第8話 奴隷商人

 面倒な尋問も三回り目には素直に喋り始めたが、最初から素直に喋れば良いのに。

 俺なら、痛い思いをするくらいならさっさと喋っちゃうのにな。

 最初に絡んできた一人が情報通で、ペラペラ喋ってくれた。

 

 曰く、俺達をアジトに収容して、数が揃えば奴隷商人に売る為に街の近くまで送る。

 正規の奴隷商人だが、奴隷を安く買えるので自分達とも取引をしている。

 サランガの領主の三男が、この街の闇奴隷売買の元締めだとは、ラノベのお約束過ぎでしょう。

 三男坊の名前はエメス・コリアナちゃんだーってよ。

 奴隷商人の名前はミュシェル、このグループのリーダーはナジェックだそうだ。


 拉致した人達は、此処から半日程の所に有る洞窟に閉じ込めていて、常に2,3人が見張っていると喋った。

 取り合えず道案内に、一人元気そうな奴を穴から引きずり出し他の奴等は埋めたままにする。

 シャイニーとクルフには付き合ってもらい、捕らえられている者達の救出に向かった。

 

 元気な奴はミゲルと言ったので、首に土魔法で首輪を作ってプレゼント。

 離れて立たせると、いきなり首を締め付ける。


 「逃げればそいつが首を絞めてイチコロだよ。見張りの所に行ったらさっさと突き刺せ」


 とナイフを握らせてニヤリと笑う。悪魔の所業だよね。 

 ミゲルが躊躇っているので、首輪の存在を思い出させてあげると素直になった。

 最初から言われたとおりにやれよ! 馬鹿!

 諦めの悪い奴は嫌いだ。


 * * * * * * * *


 折角ミゲルにナイフを握らせたのに見張りがいないので、ミゲルの手足を拘束して転がしておく。

 洞窟の中が静かなのでそーっと忍び込むと、寝ていやがるのでそのまま土魔法で拘束する。


 子供が二人監禁されていたので、シャイニーに預けて中を調査。

 大した物は無し、少しの金と武器や宝石類に衣服だけなので放置する。

 拘束した奴の頭を蹴りとばして他の奴等は何処へ行ったのか尋問タイム、出かけたのが6人と、寝ていた3人で全てと判明した。

 

 クルフとシャイニーを呼んで相談だ、こ奴等を衛兵に渡せば金に成るが領主の三男坊には多分逃げられる。

 迂闊に追及すれば、こちらがお尋ね者になるおそれがあるけど、どうすると相談。

 此処に居る奴等だけを衛兵に引き渡す事にし、埋めた5人と道案内には死んでもらい後は知らない事にする。

 表にいる道案内の男を埋めて見なかった事にし、二人の子供を連れてサランガに戻る。


 筋書きは三人で狩りに出かけたが、おかしな男を見掛けた。

 盗賊らしいので後をつけていると見つかり、斬りかかって来たので追い払った。

 アジトらしき洞窟の中にいた奴を拘束して中を調べたら、子供が二人監禁されていた。

 大筋はこれで通す事にして街に戻り、衛兵に引き渡して事情を説明し今日はホテルに泊まることにした。

 

 三男坊のエメス・コリアナちゃんとミュシェルのお仕置きは、後日俺一人で遣ることにする。

 

 翌日再びサランガの森のゲートに行き、スタートゲートに跳ぶと本格的な魔法の練習だ。

 俺の教えは厳しいぞ、フッフッフッ。

 一月近く本格的な魔法の訓練でクルフもシャイニーもそこそこ使える様になった。

 シャイニーの防御結界も様になって来たのでサランガに戻ることにし、途中で狼2頭,銀狐1頭,鹿1頭,猪3頭を狩ってギルドで売る。

 

 夕暮れ時迄一緒にいたが、これから仲間を募って頑張ると意気込む二人に、たまにはギルドで共に呑もうと約束して別れた。

 

 別れて俺一人ぶらぶらと領主の館の近く迄行き、人気が無いのを確認して転移魔方陣を設置するとスタートゲートに跳ぶ

 深夜臨時の転移魔方陣に跳ぶと周囲の気配を探り、領主の館傍の地面に穴を開けて潜り込む。

 後は土竜と同じ前の土を後ろに移動させて前進だ、時々頭が地面の上にひょっこり出るのは御愛敬なのです。

 

 館の基礎迄来たので地面を探索する、地下室が沢山有るし人の気配がする地下室も有る・・・うへー、奴隷部屋だ。

 女子供だけだが・・・子供も含め全員女ときた、胡散臭いことこのうえなし。

 

 こりゃー、御領主様に挨拶せずに帰る不義理は許されないよなー。

 その前に地下室の住人に事情を聞く必要がある。

 突然石の壁に穴が空き、覆面姿の男が現れたので呆気に取られて皆さん静かです。

 

 「顔を見せられないけど、聞きたい事がある。皆奴隷として買われて来たのか、子供を奴隷には出来ない筈だがどうして子供迄居るの?」

 

 答えは簡単、想像通り領主ぐるみの誘拐ビジネスをやっていやがる。

 先ず総勢14名の被害者を、スタートゲートに運ぶと隣に大型のドームを造り収容する。

 衣類は用意出来ないが、食料はたっぷりとマジックバックに備蓄しているので提供する。

 ドームから出ると危険なので暫く此処で生活してもらう事になると説明し、皆を家に帰す用意をすると伝えて納得してもらう。

 

 朝までに遣ることが山ほど有るぞ、奴隷部屋に戻ると周囲の地下室を確認だ。

 食料庫,武器庫,倉庫,ガラクタの山に酒蔵と・・・有りましたよお宝の山が。

 先ずはお宝の山を全て、マジックバッグにポイポイしちゃっいまーす。ウフッ。

 次に酒蔵の酒は全て貰い♪ 最後に食料庫の中で、美味しそうな物を掻っ攫い、受領書代わりの置き手紙を一枚壁にペタンコ

 奴隷部屋の他に酒蔵とお宝部屋に食料庫と、4個所に臨時ゲートを付けてばいちゃー♪

 

 マジックバッグが重い(気分的に)思いっ切り掻っ攫ったからな。

 朝になれば、受領書代わりの王家に訴えると書いた紙に驚くだろう。

 朝になったらシャイニーとクルフに手伝ってもらい、女性や子供の衣服の調達だ。

 気楽な生活の筈が、中々シビアになっていますよ神様。

 奴隷商のミュシェルをどうしてくれようか思案中だが、良い考えが浮かばないのでシャイニー達に相談するか。


 * * * * * * * *


 早朝から冒険者ギルドでシャイニーとクルフを待ち、パーティー仲間募集の為に早く来ていたので朝食を食べながら相談する。

 クルフが長期滞在しているホテルに行き少し広い部屋を借りると、転移魔方陣を設置してスタートゲートに跳んだ。

 シャイニーに子供や女性達の服の寸法を確認してもらい、直ぐにホテルの臨時ゲートに戻る。

 

 二人には巻き込んで共犯にした迷惑料として、衣装代とは別に金貨10枚ずつを渡す。

 奴隷として捕まっていた人達には、それぞれの家に帰ってもらうが子供は帰す女性に託すしかない。

 領主様のお宝から迷惑料をたっぷり支払い、それぞれの親元に帰そう。

 送り返す仕事はクルフとシャイニーに頼み、俺からの護衛依頼とすることにした。

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