第2話 エルフの女性

 エルフの女性は、一回咳ばらいをしてから自己紹介を始めた。


「私はルーナと言います。あなたの名前を伺ってもよろしいですか?」

「メイソンと言います」

「いい名前ですね。冒険者の方ですか?」

「あ、はい。今は冒険者として活動しています」


 つい先日までは勇者パーティの一員だったが、今は新人冒険者だ。


(はぁ......)


 勇者パーティから新人冒険者。本当に天と地の差だよな......。


「そうなんですね! 私は「ルーナ様!!」」


 ルーナさんが何か言おうとした時、エルフの男性が止めに入った。


(??)


「そ、そうでしたね。メイソン。この借りは必ず返しますので、後ほどまた会いましょう」

「あ、はい」


 すると、ルーナさん一行は森林を去って、隣国---ランドリアへ向かって行った。


「なんだったんだろう?」


 普通なら、ここで一緒にランドリアへ帰ってもよかったのかもしれないが、エルフの男性などの雰囲気からして一緒に居てはいけない感じがした。それに、ルーナさんも何か俺たちとは違う風格があった。


(それにまた会いましょうって......)


 国であるランドリアで、また会うことなんてできるわけがない。まあ、ルーナさんって、身分が高そうな人だったから、建前上何か言わなくちゃだったのかもしれないしな。


 それに今の俺は、ルーナさんたちのことを考える余裕なんてない。そのため、俺は森林でゴブリンやコボルトなどのモンスター退治を再開した。

 

 そして、一時間程コボルトなどを倒して休憩を取ろうとした時、ゴブリン数体とゴブリンマジシャンに出くわした。


(あいつらを倒して今日は帰るか)


 剣を抜き、コボルトから盗んだ身体強化(小)を使って、一体のゴブリンに攻撃を仕掛けた。


「グギャギャギャァァァ」


 一体のゴブリンを刺し倒したところで、もう一体の方にも近寄り斬り殺す。その時、ゴブリンマジシャンが火玉ファイアーボールを放ってきた。


 それを俺は、ギリギリのところでかわして、ゴブリンマジシャンに略奪を使用する。そして、もう一度ゴブリンマジシャンが火玉ファイアーボールを放ってこようとした。


 だが、魔法が発動しなくてゴブリンマジシャンが驚いている瞬間を逃さず、ゴブリンマジシャンへ向かって火玉ファイアーボールを放った。

 

「ギャギャァァ」


 悲鳴と共にゴブリンマジシャンが焼き死んでいくのを確認してから、ゴブリンマジシャンが所有しているネックレスを手に取った。


(よし)


 俺は、勇者パーティ時代から使用していた道具収納アイテムボックスを使用して、ゴブリンの耳とネックレスを手に取って冒険者ギルドへ戻っていった。



 ランドリアへ着くと、すぐさま冒険者ギルドにいる受付嬢の元へ向かった。


「メイソンさん、お疲れ様です」

「はい。ありがとうございます」

「今回は失敗ということですか。ですが、クエストの最初なんてみんな同じですのであまり気を落とさないでください」

「あ、素材ならあります」


 すると、受付嬢は俺の体を見回し始めた。


「そ、そうですか。ですが、見た限り素材はもっていないように見えますが」

「あ、今出しますね」


 俺は、道具収納アイテムボックスから、ゴブリンの耳とコボルトの牙、ゴブリンマジシャンのネックレス、そしてトレントの枝を渡した。


「え!? こんなにですか! ちょっとお待ちください。数を数えますので」


 受付嬢はそう言って、この場から去っていった。


(あれ? 数が多かった?)


 いや、でもゴブリンやコボルトなんて新人冒険者が狩るモンスターの典型的な奴だし、おかしくは無いよな?


 そして、十分ほど待ったところで、受付嬢が戻ってきて言われる。


「ゴブリンの耳が23個、コボルトの牙が17個、ネックレスとトレントの枝が1つでよろしいですか?」

「あ、はい」


(そんなにゴブリンとコボルトを倒していたのか)


「では、こちらが報酬になります」


 受付嬢がそう言って、カウンターに金貨3枚を出して来た。


「え? こんなにいただいていいのですか?」

「逆に少ない方ですよ! 後、先程ギルドマスターと話したところ、数日後お話があるらしいので、来ていただいてもよろしいでしょうか?」

「わかりました。ありがとうございます」

「こちらこそありがとうございました!」


 俺は金貨3枚を手にもってギルドを後にした。


(まあ、節約しなくちゃだよな)


 そう思いながら、いつも通りの宿屋に泊まって、ギルドから呼ばれる日を待った。



 そこから数日が経ち、ギルドに呼ばれて、応接室に入るとそこには風格のある男性が座っていた。


「俺がギルドマスターのガイルだ。よろしくメイソンくん」

「よ、よろしくお願いいたします。ガイルさん」

「早速本題に入るが、今回のクエストの件で、メイソンくんをFランク冒険者からDランク冒険者まで引き上げることが決まった」

「え? いいのですか!?」


 Dランク冒険者に上がれるなら願ったりかなったりだ。Dランク冒険者になれるということは、それなりのクエストも受けられるということ。


(これでもっとお金が稼げるぞ)


「あぁ。それともう一つ、明日王宮に行ってほしい」

「え?」


 突然、王宮に行ってほしいといわれて困惑してしまった。


 この時はまだ、王宮で誰と会うかなんて予想もしていなかった。

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