I 憎むべき血統
これで何日目だろう。
身体の怠さを感じながら、私は思った。
「そろそろ、契約者を探さなくては...」
そう言いながら、眠りについてしまった。
私が普通ではないと気づいた...いや、知らされたのはまだほんの幼いときだった。
「よいか、クロード。お前は吸血鬼の末裔なのだよ」
そのときはまだ意味が分からず、ただ父の言う言葉に頷いただけだったが、歳を重ねるごとに嫌でも
いけないと抑えても、衝動に駆られる。
怪我人を見たとき、赤い物を見たとき、ひどいときは自分の血を見たときでさえも。
ああ、早く。
一刻も早く飲み干してしまいたい。
だが、無闇矢鱈に人を襲ってはならない。殺すなどもってのほか。
『人間と共存するのが、生き残るための一番の近道なのだから』
父の教えだった。
その証拠に、父は人間である母に事実を伝えた上で結婚という契約を交わし、血を与えてもらっていた。
死なない程度に、少しずつ。
だが...
母は、その父に殺されてしまった。
勿論、最初から殺すつもりはなかった...のだろう。
しかし、父が母を殺したのは事実だ。
忘れるわけもない、深く刻まれた記憶がそう言っている。
脳を突き抜ける様な悲鳴。
深紅に染まった絨毯。
呆然と立ち尽くす父。
あの光景は幼い私に自分という存在の恐ろしさを教えた。
私は、殺人ですら平然とできてしまう本能を持っているのだと...
もちろん、あれは"事件"ではなく、"事故"だ。父に悪気はなかったのだと思う。
でも、だからこそ恐いのだ。
あの様なことはしたくない。
それなのに、体が意に反して血を求めるのが嫌だった。
何故私は吸血鬼の末裔なのだろう...
そうやって何度も自分の血を憎んでも。
この想いを分かち合える人は、
誰も、いない。
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