3

サオは描けるだけの絵を描いた。すべてあの子の絵だ。


「なんとか女性の見た目だけで時代が分からないものか…」


サオすっかり夢で見た女に心を奪われていた。


「僕はこのままでよいのだろうか…夢に見た女に惚れただなんて知られたら笑われるどころじゃすまないな」


サオは再び筆を手に取った。


その時。


「サオ…!サオ…女の人の名前?」


女の声が聞こえた。


「誰だ…?」


辺りを見回すが誰もいない。女の声は続く。


「小夜…私の名前…」


「小夜…?誰の名前だ?」




サオの知り合いにそのような名前のものはいない。そして、それはサオの生きた時代には聞きなれない名前だった。






「スノ サオ…へえ~覚えておこう!学校終わったら名前調べようっと。イケメンだったらいいなあ~!!!」


女の声は続く。


「がっこ…?イケメ…僕の知らない言葉ばかり…。でもおそらくこれは日本語に間違いはない…




…!!同じ言語でも、僕の知らない言葉を話しているということは…もしかしたら、君は…!!!」



サオはすばやく筆を取った。



「小夜…小夜…僕の唄だ…もう全部流されて残ってないけど…」


サオは震える手でその名を記した。

























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たとえば和歌を詠むように… ましま志乃 @mkao_renour

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