第二章~彼氏彼女の事情~⑧
新入生のカレンの歓迎会の意味もこめて、彼女のリクエストに応じた結果、昼食はランチバイキングを提供している店に入ることになった。
春休み中ではあるものの、正午前に入店したこともあり、店内はさほど混んでおらず、四人はすぐに席に案内された。シッティング・ビュッフェ形式ということで、テンションの上がる女子二名に先に料理を取りに行ってもらい、秀明と昭聞は、荷物番として座席に残っている。
「女子は、ビュッフェ形式とか好きよな〜。オレは、どうもこのスタイルは、落ち着かんから苦手やわ」
と、昭聞がつぶやき、
「まぁ、たまにはこういうところで、食事をするのもイイやん! 男同士で昼メシ食べる時には、まず選択肢に上がらへんし……でも、ブンちゃんが、バイキング・スタイルが苦手やとは意外やな」
秀明が応じると、友人は、ボヤくように答えた。
「盛り付けとか、一枚の皿に収まるバランスとか考えると、なかなか決めるのが大変でな〜」
「そんなん、自分が食べたいモノ取ってきたらエエやん! 一応、この形式にもサラダとか前菜を最初に取るとかのマナーはあるって聞くけど……」
「けど、女子の先輩とかと、こういう店に食べに来てさ……自分が取ってきた料理に、『もう少し、バランスとか盛り付けとか考えたほうがイイよ〜』とか言われてみ? めっちゃショックやで……」
「そんな経験があったんや!? それ、具体的に誰に言われたか、容易に想像できるんやけど……まぁ、今日は、その先輩も居てないし、リラックスして楽しもう?」
秀明が前向きな提案をしたところで、愛理沙とカレンが戻ってきた。
二人の取り皿には、サラダメニューを中心に前菜がバランス良く盛り付けられている。
「お待たせしました〜。センパイ達も料理を取りに行って来てくださ〜い」
カレンの言葉に、
「あぁ、行ってくるわ。時間が掛かるかも知らんから、先に食べ始めててイイで」
と、昭聞がことわりを入れて、席を立つ。
一方、昭聞とともに、席を離れた秀明は、ドリンクだけを取り、すぐに愛理沙とカレンのもとに戻ってきた。
「ブンちゃんは、見栄えする盛り付けに時間が掛かるみたいやから、先に始めようか?」
しかし、秀明の提案に、カレンは、
「いえ、あきセンパイが戻られるまで、待たせてもらおうと思います」
と、キッパリと言い切った。
「じゃあ、私もそうするわ〜」
そう言って、愛理沙は、コップの水に口をつける。
そして、昭聞が、しばらく席に戻ってこないことを確信したカレンは、四人掛けのテーブルの向かいに座る二人の様子をうかがいつつ、上級生に質問を投げつける。
「あの〜、さっきから、ずいぶん仲が良さそうに見えるんですけど、朝日奈センパイと有間センパイは付き合ってるんですか?」
瞬間、愛理沙は口につけていた水を一気に飲み込んでしまい、呼吸機能に支障をきたした。
隣に座る秀明は、自分が予想した通りとはいえ、カレンの火の玉ストレートの質問に、驚きつつ、呆れながら、微苦笑を浮かべて返答する。
「鈴木さん、いきなりの直球勝負やな〜。オレが、朝日奈さんと釣り合うように見える? 急に有り得へんこと聞くから、朝日奈さんもムセてはるやんか」
そして、続けて語る
「まぁ、自分に限らず、ウチの学校、少なくとも単位制の同学年には、朝日奈さんのお眼鏡にかなう男子は居てないと思うけどなぁ。どうやろ、朝日奈さん?」
という秀明のアシストに、ようやく、態勢を立て直した愛理沙も、言葉を続ける。
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