第6話 初クエスト


「ワーズの情報からの入手なので、信用に値すると思います」

「......」


 ルーナ様がこう言っているが、はっきり言って信じられなかった。時期は短いけど、一緒に行動していた仲間だ。そして、その中に魔族と絡んでいそうだと思った人物はいなかった。


「今すぐ信じてくださいなんて言いません。ですが、勇者様には言わないでくれると助かります」

「わかりました」


 流石に、疑いがある人物に言うわけにはいかない。


(それにしてもルーナ様が言ったことが本当なら......)


「それで、ルッツを助けるためにまずやらなくてはいけないのは私たちの実力を知ることです」

「ルッツ?」

「私の弟です」


 そこで、ハッとした顔をした。


(失敗したな......)


 話の流れからして、弟だとすぐにわかるべきであった。そんな俺の顔を見ながらルーナ様は、続けていった。


「それで先ほども言いましたけど、ルッツを助けるには、私たちの実力を知る必要があります」

「そ、そうですね。でも早めに行かなくていいのですか?」


 そう、捕まっているというなら、早めにでも魔族領へ行った方がいいに決まっている。


「今私たちが行ったところで死ぬのは目に見えているでしょう。それにルッツはまだ大丈夫ですよ」

「え?」


(まだ大丈夫ってどう言うことだ?)


「ルッツは捕まる際、宝石ダイヤロックを使って自信を痛めつけられない魔法を使いました」

「......。宝石ダイヤロックとは?」

「まあ簡単に言えば、自身の周りを石で覆う魔法です。使った本人も動けませんが、外部からの損傷も受けないという魔法です」

「よかったです」


 ルーナ様が言った通りなら、今のところはルッツ様は大丈夫だと思う。だけど、宝石ダイヤロックがいつ解かれるかわからない。ならできるだけ急いだ方がいいに決まっている。


「話を戻しますが、お互いの実力を知って、実力を上げてから魔族領へ行きましょう」

「わかりました」


 そして俺たちは屋敷を出て、少し歩いたところでルーナ様が言った。


「まずは、冒険者になるのが最初ですね」

「でも、いいのですか? 身バレとかの恐れが」

「大丈夫です。そこも話はつけてありますので」

「わかりました」


 そこで、ギルドマスターの言ったことを思い出した。


(あ~ね)


 あの時はルーナ様の騎士になると決めていなかったので、身分を言える状況じゃなかったのか。


 そして、冒険者ギルドへ着くと、ギルドマスターが俺たちの元へやってきて、ルーナに冒険証を渡してきた。


「メイソンは引き受けたんだな」

「はい」

「ならきちんと守ってやれよ」

「......。できるだけ善処します」


 今の俺には、はっきりと答えることが出来なかった。そして、クエストボードを見て、受けるクエストを決める。俺とルーナ様は数分間クエストボードを見ていると、肩を叩かれた。


「どれがいいの?」

「そうですね......。無難な奴だとゴブリン退治やコボルト退治とかですかね? 後は、少し危険度は増しますが、墓地除霊などもありだと思います。一応は準備が必要ですが」


 ゴブリンやコボルト退治は、俺一人でもなんとかなったからルーナ様がいても大丈夫だと思うが、墓地探索はわからない。普通の墓地なら除霊されているが、ここにあるってことは、誰も立ち寄っていない場所ということ。


 安全面を考慮したら、ゴブリンやコボルト退治だが、冒険者のランクを上げるなら墓地探索だと思う。


 俺が少し悩んでいると、ルーナ様が一枚の紙をとった。


「じゃあ墓地除霊にしましょう」

「わ、分かりました、でも大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。これ私に会っていると思うし」

「そ、そうですか」


(ルーナ様って意外とチャレンジャーだなぁ)


 俺たちは受付嬢にクエストの紙を渡して、墓地へ向かった。



 ランドリアから一時間ほど歩いたところに廃村となった村を見つけた。


「はぁ、はぁ......。や、やっと着いたのね」

「はい。少し休憩を入れますか」

「うん。そうしてもらえると助かる」


 俺たちは村の隅っこで十分程度休憩を入れている時、後ろの方からモンスターの声が聞こえた。


「ルーナ様」

「わかってる。行きましょう」


 ルーナ様もここは危ないとわかったのか、村の探索を始めた。


(それにしても、こんな場所があるなんて)


 ランドリアにずっと暮らしていたが、廃村となった場所があることを知らなかった。ランドリアの建築物とは違い、どの家もひと昔前に作られたものだと感じた。


 そう思いながらあたりを歩いていると、廃墟の裏側から弓が撃たれた。それにすぐさま俺は気づき、ルーナ様を守るように庇いつつ避けた。そして、廃墟の方をじっくり見ると、弓を持っているゴブリンが一体出てきた。


「あ、ありがとう」

「無事で何よりです。それよりもゴブリンを倒しましょう」

「うん」


 俺たちが戦闘態勢に入った瞬間、ゴブリンが弓を放ってきた。それを俺は見逃さず、ゴブリンに略奪を使用する。


 疾風の矢(小)を身に付ける。


(ゴブリンってこんなスキルも持っているのか)


 そして、ゴブリンが挙動不審になっている瞬間を見逃さず、火玉ファイアーボールを放った。


「グギャギャギャァァァ」


 ゴブリンが叫びながら燃え盛っていった。そして、ゴブリンが倒されたのを見た瞬間、ルーナ様は俺を凝視しながら問いかけてきた。


「ねぇメイソン。あなた今何をしたの?」

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