第14話 エンディング
どうにか殿下を引きはがして(!!)家の外に出ると、ラニエロ様とイレーネ様がいらっしゃっていた。
どうやら、隣国へは一緒に帰ることになるらしい。
馬車の前で、イレーネ様が一生懸命ラニエロ様の腕から逃れようとしているようにも見えるが、どっちかというとイチャイチャしてるようにしか見えない。
「アシュリー!」
私の顔を見ると、ラニエロ様の手を振りほどくことに成功したイレーネ様は、私の前にぱっと駆け寄ってくる。
私は、一番気になっていることを尋ねた。
「もしかして、なんだけど、お姉ちゃん?」
「ひょっとして、みいちゃん、みいちゃんなのね!?」
そう、卒業パーティーで手をつながれた時に感じたのだ。前世の姉は、ちょっと変わった手の繋ぎかたをするのだ。
再会を喜ぶ前に姉が私に縋りついてくる。
「みいちゃん、みいちゃんだから2の存在を知らないのね!? あいつ、ヤバいのよ、あいつだけ死亡フラグあるのよ!」
「まあ、積もる話は、着いてからにしましょう。話す時間は向こうでいくらでもありますから」
そんなイレーネ様、もといお姉ちゃんの肩を再度抱くようにして、ラニエロ様が、私たちの会話を遮った。
「いやあ。みいちゃああん」
抵抗する姉の耳元でラニエロ様が何かささやくと、姉はぴたりとおとなしくなり、そのまま馬車に押し込まれていった。
ええっと?
「あの、エルネスト様。イレーネ様の身の安全を保障していただけますか?」
「もちろん、アシュリーの頼みなら、何でも叶えるよ。ただ条件がある」
殿下はいたずらっぽく笑顔をみせる。
「……なんでしょう?」
「2とか隠れキャラってなんのこと」
「えっと……」
まあ、いいか。あんなに私を大好きな殿下に、秘密は持ちたくない。それに、殿下なら、私の前世の話を絶対に楽しんでくれるはずだ。私の世界が、何倍にも広がりそうな気がする。
私は、前世の話をするのが、だんだん楽しみになって来た。
私は、殿下の方に向き直ると、上目遣いに見上げて、微笑んだ。
「なかなか面白い話ですよ! 聞いたら、きっと、私の事がますます好きになります」
「これ以上、僕を夢中にさせてどうするの? アシュリーは、ほんとは、檻に入りたいの?」
あれ? 私、今、押した? この人のヤンデレスイッチ押しちゃった!?
挽回! 挽回しなければ!!
「エルネスト様、私は、檻に入れるよりも、一緒に、連れ歩いて、一緒に色々なことをする方がずっと楽しいですよ! 二人で色々な経験をした方が愛が深まるというか……その、」
「ふっ」
くすくすと笑うエルネスト様の瞳にヤンデレの影はなかった。
か、からかわれた。
「アシュリー、そうだね。二人で色々な国を回ろう。この世界の珍しいものをたくさん見よう。たくさんの経験をしよう」
「はい!」
私たちは、あの明るい希望に満ちたカフェテラスで、たくさんの夢を語り合ってきた。
毎日、毎日、たくさんの世界につながる夢を語り合ってきた。
でも、それは、夢で終わらないのだ!
これから、私たちは、この世界で、たくさんの夢を実現していく。
――ヤンデレは、もちろん全力で回避しながらね!
Fin
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