25.本当の誠意
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=真夜中の俺ラジオ 特別回=
「はいどうも、俺です。
今日は俺のことを一番に応援してくれて、信じてくれた、一人だけに贈る特別回です!
まぁ、内容は謝罪というか感謝というか―――そんな感じ。
全世界に向けて発信!…ってのは今の俺じゃ無理だから、こういうカタチになりました。
誰かに向けて喋るのはこれが初めてで……そんで、もしかしたら最後になるかもしれない。
これが俺のラジオの最終回!…になるかどうかは俺にもまだ分からない。
今回はいつもの俺……学校での素の状態で喋るから、ぶっちゃけ凄いつまんないと思う。
けど、最後になるかもしれないから、悔いがないように喋ろうと思います。
勝手に友達やめといて、今更何言ってんだこの馬鹿?と思うかもしれないけど。…かも、っていうかその通りなんだけど―――ちょっとだけ待って!
俺が君に対して思ったことや感じたことを、隠し事無く赤裸々に、本心をぶっちゃけたいと思ってます。
それから、どうしても伝えたいことがあるので……出来れば、最後までお付き合い下さい。」
※※※
「…こうやってマイクに向かって喋ることなんて、もう無いと思ってた。
だって、自分の黒歴史がネット上で公開されてるなんて、夢にも思ってなかったし。それを当人がつい最近まで知らなかったとか、今考えてもワケ分からん状況で。
そのことで妹を問い詰めたら逆ギレするわ、取っ組み合いの喧嘩になったら返り討ちにされるわで、ホントに散々だった。
だから、ラジオの存在を知った時、スッパリとトーク練習はやめることにしました。正直な話、今でもネット上から早く消したいなと思ったりします。
それでも、このラジオのおかげで得たものも確かにあって。
俺のどうしようもないトークに付き合ってくれる人が居て、感想をくれる人が居て。
それで……友達になってくれた君が居て。
そういう全部をひっくるめて、ただ消したいだけの過去じゃなくなってました。
……いやでも、やっぱ動画だけはちょっと消したいなぁ。」
※※※
「俺はもう長いこと友達が居なかったから―――君が友達になりましょう!って言ってくれた時、マジで泣きそうなほど嬉しかった。
っていうか、その前に泣いてたっけ。鼻水垂らして、みっともなく…。自分でも泣くとは思ってなかったよ…見苦しくてゴメン。
俺は…君が友達だと言ってくれた時から、ずっと、ずっと、疑ってた。
たちの悪いドッキリなんじゃないか、とか。
何か裏があるんだろ、とか。
俺のことを影で嗤ってるんじゃないか、って……。
でも、君と話しているうちによく分からなくなりました。
こんな、まともにコミュニケーションとれない俺なんかと話してくれるし。
君は嘘をつくような人じゃないと思えたから。
本当はどうなんだろう?
結局、考えたところで分からなかったけど。
なんせ対人スキル低いからさ、俺。
そんなのが分かるなら、ボッチなんてやってないよな……。
毎日君と話して、楽しいと感じたのと同じくらい、怖いと思ってました。
この時間が嘘だったらどうしよう。
無様に踊らされてるだけかも。
そんな事を…。
臆病で卑屈な俺は、勝手に疑心暗鬼になって。
……最後まで君を信じきることが出来ませんでした。
そんな状態が堪えられなくて、早く解放されたくて……。
だから、“君のため”と理由を付けて距離をとろうとしました。
俺は自分のことばっかりで……それがどれだけ君を傷つける事になるのか、想像すらしませんでした。
本当に…ごめんなさい。
君が俺を信じてくれたように、俺が君をちゃんと信じられたなら。
たったそれだけ。そんな友達なら当たり前のことさえ出来ていたら。
君の気持ちを踏みにじって、傷付けずに済んだのに……。
本当に、本当に、ごめんなさい。
もっと言葉を尽くして謝りたいんだけど、俺の語彙力じゃ”ごめんなさい”しか出てこなくて…。
こんな事になるなら、もっと国語の勉強しておけばよかった。
あ、”すみません”と”申し訳ありません”があったか…。
―――でも、謝る時に俺の中で一番気持ちが込もるのが”ごめんなさい”みたい。
だから、馬鹿の一つ覚えみたいになるけど、そこは勘弁して下さい。
期待を裏切って、ごめんなさい。
気持ちに気付けなくて、ごめんなさい。
最後まで信じることが出来なくて、ごめんなさい。
友達だと、胸を張って言えなくて、ごめんなさい。
一方的に友達を解消するようなことを言って、ごめんなさい。
悲しませて、泣かせてしまって、ごめんなさい。
俺が大馬鹿野郎でした……本当に、ごめんなさい。
※※※
それから。
謝罪と同じくらい―――それよりもっと大きい感謝を、君に贈りたいと思います。
顔も名前も知らない俺を応援してくれて、ありがとう。
俺に友達が出来るはずだって信じてくれて、ありがとう。
俺を見つけてくれて、ありがとう。
勇気を出して話しかけてくれて、ありがとう。
友達になってくれて、2年前からの約束を守ってくれて、本当に、ありがとう。
気持ちを伝えてくれて、ありがとう。
放課後の会話練習に付き合ってくれて、ありがとう。
かばってくれて、ありがとう。
こんな事になっても心配してくれて、ありがとう。
君が話しかけてくれるたびに、俺はガチガチに緊張してろくに返事も出来なかったけど…スゲェ嬉しかったんだ。
人と話すことがこんな楽しいことなんだって思い出させてくれて、ありがとう。
君がしてくれたことは何一つ間違ってなかった。
ただ俺が、ビビって目を瞑っていたからちゃんと受け取れなかっただけで…。
道を示してもらっていたのに、真っ直ぐ走れないポンコツな俺のせいで、全部台無しにしてしまいました。
それでも、君がずっとそばに居て、手を差し伸べていてくれたことを、俺は絶対に忘れません。
―――本当に、ありがとうございました!
あと……ここまで辛抱強く聴いてくれて、ありがとう。
※※※
最期に…………物凄い図々しいお願いがあります。
今更こんなことを言う資格ないのは分かってるんだけど。
けど―――だけど。
今言わなかったら絶対後悔するのが目に見えてるので、全部出しきります。
俺を追い越していった君は、人生の大先輩で……俺にとって憧れの存在になりました。
なので、今度は俺が君に追いつけるように、もう一度踏み出してみようと思います。
”目標”が、出来ました。
他の人からしたら当たり前で、何の価値もない事かもしれないけど…。
それでも、絶対に叶えようと思っている目標が。
もう一度だけ……本当に、これで終いです。
―――俺に、最期のチャンスをくれませんか?」
♪♫♬
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