メニュー2:フーチャンプルー

 先日沖縄に行ってまいりまして。

 10年前、家族で沖縄旅行に行った際、父が大変御満悦でした。

 「また行きたいなぁ」と言いながら行けずじまいで3年前亡くなりました。


 ミッション:父の遺骨のかけらを沖縄の海へ送れ!


 そのミッションを背に、一人沖縄へ。

 最初の日は移動のみです。

 ホテルでだらだら休んだ後国際通りへ。

 沖縄といったら珍しい料理が多いからねー。

 なに食べよう。泡盛も飲まなきゃね。


 ここは地元の人しか行かないようなとこに……と思ったけど、結局観光客狙いのお店に。

 沖縄民謡が聴けるという酒場へ向かいました。

 頼んだのはフーチャンプルーです。ようするに麩の炒め物ね。


 こっちの麩はでかい!「くるま麩」というそうです。

 この麩を水(または出汁)で戻したあと、溶き卵をしっかりなじませて作ります。

 ふわふわの卵焼きが入ってる感じになります。

 御家庭でも簡単に作れますが、プロの手によるものはまた違うんだよねー。


うまーーーーー!!!!!


 私、麩って好きなんですよね。その麩がでっかくて、しかもたっぷり入っててもうもう、私、沖縄県民になります!!!ってくらい。


 これだよ、これ……。


 10年前食べた後、一回家で再現したことあるのですが、私の住んでる地域には小さい麩しかない。

 悪くはないが正解ではない、という感じの仕上がりでした。

 実は今回は一人のみではありません。


 ビールジョッキの父の遺骨が入ったケースをテーブルに置いていました。

 つまり、父と飲んでます。


 他にもお料理を頼んでまったりしていたら沖縄民謡始まりました~。

 独特の音階がいいね!

 いろんな演奏や踊りを披露してくださって、お歌も。

 父が大好きだった「花」という曲をやってくださいました。

 あまりの偶然にちょっとうるっとくる私。

 とうちゃん、聴いてるかい?とうちゃんの好きな曲だよ。

 もう一度来たい、って言ってた沖縄にいるんだよ。


 その後、偶然沖縄に来ていた友人とも合流し、一人酒から宴会へ。

 沖縄の夜は更けていったのでした。


 翌日はタクシーレンタルして沖縄神話ゆかりの地めぐり。

 私、神話が好きなのです。


 斎場御嶽(せーふぁうたき)などなどいろいろ回って、いよいよミッション開始!

 母の要望で10年前沖縄で撮った家族写真を片手に遺骨を海へ。

 波に乗って陸に上がってしまっては切ないので投げました。とうちゃん、ごめん。

 思えばあの沖縄旅行が最後の家族旅行だったんですよね。


 私は基本的には輪廻転生とか信じていません。

 食べたものが「私」というものを形作り、死んだら火葬されて煙になって空気や大地に溶け込み、また違う生き物の栄養になっていくと思っています。

 私という現象は、原子と分子が織り成す生命の環の一環にすぎないのです。

 海に溶け込んでいった父は、少しずつ分解され、違うものへと姿を変えることでしょう。

 それは化学的事実であって、輪廻ではないのです。


 今、父の骨がどうなったか、私には分かりません。でも、姿を変えた父にまた会えるといいな、と思っています。



初出:2016.08.15


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