第9話 お仕置きタイムと神様

 今夜は領主の馬車を壊して逃げられない様にすることと、奴隷商のミュシェルを取っ捕まえて締め上げる。

 うん、完璧な計画だな。

 細かい手筈は出たとこ勝負になるのは致し方なし。

 

 夜半に領主の食料庫に転移し厩に向かって土竜行進だ、馬車の車輪は予備も含めて全て破壊する。

 破壊音で馬が騒ぎだし、寝ていた馬丁や御者達までも出てきて騒ぎ出したので、領主までお出でになったよ。

 領主らしき奴と身なりの良い奴等の足下に、穴を開けて落とすと即座に塞ぐが、心優しい俺は空気穴を忘れない。

 突然人が消えたので大騒ぎになったが、無視する。

 

 さあ土竜の俺様が御挨拶に伺うかな、穴の中を覗き手足を拘束してからこんにちわ~♪ です。

 領主らしき奴から尋問開始、黙んまりなので一人ずつスタートゲートに招待して、面通して名前を確認する面倒臭い仕事だ。

 領主,長男,次男,執事が居たので全員食料庫に転移させ、領主に首輪をプレゼントし、効果をじっくりと身に染み込ませてから執務室にゴーだ。

 

 奴隷の首輪を提出させると俺のプレゼントの首輪と交換し、地下室に残る方々にも奴隷の首輪を付けてやる。

 騒いでいる厩番や御者を、黙らせろと領主に命令して静かにさせる。

 いやー、奴隷の首輪って効果抜群です。

 エメスちゃんは夜遊びだよ、どら息子だよねぇ親の躾はどうなってるんだ!

 拉致に関与している屋敷の者を順次呼び出させ、下っ端は地下の奴隷部屋に監禁する。

 

 エメスちゃんの帰宅を待ち、どら息子を地下の奴隷部屋に放り込む。

 後は奴隷商のミュシェルを呼び出し、奴隷の首輪を付けてから手持ちの奴隷の首輪を全て提供させてのお楽しみだ。

 首輪は目立たぬ様にスカーフで隠させている。

 

 その間にコリアナ伯爵に命じて、国王陛下に緊急の書簡を認めさせる。

 自らの不法な人身売買の告白文と、証拠書頼の提出及び伯爵位の返還を届け出る事を書かせる。

 序でにこの世界の呼び名と創造神の名を聞いておく、世界の名はフルミナ創造神の名はヨークス。

 書かせた書状を早馬にて王宮に送らせると、王家の使者が来るまで大人しく待っていろと命じ、臨時の転移魔方陣を消去して伯爵家を退散する。

 

 あの爺さん、創造神でヨークスって名前なんだ。

 

 教会の場所をクルフに聞き、教会で爺さんに山ほど文句を言わねば気が済まない。

 クルフの信仰する神は武闘神グランだと、祈りは掌を合わせて指を組み胸の前に置き頭を垂れて祈るらしい。

 んじゃちょっぴり武闘神様に、挨拶をしに行くか。

 教会には人がいなかったので、日本の賽銭箱に似た箱に喜捨を入れてグラン様に御挨拶。

 

 《グラン様、お気楽間抜けな創造神ヨークス様に、適当な事を言われてフルミナの地にやって参りました、高塚祐也と申します、以後宜しくお願いします》

 

 《ブァーハッハッハッハツハ》

 

 いきなり爆笑が聞こえてきたので、びっくりして周りを見渡すが誰もいないね。

 

 《お前は創造神の加護を受けながら、中々に面白い奴だな》

 

 いきなり現れたのは、金髪青目の細マッチョ、中々のイケメンが現れた。

 

 《あのーもしかして、武闘神のグラン様ですか》

 

 《おぅそうだ。俺がグランだが、お前は中々に面白い奴だな。確かにヨークスの爺様のこと、お気楽間抜けとは言い得て妙だ》

 

 《グラン、儂を愚弄する気か》

 

 《うへー、ヨークス様のお出ましだ》

 

 《神様、自分の名や転移先の世界の名も教えずに、パン三個で転移させるなんてお気楽間抜けと言われても仕方がないですよ。しかも街まで10日以上掛かるのに、塩も碌に無くて大変だったんですよ。それにあの異世界の案内は何ですか、紙を二つ折りにした物に走り書きで(達者で暮らせ、さらば)は酷すぎます》

 

 《ブゥフーヒッヒッヒッヒッ、ひっ酷でえなー、それ》

 

 《でしょう。パン三個は諦めますが、人間塩が無ければ長く持ちません最悪死にます》

 

 《ブォーホン、済まんかった。まあ気にはなっておったのだが、如何せんユーヤが教会に来ないので会えなかったんじゃよ》

 

 「森の中に教会はありません! それにお気楽な異世界転移がハードモードですよ。奴隷狩りに襲われて頭にきたから、黒幕諸共捕まえて王家に自首させてと大変です」

 

 《それは大活躍だな、ヨークス様の加護が有るなら俺も加護の一つくらい付けておくか》

 

 《要りません! 迂闊に加護を貰ったら又大変な目に合いそうですから。基本闘わずにスルーして、気楽に生きるのがモットーですからね。武闘神の加護なんて、波瀾万丈血塗れの世界しか見えません》

 

 《お前がこの世界に来て初めて祈る神である、我の加護を与えられなければ俺の威信に関わるので、頼むから受けてくれ。何なら、闘わず見切り捌く能力だけでもどうだ便利だぞ》

 

 「むー見切り捌くとなれば、投げ飛ばして押さえ込む能力も付けて貰えますか。それなら逃げずに相手を制圧出来ますので」

 

 《おぉ、それくらい容易い事よ。では我の加護を授ける》

 

 《グラン様、有り難う御座います。ヨークス様、これからは手抜き無しでお願いしますね》

 

 《分かっておる。楽しめよ》

 

 《あっそれと、ヨークス様(健康で長寿、人より抜きん出た魔力)を貰ったら人族3エルフ1になってましたけど》

 

 《ああ、あれな、人族の寿命は精々50~80年じゃろう、それでは短いのでエルフのエキスをちょっぴり足しておいた。200~300年位の寿命じゃが、魔力量に依っては2、3倍に成るかもな。人の寿命だから大した違いは無い気にするな、んじゃなー》

 

 《最後の方は早口になっていたので、逃げたな》

 

 《良く分かったな》

 

 《えぇ、出会いから適当なお方でしたからね。本当に神様かと疑っていました》

 

 《まっあれでも人にとっては良い神なので、大目に見てくれ。困った事があれば又来るが良いぞ》

 

 そう話すグラン様の手に黒い玉がポンって感じで現れた。

 苦笑いで玉を見つめ溜息をつくと、ひょいと俺に投げて寄越し、ヨークス様からの便利な贈り物だ、魔力を込めてみろと言われた。

 

 手の中の玉に魔力を込めると、淡い光に包まれて黒い玉が膨らんでいく。

 猫の子だ! 漆黒の毛並みと、純白の稲妻模様が額に浮かんでいる。


 《闇猫だ、お前の友となり護衛となる。影に潜ませれば何処にでも連れて行ける。ヨークス様は、又忘れる処だったみたいだぞ》

 

 そう言ってグラン様も消えた。

 

 取り敢えず影に入っていてくれと頼むと、静かに俺の影に消えた。

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