ、一つ質問をしてもいいですか?」

「なんだ?」

「なんであんな場所に杖があったのですか?」


 すると、ギルドマスターは言うか迷っている表情をしていたが、口を開いた。


「その杖、ランドリアから盗まれたものなんだ。だからだと思う」

「......」


 ......。さっき五年ほど前に無くなった秘宝ってことは、つい最近盗まれたものだということ。それをできる人って......。


「まあそう言うことだから、今後はきちんと管理するから大丈夫だと思うぞ」

「はい」


 話が終わり、ギルドマスターは応接室を後にした。その時、ルーナが話しかけてきた。


「ねぇ、あの杖が秘宝であったってことは、メイソンが居なかったら危なかったってことだよね?」

「.......」


 秘宝だってことを聞かされて、そこまで考えていなかったけど、そう言わればそうかもしれない。


 俺が略奪をする前にリッチは死者蘇生を使われた。それは、ルーナが墓地をある程度除霊してくれていたから何とかなったが、もう一つ盗んだドレイン。あれを使われていたらと考えたらゾッとした。


「本当にありがとね」

「こちらこそあの時ルーナが墓地を除霊してくれていなかったら危なかったので、お互い様ですよ」

「また敬語使っているよ?」

「あ、ごめん」

 

(敬語を使わないって難しいな......)


 その後、俺たちも応接室を出て、受付嬢に挨拶してからギルドを後にしようとした時、目の前からロンドとひげ面のおじさんが入ってきた。


「なんでお前がここにいるんだよ」

「......。冒険者だからだよ」

「は! お前ごときが冒険者とか」


 ロンドはそう言いながら大声で笑い始めた。その時、ルーナが言った。


「メイソンも私もすでにDランク冒険者です。れっきとした冒険者ですよ? 笑われる筋合いはないと思いますが?」

「お前誰だよ。まあいい。たかがDランク冒険者がしゃしゃんじゃねーよ。俺は勇者なんだよ。魔王を倒すな」


 すると、リーナはものすごく低い声を出した。


「それがなにか偉いのですか? たかが勇者であっても、魔王を倒すまで冒険者と変わらないじゃないですか」

「は? だったらお前は魔王を倒せるのかよ」

「......」

「できないのに口を出してくんじゃねーよ」


 ロンドは俺とルーナを嘲笑いながらこの場を去っていった。その時、ロンドの隣にいる男性が俺たちを凝視しているのを気づくことが出来なかった。


 ★


「なんなのあの勇者って!」

「あはは。でもあいつしか魔王は倒すことが出来ないからさ」

「そうでもあんなに威張っていいの?」

「......」


 まあ、ルーナが言いたいこともわかる。勇者であろうと、威張っていいわけではない。何なら民のため、世界のために戦う存在。だからって、俺たちみたいな人をバカにしていいわけではない。


「本当にムカつく!」

「そ、そうだな」

「あ、そうだ!」


 少し悪だくみしているような表情をして言った。


「私とメイソンで勇者を見返そ!」

「え?」


(見返すって......)


「メイソンはあそこまで言われてムカつかなかったの? バカにされていらだたなかったの?」

「そりゃあムカつくさ。でも俺は一介の冒険者で......」

「それは違う。冒険者って言うのは、自分がしたいがままやる職業よ。だから、私たちは私たちで人を救いながら勇者を見返しましょ」

「でも、それをしたらルッツ様が」


 そう、そんなことをしたら、ルッツ様を助けるのが遅れてしまう。


「それは大丈夫じゃない? だって冒険している過程で助ければいいわけであって、私たちが強くなる目的と一緒に出来るじゃない」

「そ、そうだね」

「なら決定ね。私たちで勇者を見返しましょう。何なら私たちで魔王を倒そう!」

「あぁ」


 まあ魔王を倒すのは無理だけど、見返したいというのはわかる。


「ありがとな」

「え?」

「だって俺のために言ってくれてるんだろ?」

 

 するとルーナはそっぽを向きながら外を見た。


「私のためだし。でも目的は決まったね」

「あぁ。お互い頑張ろうな」

「えぇ!!」


 こうして俺たちの目的が決まった。



 この時は俺は、略奪が世界に取ってどれだけ重要なスキルであったか、まだ知らなかった。そして、ここから徐々に勇者であるロンドが没落して行く噂を聞いてくのはそう遠い話ではなかった。



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