第15話 王都冒険者ギルド

 ゲルアト商会の客間に滞在して、主の回復を見守っていた。

 ゲルアトは体力は落ちていたが血色は良くなり、特効薬を持ち帰った二人を使用人達の前で褒め、特効薬を手に入れる手助けをしたのが俺と思わせた。

 使い魔の治癒魔法で治った等と知られたら、騒ぎになるのは確実で俺の望むところではない。


 ルクランのゲルアト商会はゲルアトの産まれた家で、本店が王都にあるので是非寄ってくれとゲルアトに懇願された。

 どのみち目的は王都なので、もう少し回復したら王都迄護衛がてら一緒に行く事になった。


 ゲルアトはみるみる回復して周囲を驚かせたが、俺に感謝しきりである。

 早朝にルクランの街を出発し、王都バルザックに着いたのは夕方少し前で、本店に直行した。

 王都に居る間は、ゲルアト商会2階にある客間を何時でも自由に使ってくれと言われたが一晩だけで辞去した。

 

 遅くなったが護衛依頼書に依頼完了のサインをもらい、王都の冒険者ギルドに出むく。

 ゲルアトから感謝の印しにもらった革袋には金貨が10枚程入っていた、依頼報酬等で残金が増えるばかりである。


 * * * * * * * *


 依頼完了報告と書類を提出して、面白い依頼は無いか期待にワクテカだ。

 流石に王都冒険者ギルドの依頼票、張り出しの多さには目を見張る。

 シルバーランクの依頼から見ていく、討伐依頼と護衛依頼が半々だ。

 討伐依頼の内容は指定野獣の指定部位の持ち帰りが条件とか面白そうであるが、討伐は出会い頭に倒すだけでお腹一杯なのでパス。

 

 ゴールドランクの依頼は・・・シルバーランクと内容的には大して代わらずかな。

 野獣の強さが違うくらいで、これも食指が伸びずパス。

 ゴールドランク指名の珍しい薬草の採取なら、面白いかもと考えているとお尻がムズムズ反応する。

 すーっと横にずれると。

 

 「お前の様な餓鬼が、ゴールドランクの依頼票の前に立ちはだかるな!」

 

 又煩いのが現れた、しかも25才の俺に餓鬼だとは礼儀知らずの阿保かいな。

 確かに俺は身長が低いが、165cmは有るんだぞオーク野郎が。

 そう思いながら顔を見ると、やっぱりオークだ。

 

 〈プッ〉って、思わず吹いちゃったよオークさん。

 

 「何が可笑しいんだ糞餓鬼。アイアンやブロンズはもっと奥だ!」

 

 「煩いよオーク野郎、それに後ろから俺を蹴ろうとしたよな。臭くて汚いオークが喋るな!」

 

 おーお、赤いオークに変身だ。

 周囲が静まりかえっているが、赤いオークって怖いもんねー。

 

 「丸腰の餓鬼が、いい度胸だな」

 

 「お前の様な臭くて汚いオークは嫌いなんだ。模擬戦で片を付けようぜ、怖くなければな」

 

 ウオーって周囲の歓声が凄く冒険者ギルド恒例のイベントって感じだが、冒険者は舐められたら終わり・・・だよな。

 ラノベではそうなっていたし、新参者の定番イベントは手早く済ませてしまおう。

 

 訓練場に行くと内野席は満杯だよ、何処から湧いて出て来るのかゴブリンみたいな奴等。

 ギルドの職員らしき男が双方に相手を殺すなよ、俺が止めて止めなければ殺すぞって。

 

 こわーい、オークよりこのオッサンの方がよっぽど怖い、武器が無いのでロングソードより少し長めの棒を借りる。

 合図と共にロングソードで切り込んで来る赤いオーク、足元にチョイと穴を開けて落とす。

 〈ウオー〉とか言ってるが、穴に落ちて手をついた所に又穴を開ける。

 両手両足を埋めて固定し、徐に棒を振り脇腹への一撃でKO勝ちだね。

 

 見物連中の呻き声が心地好いが、お前等は絡んで来るなよ。

 

 「えげつないやり方だな」

 

 「えー、一発で勘弁してやったのにその言い草。ぐちゃぐちゃにすれば良かったの」

 

 「止めろ! 片付けが面倒だ。初めて見る顔だな何処から来た」

 

 「サランガから護衛で来たんだ。王都のギルドを見学に来たら、オークが居るのでびっくりしたよ。しかも、赤い顔のオークなんて初めて見た」

 

 「お前、大概に口が悪いな。王都冒険者ギルドの受付主任のボルグだ」

 

 「ユーヤです。少し在庫を処分していきたいので、解体場所に案内してもらえませんか」

 

 「解体場所が必要な程持っているのか」

 

 腰のマジックポーチをポンポンと叩く。

 

 「お前ランクは?」

 

 「ユーヤだよ」

 

 「あーぁ判った。ユーヤランクは」

 

 マジックポーチから冒険者カードを取り出す。

 

 「ゴールドの二級に、ブロンズの阿保が意気がって喧嘩を吹っ掛けたのか、良く一発で許したな」

 

 「優しいでしょ」

 

 「はいはい、解体場所はこっちだ」

 

 解体主任が呼ばれて、ゴールドランクだ在庫を処分したいと言っていると告げる。

 マジックポーチからマジックバックを出して、解体主任の指定場所に熊さんから並べる。

 黒熊さんが3頭、内1頭は赤いお目々です。

 赤い熊さんは1頭だけです。

 黒い狼さんが沢山、8頭いたよ。

 茶色い犬見たいな狼さんは5頭です。

 黄色い狐が1頭に、銀色狐が4頭、内2頭はワンポイントの赤いお目々だよ。

 

 「待った!、何時まで出すんだ」

 

 「あーこれからは段々小さくするよ。少し処分しないと重いんだよ」

 

 「マジックバックが重い。ハン」

 

 鼻で笑われたが、このオッサンも失礼な奴だな。

 

 「今日は此処までにしてくれ、残りは別の日にたのむ」

 

 「じゃー魔石も全て売るので、清算は口座に振り込んでおいてくれるかな」

 

 ボルグにカードを渡してたのむ。

 

 「可愛い子ぶってるが、25才のオッサンかよ」

 

 失礼なオッサンだが、餓鬼と間違えたのはお前等だ!

 

 「あー模擬戦します」

 

 ニッコリ笑って誘ってみたが、軽く振られた。

 

 三日後に美味しいお肉が食べたくて冒険者ギルドに行く、中に入って行くと何だか俺の前から人が消える。

 嫌な雰囲気だが絡まれるよりマシだと割りきり、ボルグを呼んでお肉が欲しいので解体してもらえないか相談だ。

 

 「お肉以外は全て売るのでお願いします」

 

 「お肉以外って大きいのか」

 

 「大きいよ熊さんより遥かにでかいし、皮とか牙とか色々高く売れるよ」

 

 「ちょっと待て、お前何を持ち込んできた」

 

 「少し大きい蜥蜴だよ」

 

 「ユーヤ、ひょっとして、サランガのギルドにアースドラゴン持ち込んだのはお前か」

 

 「蜥蜴です。アースドラゴンなんて御大層な物は知りません。俺の名前は出さないで下さいね。前回お肉を食べ損ねたので、今回はお肉総取りです。備蓄食料のお肉は蜥蜴のお肉 ♪」

 

 呆れているボルグや解体主任を無視して、今回も口座に振り込んもらう様にたのむ。

 お肉は翌日渡しって事で、ランランでホテルに戻った。

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