第5話 ぼっちに友達がいたら駄目ですか

 クラスの人に伝えられ1階の図書室に向かう。

ここの高校の図書室は本の冊数が他の高校よりも多く稀に他校からの貸し出し依頼もあるくらい本が多い。


 1年の時の委員会決めの際に残り図書委員と、応援委員をジャンケンで決めどうにか地獄を回避出来て今に至る。


「ちょっと蓮場!今日当番なのに遅れて来るなんてどういう了見かしら」


 図書室の扉を開けるといきなり大声で怒鳴って来たのは同じく図書委員の松木瑠衣まつきるいで文学少女みたく薄い赤縁の眼鏡に髪は肩まであるくらい黒のおさげをしている小柄な少女である。


「すまない、予想以上に購買が混んでてな。申し訳ない」


「次から時間に余裕を持って行動しなさいよ」


 とは言っても図書室に来る人は精々1人多くて3人来るかどうかだからその会話が終わった後は暫く沈黙が流れる。


「……………」


「……………」


 因みに俺は昼飯で買ったクリームパンを食べている。図書室では飲食禁止だが当番は昼の時間をほぼ活動に使うため特別飲食が出来るという訳である。


「モグモグモグ......」


「ねえ、あのさ」


「モグモグモグ......」


「ちょっと!無視しないでよ!」


「むぐっ、何か用か」


「何か用かって....蓮場は教室で1人でいるけど友達とかはいないの?」


「いや、俺は1人でいることが好きだから1人になってるだけだし、友達は中学時代に1人くらいは居たが」


 ちなみになんで松木がこんなに馴れ馴れしいかと言うと同じぼっち同士だと思って俺に話しかけ始めたのが事の発端であり、俺が本ばかり読んでいるのを見ていたからかラノベをお勧めしてきたのも彼女である。


「ふーんそう、てっきり友達がいなくてさらにコミュ障なのかと思った」


「んなわけあるかよ、俺がぼっちでいるのは好きでぼっちになっているからであって俺はコミュ障ではない。てか松木は教室では静かなのにここだと本当よく喋るな」


「い、いや共通の趣味が合う人だとつい喋りたくならない?」


「いや全く無いが」


「ふん、あっそ」


 いや何か機嫌悪いこと言ったか俺は。そう頭の中で思っていると、


 キーンコーンカーンコーン


 ああ、昼休みが終わった。午後の授業なんだっけかなー。


 午後の授業は好きな数学と科学だった為か寝ることは無く放課後を迎えた。


「さてと、学校にはもう用は無いからさっさと帰って夕飯でも」


と思い帰ろうとした時だった、


「ごめんなさい、少し数学の事で質問があるのだけどいいかしら?」


 誰に言っているのか分からなかった為、俺は先を急ぐ事にする。


「ちょっと、貴方の事なんだけど」


と後ろから腕を引っ張られた。


「ええっと君は誰だ?」


「君は誰って....私は須崎琳華すざきりんか、宜しくってクラス替えした時自己紹介したじゃない!」


「すまんが記憶に無い。んで、何で俺なんだ。別に他の成績優秀な奴に教えて貰えばいいんじゃないのか。

俺はもうさっさと家に帰りたいんだが」


「そんな露骨に嫌な顔しないでよ。そう言えば蓮場君って成績は学年10位以内に入ってたよね。しかも数学と科学は1位だって聞いたし」


 まあ勉強は次の日の予習くらいで済ませているだけで正直順位とかは気にしていなかった。


「んでそれがどうしたんだ。それは教えて貰う理由にはならないぞ。大体こういう場合また後にも教えてくれって来るパターンなのはとうに見えている」


「別に良いじゃん教えるくらい。何も減るものは無いでしょ」


「いや、俺の自由な時間が減る。だから他の人にあたってくれ。ほらあそこにいる眼鏡掛けてる如何にも頭が良さそうな人に聞いてくれ、そんじゃ」


と俺は急ぎ足で教室を後にする。


「ちょっと、待ちなさい!」


さっきの人が何か喚いているが気のせいだろう。

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