第5話 UFO

「はぁ〜……まったく」

長いため息から始まった。

正幸まさゆきは学校の帰り道で考え事をしていた。

しずかの言葉に迷っていたのだ。

怪異とやらに興味はあるのだが、得体の知れないものに関わる勇気は無かった。

それも仕方ない、所詮しょせんはただの学生なのだから。

しかししずかが最後に言った事、それがどうしても気になっていた。

「俺の安全のためって、どういう事だ?」

考えながら歩いていると、空からまばゆい光に照らされた。

光から目をかばいながら、不思議な光をなんとか見ようとする。

するとそこには、UFOの様な物が浮いていた。

目の前の物体に言葉も出ず、その場に立ち尽くしていた。

さらに光は強くなり、目で見る事が出来ないほどになった。

しばらくして、光が弱まった。 

ゆっくりと目を開け、周りを見る。

「……どこだここ」

そこは正幸まさゆきが知る場所ではなかった。

頑丈がんじょうそうな壁に囲まれた何も無い空間。

目の前に扉らしき物を見つけたが、何をしても開かない。

誘拐ゆうかい…?いやでも、誰がどうやって…」

必死に考えるが、突然の出来事に頭が回らず、何も思いつかなかった。

すると背後から、何か大きなものが落ちる音がした。

振り返ると、ホルスタインの牛がそこに寝そべっていた。

「牛?」

「っつ!あ〜〜!痛えなちくしょう!」

牛がしゃべりだした。

「は!?は…え?」

さらに牛は、その場から立ち上がった。

「ん?なんだよ、お前も捕まってたのか」

自分を知る牛に、正幸まさゆきはその正体を確かめようと近寄った。

牛の顔を見ると、それは紛れもなくしずかだった。

「なっ!?お前、なんだその格好!」

本物の牛と間違えるほどのクオリティのぬいぐるみに、それを着ている静に、正幸は驚いた。

同時に、知り合いに会えてほっとしていた。

「UFOをおびき寄せる罠だよ」

「罠?」

「UFOは家畜をさらうんだよ。知らねぇのか」

「そんなの知るか!!」

今の声に反応したのか、大きな足音が聞こえてきた。何者かが向かって来ている。

部屋の扉が開いて、図体ずうたいのでかいのが入ってきた。

「うるせぇぞ!黙ってろ!」

そいつは三つ目で、肌の色は青白かった。

明らかに人間ではなかった。

「お、おい!まさかこいつって、宇宙人…?」

「そりゃ、UFOに乗ってるからな」

「やべぇぇ!!」

「うるせえって言ってるだろ!!っていうか…人間は一人しか捕まえてねぇはずなんだが…」

牛の変装は宇宙人にも見破れなかったようだ。

「今だ!すきあり!」

しずかがダッシュで詰め寄り、宇宙人をり倒した。

「うおおおい!!何やってんだ!!」

「見たか、私のドロップキック!」

しずかりは綺麗きれいに入った。しかし宇宙人には、大したダメージも無く、立ち上がった。

「てめぇ、これでもくらえ!」

銃の様な物を取り出し、しずかに向けて引き金を引いた。

銃の先からビームが発せられ、しずかの体を電撃が襲った。

「し…静ーー!!」

「ふぅ…危なかった。やるな、私の髪をアフロにするとは…」

大した傷は無く、髪がアフロになっただけだった。

「な…なんだとぉ!?もう一発!」

再び電撃をくらった。

「やるじゃねぇか、眉毛がアフロになっちまったぜ」

「くそっ!もう一発!」

「まつげがアフロになっちまった」

「ええい!もう一発…!」

「もういいわ!!」

長いやり取りに、正幸が我慢がまんを切らして宇宙人をり倒した。

今の一撃で宇宙人は気絶した。

「お〜!さすがは私が見込んだツッコミ役。ナイスツッコミ!」

「ツッコミ役ってそういうこと!?」

「私も負けてられねぇ!このまま、宇宙人のボスをぶっ飛ばしてやるぜ!!」

しずかが一人で部屋を飛び出し、正幸まさゆきが慌ててあとを追う。

宇宙人だらけのUFOから、二人は脱出を目指す。






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