第4話 ルーナの正体


「えっと、人に呼ばれてね......」

 

 すると、ロンドは鼻で笑いながら俺に罵声を浴びせてくる。


「お前が? 人違いだろ! 早く王宮から出て行けよ。お前みたいな無能がこんな場所にいていいわけがない」

「......。まあ予定が終わったらすぐにでも出て行くさ」

「まあせいぜい俺たちにだけは迷惑をかけるなよな。まだ俺たちのパーティにいるって思っている奴もいるんだからな」

「わ、わかってるよ」


 そう言って、ロンドはこの場を去っていった。


(なんでこんな言われようをしなければいけないんだよ!!)


 俺がロンドに何をしたって言うんだ......。何もしていないだろ。何なら、少しだけど一緒に冒険してきた仲間だったじゃないか。


(クソ)


 煮え切らない気持ちになりながら部屋の中で待っていると、十分ほど経ったところで執事の人が中へ入って来て俺に話しかけてきた。


「メイソン様。王室で国王様などが待っておられますので、着いてきてください」

「わかりました」


 執事の方に言われるがままついて行き、扉を開けて王室へ入った。


(すごい......)


 今まで、王宮に入ったことはあったけど、王室には入ったことがなかったので内装を見て驚いた。扉から国王様が座っている椅子まで赤色のカーペット敷かれており、国王様が座っている椅子の後ろには、歴代の王族の似顔絵が書かれている肖像画が置かれていた。


 俺は国王様に少し近づいて、膝をついて頭を下げる。


「お初にお目にかかります。メイソン・フロージェと申します」

「突然呼んですまないな」

「とんでもございません」


 そこで、国王様が咳ばらいをして話し始めた。


「今回呼んだのは、メイソンに会いたいと言っている人物が居てだな」

「はい」


 すると、徐々に俺へ近づいてくる音がした。


(誰なんだろう?)


 今、頭を上げるわけにはいかないため、緊張しながら待つ。


「頭を上げてください」


 言われるがまま、俺が頭を上げるとそこには見知った顔が居た。


「昨日ぶりですね。メイソンさん」

「あ、ルーナさん.......」


 俺を呼んだって言う人はルーナさんだったのか。一応は、あの時も身分が高い人物だとは思っていたけど、国王様とつながりがあるほど身分が高い人物だとは思いもしなかった。すると、ルーナさんはホッとしたような顔で俺を見てきた。

 

「よかった。名前を憶えてくださっていて」

「忘れませんよ」


 流石に昨日のことを忘れられるわけがない。それに昨日じゃなくても、初クエストの時であったエルフの人を忘れるなんてあり得ない。


「それはよかったです」

「はい」

「あ、そうだ。まずは自己紹介がまだでしたね。私はエルフの第一王女、ルーナ・アークレスと言います」

「......」


 え? 今、ルーナさんは第一王女って言った? 聞き間違いじゃないよな......?

俺が固まっていると、首を傾げながら俺に尋ねてきた。


「聞こえませんでしたか?」

「いえ、聞こえました......。あ! メイソン・フロージェと申します。よろしくお願いいたします」

「はい。よろしくお願いします」


 ルーナさんはニコニコとした表情で俺を見ていた。そして、笑顔のまま話を続けた。


「それでですね。昨日お伝えしたことを覚えていますか?」

「??」


 昨日、何か言っていたか? またお会いしましょうとしか思い出せない。それに、もし何かあったとしても、ルーナさんが国王様の前で何か言うほどのことを忘れるわけがない。


「ほら! お礼をするって」

「あ......!」


(それって、建前上のことではなかったのか)


「それでですね。メイソンさんには一つお願いをしたいと思います」

「な、なんでしょうか?」


 ルーナさんがお願いを言うことに対して緊張しながら待つと、ルーナさんは深呼吸をして言った。


「エルフの第一王女、ルーナ・アークレスの騎士をしませんか?」

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