第8話 外れスキルの真実とリッチの持ち物


 俺が尋ねると、ルーナ様は少し考えたのち話し始めた。


「私がエルフの王女ってことは言いましたよね」

「はい」

「エルフの王族一人一人にティターニア様から加護がもらえるのです」

「え?」


 驚いた表情でルーナ様を凝視してしまった。なんせ、エルフの王族がティターニア様から加護を受けていると言うのを初めて聞いたから。


(それ、言っていいのか?)


 そう、俺も一応は勇者パーティの元一員であったため、普通の一人より情報は持っている方だ。そんな俺ですらこんかい言われたのは初めて聞いた。それはつまり、一般公開されていない情報だと言うこと。


「驚くのも無理ないですね。ですがメイソン、あなたも誰かから加護を受けているはずですよ?」

「俺が?」

「はい。先程言った加護というのは、固有スキルのことです。そしてメイソンは固有スキルを使える。つまりあなたも加護を受けているってことだと思います」

「......」


 俺が加護を受けている? いやいや、そんなわけ......。だって、俺は誰に加護を受けているんだ? その時、頭が痛くなった。


「うぅ......」

「だ、大丈夫ですか」

「あ、はい」


(なんなんだ?)


 今まで起ったことのない頭痛であった。


「それで、私が所有している固有スキルは万能です」

「万能?」

「はい。回復及び防御系魔法の全般が使えます」

「す、すごいですね」


 その話を聞いて、シンプルにすごいと思ってしまった。だが、ルーナ様は俺に言った。


「ですが、メイソンの方が私よりすごいと思いますよ?」


 首を傾げながらルーナ様を見た。


「だって、メイソンはモンスターからスキルを奪えるのですよね? それってスキルの覚えたい放題ってことじゃないですか」

「......。言われてみればそうですね」


 ルーナ様の言う通り、俺のスキルでモンスターからスキルを奪いたい放題ではある。でも、本当にそれだけなのか? スキルを無限に奪えるってことは、このスキルはもっと世間でも有名なスキルなんじゃないのか?


「はい。なので、お互い加護があってよかったですね」

「そ、そうですね」


 まだいまいちピンと来ていない。俺に加護がされているって言われても......。


「今誰が加護をしてくれたか考えても意味ないでしょうし、ランドリアに戻りましょうか」

「わかりました」


 こうして俺たちは廃村を後にした。



 冒険者ギルドへ着き、受付嬢にクエストの報告をすると驚いた表情でこちらを見てきた。


「え? リッチが現れたのですか?」

「はい」


 俺たちは、リッチを倒した際に手に入れた杖を渡した。


「これって......。ちょっと待っていてください!」


 そう言ってこの場から去っていった。


「あれ? なんかまずいことでもしちゃった系ですかね?」

「わからないです。でも、あの杖をみてどこかへ行ったってことは、何かしら重要なものだったのかもしれません」

「そ、そうですよね?」


 俺たちは少し不安に思いながら受付嬢が出てくるのを待っていた。あの杖がもし呪いの杖だったりしたら。そう思ったら少しゾッとした。


 そして、なぜかまた応接室に呼ばれて中へ入ったら、ギルドマスターが俺たちのことを凝視してきた。


「メイソン、お前って本当に......」

「え? 何かしましたか?」

「あの杖だが、五年前に失われたこの国の秘宝の一つであったんだ」


 俺とルーナ様は驚いた表情で机に置かれている杖を見始めた。


(これが秘宝?)


 ぱっと見そうは思えないけど......。


「なんでリッチが持っていたかはわからないが、今回の一件は国王様に報告させてもらう」

「わかりました」

「後で報酬の件なども話すから、後日また来てくれ」


 そう言われて俺とルーナ様はこの場を後にした。そして、屋敷に戻るとルーナ様が言った。


「あの杖ってこの国の秘宝だったのね......」

「そうですね......」


 その後も、少しクエストのことを話していると、ルーナ様が先程までの優しい顔から一変して、真剣な表情で俺を見てきた。


「メイソン、一つお願いがあります」

「なんでしょう?」

「敬語をやめてください」

「でも......」


 今は冒険者の仲間とは言え、ルーナ様は王族であって、俺が守らなくてはいけない人だ。そんな人に対して敬語をやめるなんて......。


「これは私のためでもあるのです」

「え?」


(ルーナ様のためでもある?)


 俺が敬語をやめたら、ルーナ様は何かメリットでもあるのか?


「今後一緒に冒険をする時、敬語を使われえていたら他の人たちはどう思いますか?」

「あ!」

「そうです。私のことを身分の高い人だと思うかもしれません。なのでお願いします」

「わかりました」


 そう言う理由があるなら、しょうがないよな......。


「では、一度私のことを呼んでみてください」

「ル、ルーナ」

「もう一度!」

「ルーナ」


 すると、嬉しそうな表情をしながら口笛を吹き始めていた。


(あれ? そんなに嬉しいことだったのか?)


 そう思いながらも、屋敷で敬語をやめる練習をしながら数日が過ぎた時、ギルドマスターから呼ばれてギルドへ向かった。


 俺たちは応接室に入ると、ギルドマスターが言った。


「今回の一件、メイソンは無理だが、ルーナ様をDランク冒険者にすることが決まった」


 ルーナ様を驚いきながら見合ってしまった。


 

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