第3話 勇者との再会

「なんで俺が王宮に?」


 勇者パーティを追放された俺が、勇者パーティ関連で王宮に呼ばれることは無い。まだ、ベテラン冒険者ならわかるが、今の俺は新人冒険者である。それなのに王宮へ呼ばれるはずがない。


「まあ、それは指名をされてな」

「え? 俺がですか?」

「あぁ」

「それは誰にですか?」


 まったく見当がつかなかった。なんせ、勇者パーティであった時代は荷物持ちとして同行していたため、目立つことがなかった。そのため、俺を呼ぶ人物なんていない。他にも王宮に呼べるほどの身分が高い人物なんて知り合いにいないし。


「それは王宮に行ってみたらわかるさ」

「それはここでは教えられないと?」

「あぁ。悪いな」

「わ、分かりました」


 ギルドマスターと話が終わって、俺はギルドを後にした。


(それにしても俺を呼んだ人は誰なんだろう?)


 普通なら、呼ばれた人が分からなかったらいかないのが懸命な判断だと思う。だが、今回は王宮に呼ばれている以上、身分がそれなりに高い人。そんな人物に呼ばれているのに断るってことは、それなりに何かしらの罰が与えられる可能性があるかもしれない。


(はぁ......)


 なんでこうも、厄介事に巻き込まれるんだろう......。勇者パーティには追放されるは、誰かわからない人物に王宮へ呼ばれるわ......。


「まあ、行くしかないもんな」


 今、色々と考えたところで明日王宮へ行くことは決まっているんだ。なら考えるのをやめて、今日できることをするしかないよな。


 宿屋に戻って、今持っているステータスを確認する。


「え~と。今使えるのは......」


 身体強化(小)、道具収納アイテムボックス火玉ファイアーボール自動回復オートヒール。そして勇者パーティにいた頃、身に付けた水玉ウォーターボール風切エア・カッターか......。


(まだ、全然覚えていないな......)


 勇者パーティにいた頃は、大抵が雑魚のモンスターを倒していたため、そこまでスキルを奪うことが出来なかった。


(それでも、パーティに貢献していたと思うんだけどな......)


 俺がモンスターのスキルを奪って、ロンドたちが倒していた。それだけでも貢献していたと思うし、道具収納アイテムボックスを使っているだけでも、それなりに勇者パーティに必要な存在だったと思う。


「なんで俺、追放されたんだろう......」


 今でも少し思う。なんで俺が勇者パーティを追放されたのか。まだ、結果を残していないとかならわかる。そりゃあ、ロンドの言う通り役立たずはパーティに必要ないからな。でも、俺は違うはずだ。モンスターのことを弱らせていたし、荷物持ちとしても結果を出していた。


「まあ、ロンドの決めたことだからしょうがないか......」


 結局は、あのパーティの中心人物はロンドである。そして、ロンドが居なければ魔王を倒すことなんてできない。だからこその勇者なんだ。少しぐらい、わがままを言っても許される。あいつは、そう言う存在なんだ。


「だけど、俺もロンドと一緒に魔王を倒したかったな」


 少しだけロンドと一緒に魔王を倒したいと思う。だけど、もうそれはかなわないこと。俺はもう追放された身なんだから。俺は考えるのをやめて、ベットから立ち上がり、宿屋の食事を取って就寝をした。


 翌朝、勇者パーティ時代に来ていた正装服を着て王宮へ向かった。そして、目の前に着くと知り合いの宮廷騎士の人たちに止められる。


「メイソンじゃねーか。わかっているぜ。中に入っていいぞ」

「あぁ。ありがとな」

「おう! でも、お前も災難だよな。勇者パーティを追放されるなんてな」

「え? なんでそれを知っているんだ?」


 まだ追放されて間もないのに、なんですでに知り合いの宮廷騎士がしっているんだ?


「あ~。ロンド様がここへきて言ってたんだよ」

「......。そっか」


 ロンドの奴、俺の事を言いふらしているのかよ......。


(クソ)


「あぁ。まあ気にすんなよ! お前なら何とかなるって」

「俺もそう願うよ」

「今は確か冒険者だよな?」

「うん」


 すると、嬉しそうな顔をしながら言ってきた。


「お前はすげーよ。普通、冒険者になったばかりの奴が王宮へ呼ばれるなんてありえ無いんだからさ」

「あはは」


(俺もなんで呼ばれたかわからないんだけどね.......)


 そして王宮へ入り、客間へ案内された。そこで待っていると、見知った顔の人が中へ入ってきた。


「あ、なんでお前がいるんだよ」


 目の前に現れたのは、勇者ロンドであった。

 

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