第4話 その名はHERO!

朝、正幸まさゆきの部屋の窓から太陽の光が中に照らされる。

「オーイ!起きろ!」

「んわ?だれ…って!なんでお前が!?」

寝起きの正幸まさゆきそばにはしずかが立っていた。

「なにって、起こしに来たんだよ。今日も学校だぞ」

「それは知ってるけどなんでお前が?」

「そりゃあお前!自分の相棒を起こしにくるのは当然だろ!」

「相棒じゃねぇし…っていうか今何時だ?」

机の上に置かれた時計に目をやると、時計の針は午前八時三十分を指していた。

「やべぇ!!もうこんな時間じゃねぇか!なんでお前はそんな余裕そうなんだよ!?」

「いや〜!昨日とか学校すら行ってねぇし、遅刻ぐらい別になぁ〜」

「そういえばそうだったな!…って!話してる場合じゃねぇ!!」

正幸まさゆきはベッドからね起き、大急ぎで支度したくを始めた。

顔を洗い歯をみがき、着替えを済ませて口に食パンをくわえてくついた。

「いってきますー!!」

大急ぎで家を出た正幸は、腕時計に目をやった。

「八時四十分!ホームルームが始まるまで十分!学校まで走っても十分以上!間に合わねぇ!」

「おい相棒!こっちだ!」

しずかが路地裏を指差し、正幸まさゆきを引っ張って入って行った。

「おい!遠回りしている場合じゃ…!」

無理矢理引っ張られながら路地裏を抜けると、正幸まさゆきの目の前には、何故か学校があった。

「………え?」

突然の出来事に正幸まさゆきほうけていた。

「なにしてんだ!早く行こうぜ!」

正幸まさゆきを置いて、しずかは一人で先に学校へと入って行った。

一人ぽつんと残された正幸まさゆきは、自分のほおを強く引っ張った。

「……!夢じゃねぇ…どうなってんだいったい?」

強い疑念ぎねんを持ちながらも、正幸まさゆきは学校へと入って行った。


放課後。

正幸まさゆきは教室で宙をながめていた。

「おいどうした?エッチな事でも考えてんのか?」

しずかが目の前に現れ、正幸まさゆきの顔の前で手を振った。

「いや…今朝のあれの事なんだが…」

「あれか…それはこれから教えてやるよ。まずは、私達の部室に行くぞ」

「部室…慈善活動に部室は必要か?」

「いいから行くぞ!」

正幸まさゆきを引っ張りながら、学校の四階へと上がって行った。

四階へと上がった二人は、目の前の部屋に入った。

「着いたぞ!ここが私達の部室だ!!」

部屋の中は机と椅子しかなく、寂しげな部屋であった。

そんな部屋のすみに、一人の女子が椅子いすに座って本を読んでいた。

髪は明るい茶色で、長い。

身長は小さく、百五十センチほど。

表情は暗く、部屋に入ってきた二人に対しても、その表情は変わらなかった。

「……その人が、新入部員?」

「そうだ!ユッキーと呼べよ」

「ちょっと待て。ユッキーて何だ?」

正幸まさゆきだからユッキーだろ」

「やめろ」

正幸まさゆきは改めて彼女に自己紹介をする。

「俺は一年の江原正幸えはらまさゆき。よろしく」

「一年の塩澤春香しおざわはるか。こちらこそよろしく」

挨拶を済ますと、春香はるかは再び本を読み始めた。

「自己紹介も済んだし、活動を始めるか」

「その前に、今朝のあれはなんだよ。突然学校の前に出たやつ」

春香はるかが本を読むのを止めて、しずかに視線を向けた。

「……説明してないの?」

「今からするところだ問題ない!」

「はぁ…そう…」

春香はるかの反応に、正幸まさゆきはやや不安そうに二人を見る。

「いいかユッキー!この部の本当の名前は、“チームHERO”だ!」

「帰ってもいいか」

「さてはお前、私がおふざけで言っていると思っているな?」

「うん」

「いいか?私達チームHEROは、この街のありとあらゆる不思議な現象を解決する事を目的とした、対特殊怪異隊たいとくしゅかいいたいだ!」

「不思議……まさか今朝の登校中、いきなり学校が目の前にあったのも!?」

「そういうこと」

「じゃあなんであれを放置してるんだ?」

「便利だし〜、実害はないし〜」

「仕事しろや!」

「放置してるのは他にも理由があってな、他にも不思議な現象が起こっていて、それの対処に忙しいからなんだよ」

しかしそんな話を聞いても、正幸まさゆき眉間みけんにシワを寄せ、しずかをじろじろ見ている。信じさせるにはまだ至らないようだ。

「だったらあれだ!春香はるかには特殊な力があってな、守護霊みたいなのを使って幽霊退治できるんだからな!」

「そうなの?」 

「ええ…まぁね」

「見せてやってくれ春香、お前のもう一人の自分を!」

「そういうんじゃないから」

春香はるかかばんから弁当箱を取り出し、いなり寿司を出した。

するといなり寿司の一つが突如とつじょ消え、春香はるか椅子いすに座ったまま宙に浮かびだした。

「どうよ!嘘じゃねぇだろ」

「まじか……でもなんで俺をそんなに勧誘するんだ?」

「お前にも、特別な役割があってな…」

「それは?」

「ツッコミ役」

「そんなことで俺を怪異かいいとかに巻き込もうとするんじゃねぇ!」

正幸まさゆきは怒って帰ろうとする。

「待てよ」

「何も聞くことはねぇよ」

「お前の安全の為に言っておく、このチームに入れ」

真剣な様子でしずかは言うが、それを無視して帰って行った。


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