第6話 吠え猿の群れ
オークとコンニチワをしてからは、臨時でも変形の三角錐岩を造り中を空洞にして転移魔方陣を設置している。
岩は知らぬ人が見れば変形の三角錐だが、見る人が見ればマッターホルンに似ている。
俺的には、仮設の転移魔方陣の設置場所が一目で判る優れものだ。
見知らぬ花の群生地に飛び交う蜂が蜜を集めているのを見て、蜂の脚に綿毛を付けて離す。
何度も繰り返して漸く見つけたのは、樹の洞に群れる大量の蜂。
夜になり蜂達が静まりかえる深夜に土魔法で洞を塞ぐ。
塞いだ巣を毒草で燻して蜂を殺し、一日おいて塞いだ土を取り払い巣の取り出しだ。
蜜の詰まった巣を取り出し、ドームの中で蜜を搾り取るが、蜜の甘い香りが堪らない。
土魔法で作った、直径30cm高さ50cmの壺三個の収穫に大満足。
途中熊公が横取りに来たが、ドームに入れず煩く騒ぐので、静かにさせてマジックバックに入ってもらった。
良い香りの香草の群生地に、蜥蜴の巣など面白いものが沢山有ったが、襲われない限り殺さずに済ます。
* * * * * * * *
サランガの街に戻ったのは一月以上経ってからで、冒険者ギルドに顔を出すと、ヤハザンさんが一人の白狼人を連れてきてギルマスだと紹介した。
ドルーザと名乗ったギルマスは、頼みが有るが聞いてくれるかといきなり言い出した。
「以前、お前をこの街まで案内したパーティーが帰って来ないので、捜索を頼みたい」
「何処に居るのかも判らない相手を探せと」
「彼等は、お前と出会った周辺で活動するパーティーだ。熟知している場所でなら安心して活動出来るからな。その彼等が帰らないので、異変が起きていないか確認も含めて頼みたい。勿論断っても何等不利益には為らない」
「いいだろう行くよ、オルガキ達には世話になったからな」
そのまま冒険者ギルドを出て森に向かう。
俺にはオルガキ達に出会える要素が有る。
彼等と出会って最初のキャンプ地に転移魔方陣を設置しておいたのだ。
万が一オルガキ達に襲われたらスタートゲートに跳び、安全に元の場所に戻るための物だ。
それが今回役に立つ、サランガの森ゲートに着くとそのままオルガキ達とキャンプを張った場所に跳ぶ。
風に乗って微かに血の臭いがし、嫌な予感がするが日没迄後少しだ。
微かな臭いを辿ると、茨の茂みの中にクルフとシャイニーが潜んでいた。
二人の話では、いきなり吠え猿の群れに襲われたらしい。
オルガキは最初の一撃で首を噛まれて死に、ヤーナンとは離れ離れになった直後に、悲鳴が聞こえたので多分無事では無いだろと。
棘だらけの茂みは密集していて、猿は藪の中に潜む相手を攻撃をして来ないので助かったと話した。
吠え猿は威嚇か死の間際に仲間を呼ぶために吠えるが、普段は静かに行動するし音もたてないので、察知し難い曲者なのだと言った。
ドームを造って二人を収容して周辺を調べる、オルガキのロングソードが見つかるがヤーナンは不明。
さて怪我人をどうするか、狐人のクルフも猫人のシャイニーも口が堅そうなので助けるか。
ドームのなかで生活魔法の灯を強くして二人の顔を見る。
「オルガキとヤーナンの捜索は明日一日だけするが、これから見聞きする事は口外しないと誓って欲しい。喋っても二人の不利には為らないが、俺がサランガの街に居ずらくなるのでな」
「助けてもらったのだから、喋ら無いよ」
「もう一つ、暫く街に帰れ無くなるが良いか」
「意味が判らないんだが? 二人の生死を確認したら街に帰るだけだろう」
「そりゃそうだが、結果を見てから判断してくれ」
二人の怪我を確認して軽傷のシャイニーの傷を〈綺麗に治ります様に・・・〉と願って魔力を流した。
初めての治癒魔法だが、怪我の後は何処にも見当たらない。
神様に感謝だね。
次は重症のクルフだ、良く生きてたなって傷だが気丈にも弱さを見せない。
鑑定でも胸と腕の傷だけだが、腕は骨が折れていて集中して骨の復元と胸の傷の回復をイメージする。
二人とも呆気に取られて自分の傷の場所を見ているが、理解が追いつかない様子だ。
「俺は土魔法と雷撃魔法以外に、治癒魔法と転移魔方陣を設置出来るんだ。迂闊な奴に知られると、厄介な事に成るので秘密にしているのだ」
本来俺が此処まで来るのは四日後の筈なので、すぐにサランガに帰ると計算が合わなくなるのだと説明する。
傷が治ったので沢山食べて体力を回復させなければならないが、興奮しているので酒を呑ませて休ませる。
二人とも冒険者だけあり朝早くに目覚め、行動の準備を素早く済ませる。
俺も寝ていられないので一緒に食事を済ませると、周辺の捜索に向かう。
先ずオルガキのロングソードを見つけた周辺を探して、大量の血の後と衣服の切れ端とボロボロの鎧等が散乱している場所を見つけた。
ヤーナンの悲鳴が聞こえた方角も、似たような惨状で壊れた弓や胸当て靴等が血まみれで見つかった。
ヤーナンの遺品を集めている時にゾワリとした感覚、周囲を見渡し彼等が襲われたのは猿だと思い出して上を見る。
「猿だ!」
俺の警告に即座に反応する二人、ドームを造ると二人に中に入れと怒鳴る。
ドームは二人との中間で入口は彼等の方だ、防御結界を張りドームに駆けよる。
二人は無事にドームに飛び込み入口で防戦している。
俺は防御結界に雷撃魔法を纏って入口に突撃する。
吠え猿の断末魔の〈ホギャーアァァァ〉って煩いんだよてめぇ!!!
中に入らず周囲の木々を見渡すと、無数の猿の群れだ。
オルガキとヤーナンの仇は取らせてもらうぞ、猿共!
ドームの入口を塞ぐと雷撃魔法を周辺に向けて無差別に撃ち出す、目の広い巨大な網をイメージしてだ。
二度目は俺を中心に猿達を包み込む様にイメージし、最大の雷撃魔法をお見舞いする。
ちょっと疲れたけど、周囲は黒焦げの猿が点々と落ちている。
塞いでいたドームの入口を開け「終ったぞ」と伝えるが足ががくがくだよ。
こんな危機一髪は初めてで、オークより怖い。
静かに、殺気も漏らさずに襲って来る奴の恐ろしさを実感した。
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