Ⅴ 豹変

「えっ...」

思いがけない彼女からの告白に、戸惑いを隠せなかった。

「ほ、本気ですか?フィルミーヌ様...」

「本気です」

そんなに迷いなく言われたら、どうにかなりそうになる。

勿論、そんなふうに思ってくれるのは嬉しい。

だが、なんだか複雑なのだ。

彼女から告白させてしまったからか、時期が早すぎて驚いているのかは分からないが。

「...まだ、早くないですか?もう少し段階を踏んでから...」

「段階も何も、『ずっと前から知っていた』んですよね?わたしのこと」

「...それは...」

何も言い返せない。

「わたしは早く貴方が欲しいんです。ごめんなさい、余裕なくて。でも心配で。自覚ないかもしれませんけど、貴方は自分が思っているより魅力的な人ですから」

何故こんなにも淡々と言えるのだろう。

いつのまにか彼女の頬からあかみは消えていた。

あどけなさを感じさせた目は細く開かれ、瞳の色もいつもより暗い。

明らかに、いつもの"フィルミーヌ"ではなかった。

恐い。

こんな彼女は知らない。

「ど、どうしたんですか?!フィルミーヌ様!!」

「うふふ...どうにかしちゃったみたいです」

彼女はそう言いながら天蓋を退けて私に近づいた。

「言いましたよね...『ずっと前から知っていた』って。わたしもですよ」

「...えっ?!」

「学生時代にわたしが落としたハンカチを拾ってくれたでしょう...?あの時からずっと...お慕いしていました...こんなにも可愛らしい殿方がいるのか、と...」

「か、可愛らしい?!」

恐怖で少し収まっていた頬の紅みがまた戻る。

それを見て彼女は意地悪く笑いながら耳元で「そういうところ」

と囁いた。

「段階踏みたいんでしたよね...?結婚する前に...」

そう言いながら寝台の中に入り込もうとする。

「え?!フィルミーヌ様?!ちょ、ちょっと!!」

必死に止めたが抵抗も虚しく。

気がついたら、接吻されていた。







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