【書籍化決定】略奪使いの成り上がり~追放された男は、最高の仲間と英雄を目指す~

煙雨

序章 俺たちの目標

第1話 追放


「メイソン、お前って本当に無能だよな」

「え?」


 突然、勇者であるロンドが怪訝そうに言われた。


「荷物持ちで、無能なお前が勇者パーティにいていいわけがない。お前がいると、勇者パーティにとって不利益なんだよ! このパーティから出て行ってくれ」

「勇者パーティに不利益って今更言われても......。それに荷物持ちは、みんなに言われたから......」

「みんなに言われたから? 笑わせるなよ。無能なんてこのパーティにはいらない」

「え......」


 俺は追放を言い渡された。無能って。そんなはずない。勇者パーティに加入してからみんなに言われた通り、荷物持ちとしてやってきた。だが、荷物持ちをしながらも、索敵、モンスター討伐などもしてきた。それなのに無能なんて......。


「メイソン、お前の職業を自覚しているのか?」

「今は荷物持ちだけど......。でもそれは勇者パーティに加入してから荷物持ちが必要と言われたからであって、今まで他の職業をしていたさ」

「他の職業だって? 嘘を言うんじゃねーよ。お前は何もできない荷物持ちなだけだ」

「どこが無能なんだよ! 索敵だってしていたし、モンスターだって倒していたじゃないか」


 普通の荷物持ちは、ただ後方で荷物を持つのみだ。だが、俺は略奪したスキルを使って偵察していたし、モンスターのスキルだって略奪して、弱らせつつ倒して支援していた......。


「お前が索敵しなくても、俺たちは何とかなっていたし、モンスターを倒していたのだって俺たちが弱らせていた奴だけだろ」

「それは違うだろ......」


 索敵していたからこそ、モンスターとの接敵は減らしていたし、モンスターだって俺が略奪してモンスターを弱らせていたからじゃないか......。


「何が違うんだよ! 言い訳もいい加減にしろよ」

「......。なんで今更そんなことを言うんだよ」

「今更? それはお前が必要なくなったからだよ。いや、もともと必要じゃなかったんだけど、言うタイミングがなかっただけだ」

「......」


 元々勇者パーティにとって必要ない存在......。そう言われたとき、ものすごく悲しくなった。友達だと思っていたのに......。


「だから早くパーティを抜けてくれないか?」

「荷物持ちじゃなくて、他の仕事としてここにいちゃダメなのか?」

「笑わせるなよ。お前がこのパーティでやれることなんてないんだよ! 早く出て行けよ!」

「......。わかったよ」


 すると、蔑むような目でこちらを見てきつつ、言われる。 


「本当にメイソンが来てからの毎日憂鬱だったよ」


 俺は、泣きそうになりながら俺はこの場を立ち去っていった。



 何もやる気が出ない中、宿屋で数日間引きこもっていた。


(流石に何かやらなくちゃだよな)


 そう思い、足取りが重くなりながら冒険者ギルドで、モンスターの素材採取の依頼を受けて森へ向かった。すると、ゴブリンやコボルトがそこらへんにいたので、スキル【略奪】を使った。ゴブリンからは何も奪えなかったが、コボルトからは身体強化(小)を略奪した。


 俺はすぐさま、身体強化(小)を使い、体を強化して、ゴブリンたちに攻撃を仕掛けた。案の定、身体強化(小)を使っているため、簡単にモンスターを倒すことが出来た。


 その時、森の少し奥の方から戦闘している音が聞こえた。


(なんか強いモンスターならいいな)


 そう思いながら、そこへ向かうと、エルフの男性三人で、エルフの女性一人を庇いながらトレントと戦っていた。


(なんでこんな場所にエルフが?) 


 普通、エルフとは森林の最深部らへんに生息しているといわれている。だが、ここは森林から入って間もないしエルフがいるとは思えなかった。


(まあ、今はそんなことよりこの人たちを助けなくちゃ)


 俺は、トレントの自然回復オートヒールを略奪してから、先程入手した身体強化(小)を使って、トレントを斬り裂いた。するとエルフたちが驚いた表情でこちらを見ながら話しかけてきた。


「お前、トレントをどうやって倒した?」

「え? 普通に斬りましたけど」

「トレントは自然回復オートヒールがあるからあんなにあっさり倒せるはずがないんだが?」


 俺が黙りこんでいるところで、エルフの女性が出てきて言った。


(きれいだ)


 誰もが、人目見たら可愛いと思える存在。それほど美しい存在であった。


「やめなさい。それよりも、助けてくれてありがとうございます」

「あ、はい」


 エルフの女性との出会いが、俺の人生を変えていった。



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