13.黒歴史を聴いてみよう
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=真夜中の俺ラジオ 第三回=
「あ、やべ!クシャミ出そう…」
「録音開始して第一声がそれなの!?」
「はっ…はっ……はいどうも、俺です」
「クシャミはしねーのかよッ!」
「んー、なんか止まっちゃった」
「あるある」
「一回クシャミした後、続けて二回目が出そうで出ない時のあのモヤモヤ感は異常」
「あるある」
「クシャミすると誰かに噂されてるとかいう俗説があるけど、今クシャミが止まったということは……」
「あっ…」
「察するなよ!―――違うって、こんな時間だからだって!」
「自分を騙すのはやめようぜ」
「人間諦めが肝心よ?」
「そうそう。どうせ噂されてたとしても、俺の悪ぐ―――
「シャラップ!」
「―――ヘブシッ!!」
「結局すんのかよ!」
「―――はっ…………うん、やっぱ続けて二回目が出そうで出ないこのモヤモヤ感は異常」
「あるある」
※※※
「昨日までのあらすじ」
「友達が出来ないよ!―――以上!」
「簡潔すぎない!?」
「でも、合ってね?」
「まぁ、要約すればそうだが……他にもあっただろ!?」
「ナニしてたっけ?」
「どうやって練習するかについて考えてた」
「そういや結局、一回もまともな結論出てなかった覚えが……」
「結論出す前にいつも睡魔に負けてるしな」
「いつもの」
「とりあえず、”ボケる役”とか”ツッコむ役”とかの大雑把な役割を用意してテキトーに喋る、をしばらく続けてみようかなって」
「今と変わらねぇじゃん」
「せやな―――でも、変わらない王道ってのも大事なんだぜ?」
「なに無駄に格好つけてんだよ」
「今の状況がダメすぎるから、変わろうぜ!ってことでこのトーク練習始めたんだろ!何言ってんの!?」
「…そうだった!!」
※※※
「というワケで、今回のボッチ学会の議題は”人に話しかけてもらえそうな自然なキッカケを考えよう”です!」
「なんだよ”ボッチ学会”て……」
「説明しよう、ボッチ学会とはボッチ達によるボッチ克服のための学会だ!
どうすればボッチという名の牢獄から脱出する事が出来るのかを日夜研究している場なのさ!」
「それはただの牢獄であって学会じゃないのでは…」
「全員人見知りがヤバそう」
「なにそのデスゲーム」
「結局誰も喋らなそうな件について」
「―――それより、面白トークの練習は速攻で諦めちゃったワケ?」
「気付いたんだ……どんなにトーク力鍛えてもキッカケがないとそもそも何も始まらないって!」
「お笑いでいうところの”掴み”ってヤツか?」
「俺も相方欲しいなぁ……」
「急にテンション落とすのヤメェや。それにお笑い芸人でもピンでやってるヤツも多いだろ」
「違うの!俺はツッコみたいし、ツッコまれたいの!人の温もりを感じたいんだよ!」
「言い方ッ!」
「攻めだけでなく、受けもだと!?」
「俺、バイセクシャルだったのか……」
「そんなカミングアウトしてねぇよ!?」
「んっン!話を戻すと…物語全般の出会いのシーンにありがちな行動をとってみたら何か始まるんじゃねぇの?ってことさ」
「昔のラブコメ漫画とかでいう”パン咥えて全力疾走してくる女の子”みたいなヤツのこと?」
「全力疾走するぐらい急いでんのにパンは忘れないとか、どんだけ食いしん坊キャラなの!?―――うん、まぁでも、そういう感じの」
「そんなヤツ、現実に居ねぇよ」
「まぁ、そうなんだけど。だからこそキッカケになるんじゃん」
「いわゆる、”ツッコミ待ち”状態ってヤツだな」
「…それ、ちょっと意味違くね?」
「最近の流行で言うと、やっぱトラックに轢かれるしか」
「確かにツッコミだけども…・ヘヴィーすぎひんか?」
「だから、すぐにこの世からオサラバしようとすんのヤメェや!!」
「仮にどっかに転生出来たとしても、今の性格まんまだったら結局コミュ障継続やぞ?詰んでるがな!」
「でも他の流行りで言うと、急に前世を思い出したりとかだろ?こっちも無理じゃない?」
「ある日突然、前世の引きこもり学生だった頃の記憶を思い出す」
「引きこもりて、今よりダメになってんじゃん……」
「ろくな知識持って無さそう」
「違う違う、最近の流行は追放モノだって!」
「……今の俺の状況、もう追放されたようなもんじゃん」
「「「ホンマやッ!!?」」」
※※※
「いいからパン咥えて登校する以外の、キッカケになりそうで、且つ俺が実践出来そうなイベント案を出してくれよ」
「そうさなぁ…」
「でも俺に出来ることって、たかが知れてんだけど」
「フッ、俺如きに出来るかな?」
「―――誰だよ、お前!?」
「わざとシャーペンとか消しゴム落として拾ってもらう、とか?」
「あー、それ狙ったワケじゃないけど先月やったわ。誰も拾ってくれんかったけど…」
「気付いてもらえるまで何度でもやるんだよ!」
「それ、自分で落として拾って、っていうしょうもないループになるだけだぞ!?」
「はたから見たら馬鹿丸出しだな」
「諦めたらそこで―――
「安西先生はいいから」
「んー、やっぱ自分からいくべきじゃない?例えば、教科書忘れたから見せて下さい、ってお願いするのはどうよ?」
「俺、教科書全部学校に置いてるから忘れるとかはないなぁ…」
「ノート持って帰るのすら、テスト前くらいだもんなぁ」
「じゃあ、体育の二人一組にな―――
「「「却下で!」」」
「それは、今の俺にはちょっとハードルが高すぎます」
「確かに。俺にとっちゃ棒高跳びクラスの高さだ…」
「そこまでッ!?」
「簡単なトランプマジックとか覚えてみようぜ!」
「だから、それを披露するきっかけがねぇって言ってんだよ!話聞いてた!?
教室でいきなりトランプ取り出して無言のままマジックやりだすヤツが居たら、真性のヤベェ奴だぞ!」
「マジックのクオリティにもよるんじゃない?」
「……なるほど。一考の余地はあるかもし―――
「「「ねぇよ!!」」」
「あ、じゃあ授業中に屁こくとかど―――
「もう全員俺の脳内から出てってくれよッ!!!」
※※※
「んで?」
「昨日話したヤツ、一応試してみたのよ……パン咥えて登校するってのを」
「マジでやったのかよ」
「これなら出来そうだったからな。
それにほら、自分で言うのもなんだけど、俺のクラス内での立場って、ほら…人のカタチをした空気じゃん?紛うことなきド底辺だろ。だから、今更1つ2つ失敗したところで他の人から扱い変わらんだろうし、まぁええやろと思って」
「ダメな方に覚悟キマりすぎてない!?」
「でも、そんで上手くいったら丸儲けじゃん?」
「プラマイの収支がおかしい…」
「―――で、結果は?」
「うん……学校着く前に普通に食べ終わったわ」
「何も起こらなぁーい!」
「いや、普通に考えたら分かんだろ。食パン一枚なんて、二分もありゃ余裕で食い終わるし。
そんな短い時間じゃ何も起こるワケないよなー」
「食パン一斤くらいないと学校まで保たんでしょ」
「朝から食パン一斤食うのはキツいな…」
「そういう問題か!?」
「そんなん咥えて登校したら、話すキッカケどころか遠巻きにされるの確実だろうけどな」
「持ち運びの事を考えたら、おにぎりの方が良くねぇか?」
「それだと、ぶつかった拍子におむすびコロリンして別の話になっちゃうじゃん」
「現実とフィクションをゴッチャにするんじゃない!」
「パン咥えるの試してる時点で今更だよ!?」
「あのさぁー。今思ったんだけど―――パン咥えてるってことは、俺がヒロイン役なの?」
「「「―――はッ!?」」」
「なら、スカートとか履いてた方がよくない?妹から借りてこようか?」
「●が履くスカートが無くなっちまうじゃん。ダメでしょ」
「じゃあ俺のズボンと交換すれば問題なくね?」
「問題しかねぇわ!―――っていうか、よくよく考えたら別に俺はラブコメがやりたいワケじゃあねぇんだよ!」
「気付くの遅すぎないッ!?」
「でもこれでラブコメ始まったら、それはそれで万々歳じゃないか?一気に勝ち組だぜ」
「スカートか……いや、待て!ことによってはパン咥えて登校するより遥かに効果的なのではなかろうか?」
「―――今なんて?」
「だって、急にスカート履いて行ったら絶対ツッコミ入れたくなるでしょ?」
「おまッ…天才か!?」
「だろぅ?」
「コレはイケる!イケるぞ!」
「間違いねぇ!爆笑もんだわ!」
「―――で、スカートの下って何履けばいいの?」
「早まるなッ!!それは陽キャがやっても五分五分の勝負だぞッ!!
俺がやったら、”絶対触れちゃイケないレベルの厄介さん”に昇格間違い無しだって!
クラスの奴にシカトされた挙げ句、教師に説教されて終わりだぞ!バカな事は考えんな!やめとけ!」
「ジェンダーフリーの制服ですって言えば、逃げられるんじゃね?」
「そのイチかバチかみたいな答えしか用意出来ない時点でアウトだろ!」
「…………でも、試してみないと分かんなくね?」
「諦めたらそこで―――
「安西先生は引っ込んでてくれよ!!」
「迷った時は…とりあえず、やってみようぜ♪」
「絶対にやるなよッ!絶対だぞッ!」
「オッケー、やれってことね」
「フリじゃねーからな!?ヤメて!覚悟キメないでッ!!」
※※※
■今週のNGワード(テロップ)
「あ、じゃあ授業中に屁こくとかどうよ?」
「…………実弾が飛び出しちゃったらどうすんの?」
「―――で、スカートの下って何履けばいいの?」
「ついでにパンツも妹から借りてくるか……」
※※※
■今週の反省会(テロップ)
「時間あったからイチゴジャム塗っておいたんだけど、走り出したら咥えてたパンが折れて鼻にベチャってくっ付いて大惨事だったわ。パン齧ってる時間より顔拭いてる時間の方が長かったし……やっぱ8枚切りは駄目だわ。
それより、顔拭いてる時に思い付いたんだけど、今度はケチャップ使って顔から流血してる感じにして登校してみようかなと―――」
「そういや、小学生の時に妹のスカートをふざけて頭に被ったことあったなぁ。
……そのあと、本気で蹴られたっけ。
あの時からだよな、●が俺を遠慮無く殴るようになったの。
あと、俺に対して虫を見るような冷たい目を向けるようになったのもあの時からだった気がする―――」
♪♫♬
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◆コメント欄 ―――――――――――――――――――――――――――――――
”実弾は不味いですよ!!”
“↑屁の時点で完全にアウトなんだよなぁ…”
”相変わらずギリギリを攻めすぎている”
”生き急ぎやがって!”
”来週の報告を待とうか”
”安西先生はレギュラー入りか?”
”久しぶりに聞いたけど、この頃はちゃんと反省会やってたんだよな”
”↑言うほど反省してない気がするが?”
”↑今は反省すらしなくなったもんな”
”妹のパンツをリスナープレゼントにしてくれてもいいのよ”
”↑通報しました”
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
過去の俺が素性バレしそうな致命的な事を何か喋ってないか確認しようと思って、何とか第三回まで我慢して聞いてみたが……もうやめよう。精神衛生上、大変よろしくない。っていうか、歯を食いしばって、身悶えてまで聞くようなものではない。反省会までばっちり入ってて、軽く死にたくなった。
何もしてないのにドッと疲れてしまった。…………もう寝よう。
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