第2話 白と黒
「そういえば、私の名前言ってなかったね。」
名前以外にも疑問はたくさんあるが、確かに聞いてなかった。
「私は白咲愛美(しらさきまなみ)!君は?」
「霞(かすみ)。」
「へぇ。かわいい名前だねぇ。」
かわいい...?よくわからないな。生まれて初めて名前について誰かに言われた感想がかわいいとは想像したこともなかったな。
「でも意外だったなぁ。脅しに屈して付いてくるタイプではないと思ったけど、生きる理由のために付いてくるなんて。」
「悪いか?」
「ううん。私としては君の意思で付いてくれて嬉しいかな。」
...やっぱり分からない。彼女は俺を助けたいと言っていた。マフィアの女が構成員の一人を殺した俺を助けるってのは意味不明だ。でも...、不思議なことに彼女の発言からは嘘を感じない。もちろん俺に嘘を見抜く能力なんてない。なんとなくだ。
「君はさ、マフィアってどんなイメージ?」
「悪。」
正直な感想だった。マフィアなんてものが日本に来て、裏社会に蔓延り始めたから、格差社会が広がったのだと聞いている。もっとも俺が生まれる前の話だ。恨みなんてのはない。まさか自分が勧誘されるとも思っていなかったが。
「正直だねぇ。でも良かった。もし憧れとかかっこいいとか良いイメージ持ってたらどうしようかと思った。」
「ん?あんたはマフィアの中でも立場が上とか言ってなかったか?」
「そうだよー。人には色々あるのさ。」
受け答えに疑問に感じたがこの時俺は深く追求しようとは思わなかった。
なぜだか、深く踏み入りたくないような感じがしたからだ。
「ここら辺だったかなぁ...。」
「?」
「迎えを手配してるんだけど。」
「こんなとこか?」
ここはまだ貧民街の中だ。車なんて走ることはほとんどないから道路にも構わずゴミや木片、金属片とにかく様々なものが散乱しており車なんて来れないだろう。
が、すぐに自分の発想自体が間違っていたことを思い知らされた。
上空からヘリが来た。
「白咲様、お迎えに上がりました。」
黒いスーツを身を纏った、白咲よりも少し若く俺よりも少し年上のように見える女性が2人ヘリから降りてきた。
「わざわざご苦労様です。」
白咲は軽く会釈をし、俺の方を向き
「じゃあ、行こうか?」
俺は少し呆気にとられ、同時に彼女がマフィア内でもそれなりに権力があるという話が眉唾ではないのだと思った。
俺は無言のまま、ヘリに乗り込んだ。
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