第二章~彼氏彼女の事情~④
「まずは、番組のタイトルコール。放送用語で、『どなり』って言うけど。秀明が、稲野高校放送局の略称『IBC』と叫ぶから、朝日奈さんは、『シネマハウスへようこそ』のタイトルを言ってくれる?」
昭聞のリクエストに、秀明は親指を上げる余裕のサムズアップで応え、愛理沙も小さく気合を入れる様にうなずき、人差し指と親指でOKサインを送る。
「じゃあ、初回やし、番組開始のタイミングだけに絞ったリハをしてみよう!」
秀明はうなずき、愛理沙は、「は〜い」と答えて、昭聞の次の言葉を待つ。
「朝日奈さんのタイトルコールが終わると同時に、オープニング曲が流れるから、秀明はいつもの様にオープニングのトークを始めてくれ。朝日奈さんはリラックスして話してみて!じゃあ、やってみようか?」
昭聞は、そう言って、『キュー』の準備に入る。
「本番十秒前! 九・八・七・六・五秒前……」
四・三・二・一…………。
♤「IBC!」
☆「『シネマハウスへようこそ!』」
BGM:ロバート・パーマー『Addicted to Love』
♤「みなさん、こんにちは! 今年度も放送部の映画情報番組『シネマハウスへようこそ』の進行を務めさせていただきます。アリマヒデアキです」
☆「みなさん、こんにちは。今日から、この番組を担当することになりました朝日奈愛理沙です!」
♤「この番組では、最新の映画情報はもちろん、オススメのビデオ作品などを紹介する番組として、毎週金曜日のお昼休みに放送しています。そして、いま、自己紹介にあった様に、四月からの新メンバーとして、朝日奈さんが加わってくれることになりました!」
☆「はい! 私は、三月まで番組に出演していた吉野さんほど、映画について詳しい訳じゃないんですケド……楽しんで聞いてもらえる番組にできたらイイな、と思っているので、これからヨロシクお願いいします」
♤「……と言うわけで、今日から新メンバーでお送りすることになった、『シネマハウスへようこそ』新学期の第一回目は、春休みに話題になった、あのディズニー・アニメを取り上げようと思います!」
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「はい、OK! イイ感じやな! 朝日奈さんも、オープニングで話す内容を考えてくれてたんかな? ありがとう」
昭聞の声に、二人は安堵した様に、「「フゥ〜」」と、息を吐き出す。
特に、愛理沙は、一気に張りつめていたモノがとけた様で、
「はぁ〜、練習ってわかってても、やっぱり、最初は緊張するな〜」
と、声を漏らす。
「朝日奈さん、普通に話せてたと思うけど、もうちょっとリハーサルした方が良い?」
秀明が、ブースの方に向かってたずねると、昭聞は、ニヤリと笑って、前年度から番組を担当している話し手に視線を送る。
「こっちで聞いてる分には、問題なかったと思うし、『慣れ』の問題かなって思うけど。あと、緊張をほぐすのは、相方の役目やからな」
「それは、責任重大やな〜」
秀明が、笑いながら応えると、緊張がとけて、笑顔が戻った愛理沙も、会話に加わる。
「頼りにしてるで、センセイ!」
「朝日奈さんなら、普段オレと話してくれるように会話してくれたら、大丈夫やと思うで」
秀明が返答したところで、昭聞が
「よし! 思ったとおり、リハも順調に進んでるな。午後からは、朝日奈さんの声でジングルを収録させてもらおうかな? じゃあ、キリも良いし、ちょっと早いけど、つかしんに昼メシでも食べに行こか?」
と、提案し、二人も「そやね〜」と了承する。そこで、秀明は、
「そういえば、音楽番組の方も、出演者が決まったって言ってたけど、リハーサルとかしなくて大丈夫なん? よかったら、どんなヒトが担当するのか、ご飯食べながら聞かせてや」
前回の集合時以来、気になっていたことをたずねてみた。
「あぁ、まだ、二人には話してなかったっけ? 『ミュジパラ』に出演するのは……」
昭聞が、そこまで言ったところで、
コンコン
唐突に放送部のドアが、ノックされた。
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