II 見合いの席にて
「...頼んでいないのだが」
にこやかに笑う私の側近、ステファンを睨みつけながらそういうが、彼には効かない。
「契約者を見つける機会なんてそうそうないのですから。お見合いなんていい機会ではありませんか」
彼とは主従として長い付き合いだが、欠点を挙げるとすれば基本的に主観で動くところだろう。
私がよほど信用できないのか、
「余計な世話を焼かないでくれ...」
だが、相手がもう来てしまっている以上断ろうにも断りきれず、相手と顔を合わせる羽目になった。
扉の外で側近との話し声と衣ずれの音が聞こえ、反射的に立ち上がるとそこには容姿端麗な乙女が居た。
「初めまして。フィルミーヌ・ド・シャルトーと申します」
艶やかな金髪。
伏せられた長い睫毛。
深い青の瞳。
何故このような娘が婚期を過ぎた私と見合い結婚などしようとするのだろう。年頃の男と恋をして結婚した方が良い気がするが。
私の爵位に惹かれたのだろうか。
それとも、何か訳のある娘なのか。
「あの...失礼ながらお名前をお伺いしてもよろしいですか?」
しまった。また一人で考え事を。
「すみません。クロード・アンドレ・ブロシェと申します。」
敢えて爵位は言わずに自己紹介を済ませた。
こうすることで、地位目当ての結婚かそうでないかが分かる。もし地位目当てならば爵位を尋ねてくるはずだ。
さぁ、どう出るか。
「クロード様...ですか。お忙しい中時間を設けていただいてありがとうございます」
...爵位に興味はないのか..,?
「いえいえ、こちらこそ貴重なお時間をありがとうございます。どうぞお掛けください」
昼下がりになり、フィルミーヌ嬢は帰っていった。
久しぶりにステファン以外と話したと思う。
母校が同じだったということもあり、話が合い、楽しいひとときであった。
とはいえ、
『...あの、もしよろしければもう一度会いませんか...?』
別れ際、二人で同じことを言うほどだとは考えてもいなかったが。
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