第5話 選択
(え? 俺がルーナ様の騎士になる?)
いやいやいや、なんで俺なんだ? お礼と言っても、他に何かしらあったと思う。それに加えて、お礼が騎士って言うのがまずおかしい。王女様の騎士ってだけですごいことだが、それ以上に他種族に頼むって......。それに俺は今こそDランク冒険者だけど、ついこの前まで新人冒険者だった存在だぞ?
すると、不安そうな顔をしながら俺を見つめてきていた。
「えっと、なんで俺なんですか?」
「それはですね、メイソンの実力を買ったからですよ」
「え?」
俺の実力を買った? いや、まだルーナ様の目の前で戦ったのはトレントの時だけだぞ?
「私にはなすべきことをしなければいけません。それにあなたの力が必要です」
「......。本当にいいのですか?」
そう、つい先日俺は勇者パーティを追放された身。そんな奴を仲間にしていいのか。ふとそう思った。
「えぇ」
「ですが俺は!」
そこで俺は少し声を荒げた。できるならルーナ様の騎士になりたいさ。でも、俺の素性を知らないのに決めていいわけがない。だが、ルーナ様は笑顔で言った。
「メイソンが言いたいことはわかっています。ですが心配は無用ですよ? 人族の国王様からあなたの素性なども聞いて、なお私はあなたを迎え入れたいと思っているのですから」
(......)
「それでメイソン、どうですか?」
「よろしくお願いいたします」
「はい!」
そして、ルーナ様は国王様にお礼を言って、俺と一緒に王室を後にした。廊下を歩いている最中、ルーナ様はずっと笑顔のまま俺に問いかけてきた。
「メイソン、私にはやらなければいけないことがあります」
「......。それは聞いて良いことでしょうか?」
(やらなければならないこと)
それを聞いて良いか迷った。だが、騎士になった以上、内容を知らないままではいけないと思った。
「えぇ。もう仲間なのですから。ですが、ここではお伝え出来ません。なので少し場所を変えましょう」
「はい」
ルーナ様に言われるがまま、王宮を後にした。
★
ルーナ様が暮らしている屋敷に入ると、そこにはトレントの時、一緒に戦ったエルフの男性が立っていた。
「久しぶりだな」
「あ、はい。お久しぶりです」
なぜか、あの時とは違い、優しい雰囲気で話しかけてくれた。
「名前は確かメイソンだっけ? 俺はワーズって言うんだ。よろしくな」
「はい。ワーズさんよろしくお願いします」
そして、ルーナ様に案内されるがまま、客間に入ると、ルーナ様は真剣な顔で話し始めた。
「今回、私がなすべきことをしなければいけないことは、魔王を倒すことです」
「え? 魔王を倒すこと? それならロンド......勇者に頼んだ方がよかったのでは?」
そう、俺なんかに騎士を頼むんじゃなくて、勇者であるロンドに頼んだ方がよかったと思う。それこそ、魔王を倒すことが出来るのはロンドしかいないのだから。
「いえ、話す順序が違いましたね。私が魔王を倒すのではなく、魔王に囚われている弟を助けたいのです」
「......」
なんて言っていいかわからなかった。ルーナ様の弟を助けなくちゃいけないということを踏まえて、「わかりました」なんて軽く言ったところで、なんて思われるかわからない。それほど重要な情報であり、重いことなのだから。
「それにメイソンの力が必要です」
「なぜ自分の力を? まだ私の力を知っているわけでもないですよね?」
トレント戦を見ただけで、俺の実力が分かるわけじゃない。それなのに俺の力が必要って言うのが分からない。それこそ、AやSランク冒険者を雇った方がいいと思う。
「ある人物に言われたのです。人族の国に向かう際、助けてくれる人物が居ると。そしてその人物が私を助けてくれると」
「......」
そんなことを出来る人がいるのか......。
「私だってそれを聞いた時は驚きましたよ。でも、本当に起こったことですし、メイソンが助けてくれました。ならそれを信じてみたいと思うじゃないですか」
「そ、そうですか」
「えぇ。そして私は魔族にマークされています。なので、変装して冒険者活動をしながら弟を助けようと思っています。それにメイソンも加わってほしいなと思います」
「わかりました」
すると、笑顔になりながら言った。
「今のところ私とメイソンしか仲間はいないので、おいおい仲間を増やして行きましょう」
「え? ワーズさんたちは?」
そう、今この部屋にいるワーズさんたちも一緒に冒険してくれると思っていた。
「ワーズ達には情報収集をしてもらいます。だから私とメイソンの二人ってことです」
「......」
(本当に大丈夫なのか?)
「後、勇者様にはこのことを伝えないでください」
「なんでですか?」
「勇者様の周りに、魔族と関わっている人が居るかもしれないという情報があるからです」
「え?」
ロンドの周りに魔族と関りがある人が居るかもしれない?
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