第5話 登校

「大河先輩。一緒に登校しませんか?」

2人で朝食を食べていると、突然凛花がそんなことを言い出した。

「まあ、別に俺は大丈夫だけど。え⁉ていうか俺と凛花って同じ学校だったの?」

「え⁉先輩知らなかったんですか?」

「いや、だって、葵そんなこと言ってくれなかったし。」

それに、凛花のようにかわいい女子なら、学校で噂になりそうだけど……。いや、

そういえばああいうのって、小説の中でしか見たことないし、現実世界ではああいうのってないのかな?まあそんなことは置いといて、結局俺たち二人は、一緒に登校することになった。


朝食を食べてから20分後、俺たち二人は学校に向かって歩いていた。

「先輩。先輩ってどこの部活に入っているんですか?」

「俺?俺は、特に部活入ってないから、帰宅部みたいなもんかな?」

中学校の頃はテニス部に入っていた俺だが、高校では勉強も部活も面倒になり、テストも赤点回避を目標にし、部活も入らなかった。高校に入ってからは中学のころとは違って、葵以外にかっこつけたかった相手もいなかったし、特になんも頑張ってなかったけど、後輩に帰宅部とかいうのって結構恥ずかしいな……。これを機に、もうちょっと勉強頑張ろっかな~。まあきっと、三日も続かないだろうけど。

「そうなんですね~。じゃあ、私と一緒ですね。先輩。」

え⁉今凛花、なんていった?凛花が帰宅部?いや、まあ何のとりえもない俺みたいな陰キャが帰宅部なのはわかる。でもなんで、凛花みたいな可愛くて、ザ・陽キャみたいな人が帰宅部なの?世の中って分からないもんだな~。

「凛花も帰宅部なんだ。意外だな。」

「そうですか?私にとっては先輩が帰宅部ってことが意外ですね。だって先輩、中学校の時、部長だったじゃないですか。」

「まあ、それは、いろいろあってな……。」

そんな話をしていると、いつの間にか、学校の前についていた。

「先輩。これお弁当です。よかったら食べてください。」

「ありがとう。」

「いえいえ先輩。居候の身としては、当然のことです。それより先輩、帰ったらこの話の続き、またしましょうね。」

そう言って凛花は俺に微笑むと、校舎に向かって歩き出した。

ちなみに、この日の主婦たちの話題のネタに、俺が凛花と一緒に家から出てきたことが加わったのは言うまでもない。

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