第2話 仙臺駅からの東京行き新幹線
姉の
南方新島行きを特別な公的事由として、
「恒星・惑星と地球の章」では、従前から確立されている天文学に基づき、各天体について学ぶ。教師にとっては人生の大半を過ごしてきた母なる地球についてとうとうと語る機会となる。とはいえ、生徒たちは、これからの人生を、内国が丸ごと転移させられたテトラビブロスフィアにおいて歩んでいくこととなる。文部省は、大学の天文学者や地質学者たちが、この5年の間にテトラビブロスフィアについて調べ上げたことを生徒たちに伝える「テトラビブロスフィアの章」を重視していた。
その章の冒頭は、内国の現代科学では生み出すことができない膨大なエネルギーが必要となるテトラビブロスフィアの形成こそ説明がつかないものの、テトラビブロスフィアの作りについては、科学的観測手段によりさまざまなことが分かってきている、と始まる。
そして、次のページには見開きで、テトラビブロスフィアの想像断面図が描かれている。真ん中に太陽が、そして、その知覚に二重惑星となった水星と月が小さく描かれている。それらを全球的に覆うのがテトラビブロスフィアの球体内殻表層にあるベロネフィアである。細い糸のように描かられたベロネフィアには拡大図があり、そこに内国日本が隣国のある朝鮮半島や中国大陸と共に描かれている。そして、テトラビブロスフィアの球体外殻には、その組成とと成り立ちは未だ解明途上であると注記された上で、黄土色の表面にルッフィという呼び名が付されている。
今や優等生の
それでも
そして、
ただ、芳佳は末娘の受験を陰ながら応援する気はあった。昨年の入試では、一般科目でも小論文でも、テトラビブロスフィアについて聞かれることはなかった。テトラビブロスフィアへの転移事象によってトラウマを負った人たちが報じられる中、文部省が入試においてテトラビブロスフィアについての出題をすることを行わないよう、通達を出していたのだった。
今年は文部省がそうした通達を出さないことを、霞が関勤めの芳佳は知っていた。芳佳は、
大学を2年前に出たばかりの
北方州の伊達市で育った
そんな経緯で剣術の先生としての
テトラビブロスティアなどという舌を噛みそうな名前を連呼しては、
「いいかな、
と言った。
そして、右手の細く長い人差指と親指とで、桃の皮を細くはいだ。熟れた桃の実の一部が皮について剥がれた。
「こんな感じで皮と実の一部が剥がれて、このテトラなんとかという不思議な天体に張り付いたんだよ。僕らから見ると地中にあたる桃の実の方に、ルブリッフィと呼ばれる不思議な
と言った
「弐華中の入試でテトラビブロスフィアについての小論文を書くことになったら、これだけでオーケーだよ。テトラビブロスフィアの成り立ちは桃の皮で説明できると聞きましたってね。字数が余ったら、上杉家にとって大事な花でもある桃のことを書いてもいいかもね。」
そうして、ちょっと休憩しようと言って、
桃の名産地である福島県伊達郡あたりは、江戸の世には上杉家の所領であった。同じく所領であった仙臺県加美郡の林檎と併せ、幕府が開国した後は、内国の輸出商品として海外にも名が通ったといった事柄は教科書にも載っていることである。一人部屋に残された
数分の後、
あろうことか、親族とはいえ異性の先生のと前での軽口に、
その後、数回に渡り、
が、内殻が受ける太陽熱が地中のマントル層に浸透し、液状体と考えられるリッフィがバランス良く、外宇宙に放射しているという話を半ば神話のように受け止めつつも、学ぶこと研究することの楽しさを、
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